見出し画像

閻魔羅闍-ENMA THE GREAT chapter2

こんにちは。

いつもお疲れ様です。

ええ、またしても小閻魔でございます。

いつになっても、閻魔大王様はいらっしゃいません。

その代わりに、

ある老人が私のところにやってきました。

たいそう痩せこけた身体と、
穴の空いた貧相な服装で、

70は過ぎた老爺でございました。

その老爺は、大変な過ちを冒したそうで、
大層悔やんでおりました。

私はまず、衣服とは似ても似付かない
その着ている布を剥ぎ取りました。

人間は、死ぬ時の身なりで天国か地獄に
送られます。

診るからに、餓死かと思われます。

しかし、餓死であるならば、
地獄へは来られません。

そして、見た目は餓鬼と同然ですが、
年齢は老爺。

餓鬼は餓鬼でも、
福徳を受けられる方でしょうか。

老爺に私は質問をしました。

あなたは、如何して、ここに来られましたか。

老爺はおっしゃります。

ダンゴ食った。

団子虫?

ダンゴだっよ。

失礼しました。
私は唯一、
ダンゴムシが好きでも嫌いでもなくて。

ダンゴっつわれて、
ダンゴムシいう馬鹿いねぇーべさ。

バ…馬鹿と、。

私は一瞬頭に血が昇り、
この冥王界を消し去ろうかと思いましたが、
堪えました。

たかが人間です。

この者は正しく罪を償う義務があります。

しかし、私はこの者の持ってきた罪状
(ここでは、罪が書かれた、ミツマタで作られた紙でございます。)を見て不思議に思います。

そこにはこう書かれておりました。


1 この者、日本群馬上野にて、某の米を喰らう。よって、これに対する地獄労働を気焔5年211微、大焦熱地獄まで課す。
2 この者は、輪転を7期休みとする。
3 この刑は、執行することができる。

何々、まず日本の群馬(今の上野ですね。)にて、
ある者の米を食べた?とあります。

これに対する転生の為のお勤めが211微ですか。

分かり易く説明致しますと、

この地獄の初めて地獄に堕ちました人間が、
今の閻魔大王様でございます。
(元、人間でございます。)

その閻魔大王様が、
縦横の一辺が700km、
厚さ30mの大理石の上を寝転がり、

その時に抜けた体毛と大理石が擦れることで
削られていき、
遂に大理石が消えて無くなるのが
ざっと400微でございます。

ですので、厚さ15mの大理石というわけでございます。

大焦熱地獄というのは、
8地獄の中でも相当な極悪で
7層の地獄になります。

輪転とは、輪廻転生のことでございまして、
だいたい1魂につき211年間の間、
個人差はありますが、転生することができます。

実は、
殆どの人間は一度しか生きることができませんが、
例外があります。

それは、纏わない人間です。

この老爺は生前、纏うことがないと認められた
今となっては珍しい人間でしょう。

昔は理性もなく、
生殺与奪の権が一個人にあった時代、
沢山の人間でこの冥王は溢れかえっておりました。

その頃は、纏う者がおりません。
纏うどころか、惑う者もおりませんでしたので、
大変清々しく、閻魔大王様のお仕事を見ていました。

しかし、最近は愚痴と惑い、
さまざまな重荷と責任を纏い、
それゆえに自由であるので、
大変強情な者が多くなってきました。

強情とは、昔の強情とは異なります。

芯がないということでございまして、

それに比べ、ここにいる老爺は
たしかに衰えた身体ではございますが、

真っ直ぐ立っております。

鉄の芯が入っているように、
腰は歪曲しておりませんでした。

さて、この罪状には、輪転と書かれておりますが、
そもそも、

輪転ができない者には、
輪転が7期休みとは書かれません。

それだけ珍しいのです。

輪転ができる上で、7期休みでございます。

しかし、残念なことに、

地獄労働が永遠過ぎる上、
7期休みどころではありません。

有に211年は超えております。

そして、恐らく211年後に
魂が失効してしまいますので、

魂取消しにならない為に、更新が必要でしょう。

そのためには、閻魔大王様が必要なのですが。

閻魔大王様は不在でございます。

またしても不安でございます…。

そもそも、一体なぜこの老爺がそんなことを。

そして、どうしてそんなことでこんな罰を…。

なぜ米を喰らうだけでと思ってしまいます。

もう少し、老爺には申し訳ございませんが、

立ち往生をしていただきます。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

少しずつですが、投稿をしております。 noteで誰かのためになる記事を書いています。 よろしくおねがいします。