見出し画像

SMあるいはSFの関係〜『パーム・スプリングス』映画レビュー

SM関係、それは漫才師の ボケ/ツッコミ 関係からそこのアナタ、アナタが想起してしまったエッチな関係性まで、射程を広くとって考えていただきたいが、それは多少の差こそあれうまくいくだろう。(この長ったらしい文体はフランスの文献から仕入れた。リズムもクソもない。以下通常運転に戻す。)ではSF関係は?俺の経験したところによると、それも、うまくいく。

SF関係の「関係」はSM関係の「関係」とはちょっと違う。SF同盟と言った方が正確かもしれない。SFとは言うまでもなくサイエンス・フィクションだ。(英語ではSFのことをエスエフではなくてサイファイという。初めて聞いたときの感想:「カッコつけやがって」)先日観たSF映画の話をしよう。

『パーム・スプリングス』を観た。(予告編以上のネタバレはしないのでご心配なく。)この映画は「今日」を無限に繰り返すタイムループに入ってしまった男女二人が繰り広げるラブコメだ。時間を題材にしたSFは『Back to the Future』を筆頭に無数にある。設定自体はありきたりだ。というか、設定や物語の構造に関して言えば、ほとんどの作品がありきたりだ。多くの恋愛映画は『ロミオとジュリエット』の焼き直しだ。設定で卓越するのは難しい。しかしそれぞれの作品にはやはり個性があって、そうでなければ作品は成り立たないだろう。

この作品で心惹かれたのは、その映像だ。カリフォルニアのクソ天気のいいラグジュアリーな映像だけが繰り返される。フワちゃんは「毎日晴れ」のためなら指一本くれてやる、と豪語していたが、ここに行けば「毎日晴れ」が手に入るだろう。(20万円くらいあれば五体満足で行ける。)梅雨なのかそうじゃないのか、判然としないモヤモヤした天気の季節にはピッタリの映画だ。ステイホームなのかそうじゃないのか、も判然としないが、そんな季節にも同様にピッタリだ。

さて、この映画の映像はSF的じゃない。近未来都市も、空飛ぶ円盤も出てこない。俺たちの想像しうる最高の日常が映される。にもかかわらず、そこはSF的な空間だった、その映画館は!8割くらい埋まった映画館は(今日で閉館らしい、さっき知った。だから混んでたのか。)全員が顔をマスクで覆っている。マスクをした人々が真っ暗な部屋で画面に目を凝らし、微動だにせずに座っている。誰がこんな光景を想像できただろうか。(3Dメガネもかけていれば仕上がっていたのになぁ、、、)宇宙旅行に向かう宇宙船内の人々、の方が考えやすいかもしれない。

SFらしくない映像のSF映画と、はるかにSF的な光景の一員として現実世界にいる俺たち。この期間限定のSF関係はうまくいった。しかしずっと続いて欲しいとは思わない。現実界のSFは間もなく終わるだろう。

そろそろ注射したいよぉ〜〜〜。(いつ?)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?