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カナブンと猫。

 昨日、日付が変わるころ、もうそろそろ寝ようかと布団でダラダラしていたら、突然部屋で何かの虫が飛び始めた。いつ入ってきたんだ。電球の周りをずっとグルグル飛んでいる。なかなかの大きさ。虫はあまり怖くないけれど、何の虫かわからない状態で、しかもどういう動きをするのか予測が出来ない。眠気が飛んだ。

 隣の部屋に逃げ、猫に飛んでいる虫を見せて「あなたの出番なんじゃないの。」と話しかける。彼が虫で遊ぼうとしているのを、たまに見かけるから、本領発揮じゃん、など言ってどうにかしてくれるんじゃないかと期待した。けど、むしろ彼は寝そべり、床のひんやり感を楽しみ始めた。私に甘えるような感じでうにゃうにゃ言っている。虫には全く目もくれない。信じられない。完全に人間の被害妄想だけれど、「部屋の中は、管轄外。さっきおいしいのもう貰ったし。」といった雰囲気を醸し出しているようにも見える。人間が困っていることなど、彼には何の関係もない。最近ごはんをグレードアップしたことも、人間を助けることとはつながらない。そういうところが好き。

 虫はしばらく飛んだあと、少し止まってまた飛び始めた。カナブンに見える。カナブンなら頑張れば触れる。けどカナブンだという確証は持てない。触れないジャンルのやつだったらどうしよう。けど寝たい。どうにかするしかない。

 私は洗ってあったヨーグルトの容器(虫にかぶせようと思っている)を手にして、その部屋の電気のリモコンに辿り着き、電気を消したところで虫氏も落ち着き飛ぶのを止めた。やっぱりカナブンだった。容器をかぶせ、下から紙をスライドさせて閉じ込めた。良かった。寝られる。しかもカナブンを傷つけることなく捕獲できた。成功だ。

 と、ここで猫が「え、何かカサカサ言うてるけどなになに!?気になる!!」とワクワクした様子で寄ってきた。なんなんお前は。その後も容器ごと外の室外機の上に置いて、容器の側面で休むカナブンを網戸越しに見て、網戸を手でカリカリしていた。「猫としてそれはどうなの。」と言いたくなったけれど、自分に置き換えてみて、「猫」のところを自分が変えられない属性などで言われたらムカつくな、私の嫌いな言いぐさだと思い、言うのをとどまった。単に気分が向かなかったとか、ゴロゴロしたかったとかそういうことだ、たぶん。
 猫はいつも猫らしさを全力で見せてくれている。そういうところが大好きなのだから、やっぱり人間の負け。人間は、猫の前では服従するしかない。

 この一件で、文章も書けたのだから、むしろ猫には(そしてカナブンにも)感謝をするべきなのかもしれない。ありがとう、猫。だいすきだよ。


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