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クロ現「未利用魚特集」を見て思った事

7月4日に放送されたNHKのクローズアップ現代で、「未利用魚」特集が放送されていました。漁獲量が年々減り続け、漁師の平均収入もそれに合わせて減っている中で、未利用魚の活用が注目されているという内容です。

実際、漁師を20年近くしている中で、未利用魚ブームは数年ごとにやってくるのを感じています。今回はSDGsの文脈で「本来、使われなくなった魚の新しい活用法」が多くのメディアで紹介されています。

弁慶丸も10年程前に、ガンギエイやカナガシラという未利用魚を水産課と共に、試食会の開催や販売を試みました。しかし、一次的な訴求で終わり、結局、「未利用魚」は「未利用魚」のままで現在に至ります。

未利用魚試食会の様子

未利用魚の活用で、漁業や漁師に関心を持ってくれるのはありがたいことです。放送の中でも捌いた魚を子どもたちがおいしそうに食べていたのは、私たちにとっては微笑まし光景ですし、未利用魚を使った加工食品が生まれているのも、魚食文化が広がるのであれば喜ばしいことです。

ただ、敢えてこの場を借りて私の想いを書くならば、漁業の再生や水産資源の安定のためには未利用魚だけでなく、皆さんの地域にあるスーパーなど目の前で売られている魚たちにもっと目を向けてほしいです。

そもそも未利用魚は、僕たち漁師が海上で棄てる魚たちを指します。棄てる理由は単純で「売り物にならない」からです。イネゴチ、カナガシラ、イラ、ニザダイ、アイゴ、ミシマオコゼ、ガンギエイ、こうした魚はいわゆる未利用で、姿や色なども想像がつかない、いわばマイナーな魚たちです。

イネゴチ
カナガシラ

放送でも触れていましたが、調理方法が少し難しい、骨が多く捌くのが面倒、独特の臭みがあるなどの理由で、一般的な鮮魚売り場ではほとんど売られることはありません。

仮に未利用魚が鮮魚売り場に売られていたとしても、売り上げにつながるかは疑問なところです。そもそもスーパーや量販店の鮮魚部門は人件費カットの名目で販売員が置かれておらず、バックヤードで魚を捌く人員しかいないところがほとんどです。調理法はおろか、捌くのも難しい未利用魚を店頭販売員の説明なしで一般的な販売方法で売るのは難しいと思います。

魚に慣れてもらう最初の段階として、未利用魚の加工済み商品はその役割を果たすかもしれません。ただし、一時的なブームで、未利用魚の加工品を食べるだけのエシカル消費で終わらせてしまってはいけません。

丸の魚を一般家庭で捌くという昔から受け継がれてきた魚食文化を再生させない限り、水産業の再生、未来は遠いままです。

そういう意味で、私たちが普段から食べているメジャーな魚に目を向けることが大切だと思います。今、目の前で売られている魚たちを破棄させずに食べてあげて、「未利用魚」にしない事が重要です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

弁慶丸HP

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