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ピカデリーサーカスらへんのおじさん

2019年の前半、ロンドンで暮らし始めてしばらく経っていた頃、
地下鉄ピカデリーサーカス駅から地上に出て、ちょうどエロスの像から見て書店ウォーターストーンに向かって伸びる道の角のところで、いわゆる路上生活者っぽいおじさんを見かけた。

路上生活者と言っても、建物の角に沿って、広さ二畳ほどのスペースに、しっかりとした木の枠組みで、腰の高さくらいの掘建小屋みたいなものを拵えたおじさんである。

ダンボールの上にビニールシートを被せて屋根が設えられていただけに留まらず、木の部材を組み合わせて、正面から見て真ん中に玄関ドアっぽく見える枠組みと、左半分には窓枠っぽい装飾まで設けてあった。
さらに、どこから調達したのか、大小さまざまな、花や観葉植物の鉢植えをいくつか、パイナップルひとつ、そしてなぜかは不明だが、ペンギンのぬいぐるみをいくつか置いて、愛らしさまでも演出している。

窓枠みたいになってる部材の部分に、マジックペンか何かで"photo free"と書かれていたので、玄関っぽくなってる枠組みにすっぽり収まりながらニコニコ顔で座っているおじさんに、一応、写真撮ってもいい?とお伺いを立て、了承を得て当時持っていた死ぬほど画素数が荒いスマホで撮った写真が手元に残っている。

こんな感じで、何者かはよくわかんないけど、クリエイティビティを感じるおじさん、みたいな存在を街中で見かけることは、東京みたいな都市でも、なくはないと思う。

ただ本人のピースフルさを含めて、あのおじさんを超える、なんかよくわかんないけどいい感じの、クリエイティビティを感じる市井のおじさんは、日本に帰国してからの東京での生活を丸三年過ごした今でも、まだ出会えていないように思う。

必ずやコーヒー代にさせていただきます。よしなによしなに。