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ケニアの食卓 ウガリとビーフシチュー

はじめに

30年近く、アジアとアフリカを舞台に、国際協力という仕事をしていましたが、最後は、去年まで3年間赴任したケニアでした。ケニアには以前にも3年間赴任したことがあり、通算6年間、母国日本以外で最も長く滞在した国です。そのため、思い出が沢山あり、その中には毎日のことである食の思い出も大きな部分を占めています。そして、近年はスマホの発達で、いつもカメラを持ち歩いている状態なので、食べることが好きな私は、ほぼ毎食を撮影しています。そこで、3年間で撮り溜めたケニアの食卓を紹介したいと思います。

毎日の昼食

私は、ナイロビの北隣のティカという町にあるケニア国立農業研究所に配属されていました。そのため、月曜から金曜は、大抵、研究所の職員用食堂で昼食をとりました。そこの昼食は日本人の感覚では食の種類が少なく、毎日、同じようなものばかりを食べることになります。おかずは、日替わりで1種類で、主食が2種類から一つを選べるといった具合です。そして、そのおかずも、日替わりとはいっても、実質、2種類しかありませんでした。こんな調子ですが、慣れれば、この単調な昼食も、とても美味しくいただくようになりました。

主食のウガリ

研究所の食堂で供される食事で、最も頻度の高いものから紹介したいと思います。それは、メイズと呼ばれる甘くないとうもろこしの粉をお湯で練って餅のようにした「ウガリ」を主食として、おかずは牛肉を煮込んだ「ビーフシチュー」です。ウガリは、東部と南部アフリカで一般的な主食で、特に、私が初めてアフリカに駐在した国であるザンビアの人々は、とてもこだわりを持つ食べ物です。昔の日本人は米を食べないと力が出ないと言ったそうですが、私がいた頃、1990年代のザンビア人はウガリを食べないと、すぐに腹が減ると言っていました。もっとも、ザンビアではシマと呼ばれますが、内容は同じで、メイズの粉を熱湯で溶いたものです。ただし、ケニアのウガリの方が、ザンビアのシマと比べると硬めの仕上がりです。

おかずのビーフシチューと野菜

日本でビーフシチューと言えば、コトコトと煮込んで作るフレンチの料理を指しますが、ケニアのビーフシチューは、ずっと素朴な料理です。牛肉と玉ねぎとトマトを炒めて、水を加え、塩で味付けをする、とてもシンプルですが、これが、ウガリによく合うのです。そして、普通は葉物野菜も添えられますが、ウガリが主食の場合は、「スクマウィッキー」と呼ばれるケールの微塵切り炒めが添えられます。これも味付けは、基本的に牛肉と同じで、玉ねぎ、トマト、塩で味を付けた素朴なものです。もし、主食が米の場合は、スクマウィッキーではなく、キャベツが添えられます。ケニア の食に慣れると、ウガリと一緒に食べる野菜はスクマウィッキー以外に考えられなくなります。

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ウガリの作法

昔は、ウガリを食べるときは手づかみにしたものです。少なくとも、1990年代のザンビアでは、必ず、そうしていました。ところが、最近、ナイロビなどの都市部ではウガリもフォークで食べます。私は、それに違和感があり、研究所の食堂でもウガリは手で食べていました。ところが、ケニアのウガリは硬くてボソボソし、手で食べるにはまとまりが悪いので、フォークで食べるようになってしまいました。そう言えば、ラオスに住んでいたとき、現地の主食で良く餅米を食べましたが、これも手づかみで食べたもので、ウガリと同じような食べ方でした。遠く離れたアジアとアフリカで同じような作法があり、面白いものです。

まとめ

ウガリは日本では知られていない料理ですが、東部と南部のアフリカでは欠かせない主食です。ちょうど、日本人にとっての米のような存在で、こんな理由から、最初に紹介するケニアの食事はウガリにしようと決めました。一緒に添えられるおかずも、ウガリにはスクマウィッキーと決まっており、ここらへんにもこだわりが感じられます。このように地元の人がこだわる食事は、毎日出されても飽きることなく食べ続けられるものです。こんなところを自分の舌で味わうことが、相手の文化の理解へとつながるのではないでしょうか。


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