ライブ再開に向けての妥協点

 今後、ライブビジネスはどのように運営していけばよいでしょうか。


 実のところ、クラスタが発生したのはごく小さな会場でのライブに限定されており、かつ、特殊な形態のところが多いので、「客のほとんどは、半ば強制的に買わされるドリンクチケットを消費するためにライブの開始前または終了後にドリンクを入手して飲み干すにとどまる。客のほとんどは大半の時間をアーティストの方を向いて過ごす」という一般的なライブの場合、ドアなど他の客が触れた物に触れたのちにアルコール消毒等ができる環境さえ整えて接触感染を防止すれば、感染リスクは著しく低いのだろうとは思います。「換気の悪い場所では、人の口から吐き出された飛沫が少時間空中を漂う」ことを示す映像がなんでもテレビで放映されたため、「ライブハウスなどの密閉空間ではああやって感染拡大するんだ」という印象を持たれがちですが、実のところ、そういう経緯で感染拡大がなされた例というのがほとんど見受けられません。それで感染拡大するなら、満員電車での感染拡大が回避できないはずです。


 とはいえ、この機会にライブハウスという文化を潰したがっている人たちも多いので、ある程度の妥協は必要でしょう。
 要は、会場にいる客が吐いた息等に含まれる飛沫が他の客によって吸い込まれなければいいわけです。客が何も身につけていない場合には飛沫は1〜2メートルくらい飛ぶとされており、それが「社会的距離」の根拠となっています。しかし、客と客との間を2メートル以上離すなんてことをしていたら、非常に限られた人数の客しか会場に入れることができず、ライブを開いても採算が取れないということになります。


 もっとも、客の口元に障害物があれば、飛沫はそんなに遠くまで飛ばなくなります。https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-school-facesheeldによれば、まっとうなマスクを着用すれば飛沫はそれ以上飛ばなくなるようですし、アクリル製のフェイスガードを客がつければ飛沫はフェイスガードを通過しません。だとすれば、客にまっとうなマスクないしフェイスガードの着用を義務付ければ、客と客との間を広く開ける必要は無くなります。そして、現在のサージカルマスクの流通状況からすれば、会場側でこれを大量に調達して、入場待ちしている客に配布することだって十分可能です。また、フェイスガードにしても、アーティストのロゴ入りのものを作ってコンサートグッズとして売ってしまえばよい話です。


 コールアンドレスポンスなど、客側が歌うことを制御すべきかどうかは、マスクやフェイスガードをつけた状態で客が歌った時に飛沫がどの程度飛ぶのかということによって決まっていくと思います。これは、ライブ運営者側で実験し、その結果を公表すれば足りる話だと思います。


 そして、従前のようなオールスタンディングライブを再開できるかは、客と客の身体が前後で密着した場合に、接触感染するリスクがどのくらいあるのかによります。これも、実験により、答えの出る話です(計算でも答えが出るとは思いますが)。前後の身体的な密着で接触感染するリスクがあるという実験結果が出るようであれば、オールスタンディングは治療薬の開発が進むまで一旦自粛し、スタンディング用の会場にパイプ椅子を敷きつけるという対処をする必要が生じます。この場合、収容人数が大幅に減るので、チケット代を大幅に値上げする必要が生じてしまいます。


 それでも、私たちは、「原則自由」な社会に生きているはずなので、特に感染リスクが高くなる場合を絞り込んだうえで、それ以外は自由に活動できるようにしていくことが必要です。新型コロナウィルスごときで、「政府や自治体から特にお許しを得られた行動のみなし得る」不自由な社会にしてはいけないのです。

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