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【ブックレビュー】ITアーキテクチャのセオリー

システム構築の大前提<ITアーキテクチャのセオリー>(中山嘉之氏著、リックテレコム2018)

#読書感想文

企業システムを設計する時の<セオリー>を教えてくれる本です。著者の中山さんは協和発酵の社歴の中で、コンサルタントとして活躍されていた故椿正明さんと一緒に日本のデータモデリングを立ち上げたとも言える方です。
椿正明さんは日本にデータモデリングを定着させるためデータ総研を立ち上げて活躍されました。
協和発酵の情報システム部長となり企業内のデータモデルを自ら書かれていました。その知見を他の企業にも広げるためコンサルタントに転進されて出された1冊目の本です。


4章 EA:エンタープライズ・アーキテクチャ

3章までにも、EAという言葉が(後で説明しますが)という言い訳付きで出てきます。EAをご存じない方は理解しにくいでしょう。ゲーム会社のElectronic Artsとは関係がありません。
日本のデータモデリング界隈で「EA」というと、生みの親のザックマンモデルでもなく、グローバル標準のTOGAFでもなく、ここに書かれているモデルの事を指します。

ビジネス、データ、アプリケーション、テクノロジーの4層に分けて、それぞれの視点で、企業システムをコンポーネントの組み合わせで可視化すべきです。それが即ちEA(Eン手rpリセArchitecture)の取り組みであり、企業システムを構築する際のセオリーです。

第12章 リポジトリで情報を可視化


データモデリング関連の書籍は割と読んでいる方だと思いますが、正面から「データ辞書」の作り方を説明した本は他には思い当たりません。昔は何冊かあったと記憶していますが絶版になっています。貴重な本です。

このデータモデル上に記載されたメタデータを、それが所属するエンティティを意識せずに、データの型、桁数、および原始的な意味が同一のものを「ドメイン」としてくくりだしてみます。
(中略)
このサンプルの例でも給与金額、福利厚生費、税額の三者のドメインを分けていますが、グルーピングの基準が曖昧なので、「金額」一本のドメインとしても間違いとは言い切れません。
(中略)
「管理性が高まるかどうか」の観点で、決めるのが良いでしょう。

こうやって作ったデータ辞書からリポジトリを作る入り口まで丁寧に教えてくれます。

第13章 ゆるやかなシステム移行


新しく素晴らしい業務システムが完成したとしても、ビックバン方式で一気に新システムを稼働することが出来るでしょうか?新しいビジネスならともかく、既存ビジネスがあるならそんなことは出来ません。
そこで中山氏が発案した方法が「マスタHUB」と「トランザクションHUB」です。
既存システムが乱立している状態でしょうから、それぞれのシステムからマスタメンテナンスをなくします。

既存システムが乱立している状態でしょうから、それぞれのシステムからマスタメンテナンスをなくします。

  • 既存システムが乱立している状態でしょうから、それぞれのサブシステムからマスタメンテナンスをなくします。

  • マスタHUBを作ります。マスタメンテナンスはそこに集めます。

  • それぞれのサブシステムのマスタデータはマスタHUBから取得します。

終わりに


大変読みやすい本ですが、理解するのはそれなりに大変だと思います。何度も読み返し、リファレンスとして使用できる本だと思います。
NPO法人IT勉強宴会で出版記念講演をされました。その記事も参考にして下さい。
https://blog.benkyoenkai.org/2018/07/it64itin.html
以上

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