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「携帯失くした?」
「iPhone」

「探すはした?」
「電源が入ってないになるの」

「拾った奴が電源切ってるか?」
「ロッカーのバッグに入れてあったのに何で」

アヤは内定の出た企業で内定研修を受けていた

とりあえずMacを開いて、アヤの携帯を探すをした
反応は無い

次の研修は来週の週明け
アヤは連絡先を交換した研修生にOJTのトレーナーの電話番号を聞き
僕の携帯で連絡を試みた

「やっぱり落し物は届いていないって」
「ロッカーのバッグに入れていたなら落し物じゃないし」

「思い違いじゃないんだよね、退社の時に気が付いて、周りにも聞いたし、総務にも届いていなかった」
「トレーナーはなんて?」
「明日、会社に来てって相談に乗るって」

違和感を覚えた 何かあるんじゃね?
iPhoneを探すに反応が有った、アヤのiPhoneは現在、うちのマンションの入口辺りで佇んでいる

インターフォンが鳴る、応答した、アヤは相手にロビーで待ってくれる様に言った。

アヤと一緒にエレベーターに乗った、7階から1階のロビーへ、コンシェルジュの兄さんに会釈して、アヤと別れて他人のふりでソファに座る

アヤがソファに向かう、相手はアラフォーに見えるおっさん、スーツはイージーオーダーだろうけどデパートもの、タイはそこそこ良いのを締めている。 聞き耳を立てた

「携帯落ちていたから、届けに来たよ」
「よかったぁ有難うございます」

「心配だったでしょう、拾ったのが俺で良かった」
ごく普通のリーマン? 教養のある喋り方かしらね

「本当に助かりました、どこに落ちていました?」
「ベンディングコーナーのテーブルに有ったよ」

「ネスプレッソのところ?」
「そうそう」

「どうして、そんなところに有ったのかしら、今日はロッカーから出さなかったのに」
「不思議だね、社内では貸し出しのアンドロイドを使うのにね」

「本当に有難うございました、御礼はまた後日改めて」
「いやいや、御礼なんて良いからさ、これから一杯付き合わない、奢るよ」

「いえ、ロビーまでなので部屋着ですし、ほぼすっぴんなので恥ずかしいです」
「俺は気にしないよ、蓼丸さんのすっぴんが見られて嬉しいし、差し向かいで桜色のすっぴんも見たいな」
おもしれぇ雲行き妖しいぞ

「無理です、夜も遅いし」
「じゃあ、アヤちゃんの部屋で部屋呑みしよう、良いでしょ?」
ほーら来た

「いいわけ無いでしょう、総務の山本実さん」
アヤの声のトーンが変わった、道場に居る時みたいな気合の声
「なっなっ」

「帰りなさい」
アヤはびしっと出口を指さした

「携帯、拾ってやったんだぞ」
山本さん声がうわずりまくり

「拾えるわけがないんです、鍵のかかったロッカーに入っていたんですから」
「なんだよ、現にこうして」
「うっせぇわ とっとと尻尾巻いて帰りやがれ すっとこどっこい」

「俺は親切で…」
「ちゃんちゃらおかしいや、明日、化けの皮剥いでやらぁ」

「くそ女」
「おぅ上等だ、糞勘助 お帰りはあちら」

山本実はあたふたしながら、出口を抜けた、コンシェルジュのお兄さんも笑いをこらえている

「江戸弁、上達してる?」
「良い按配じゃね?」
iPhoneになんかされてないか、Macに繋いで調べないとね
僕たちはエレベーターに乗って部屋へ戻る




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