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失恋ってほどでもない恋の終わり

私、ベニ子(20代後半独身女)には、人間関係その他諸々「リセット癖」のため、度々自分で書いた文章や作り上げてきたものを文字通り削除してしまう癖がある。

最近だいぶ落ち着いてきた。というか、「リセット」する前に、受け手に対してワンクッション置けるようになった、というのが現状。

そんな私ですが、久々にリセット癖を発動してしまったな、とnoteにログインして以前の記事チラ見して気付きました。
悲しい。


この記事では、
ある日の深夜、もちゃっとした感情に心がざわついて、目を瞑っても彼のことを思い出してしまってしんどい
そんな私の心の整理のために、
この世にありふれた、掃いて捨てるほどあるくらいの、恋愛にすらならない一つの人間関係の終わりを、
包み隠さず話していきます。

あほで、ばかで、かっこわるくて、でもちょっとかわいい私の恋心を消化するため、ほんの少しの時間、お付き合いください。


はじまりは

ちょうど一年前の、4月だった。
転職して、期待3割不安7割で飛び込んだ新しい環境。
日々慣れない環境とたくさんの「初めまして」の人たちの中に、その人もいた。
彼は、この職場に週に一度働きに来ているスタッフだ。紹介されて挨拶をしたのが初めましての記憶。今でもぼんやりと、その時の状況や感じた雰囲気を覚えてる。

なぜか、「前にも会ったことあったかなこの人」とか思ったから。実際時期はズレてるけど前に働いてた職場が一緒だったこともあって、そこで勝手に親近感湧いてたんだと思う。
年齢も10以上離れてるのにね。

話してみると、年齢差があるにもかかわらずすごく話しやすかったし、頭の回転も速くて親しみやすくて、職場では周りの人からも信頼されている人なのだなあと感じた。

ただ、距離感近い=遊んできたのだろう、の構図がそのまま頭に浮かぶような人だった。あと、若い女の子が好きなんだなあ、と。正直人として好きになれないと思ってたし、できるだけ(物理的にも心理的にも)距離感置きたいし、仲良くなりたくもなかった。

彼と同僚数人でのご飯に誘われたこともあったけれど、体調不良を理由に断った。

仕事をする上でもあまり関わる機会もなかったから、ただ「会うと距離近くて嫌な警戒心与えてくる人」という気持ちだ。
しかし私は仕事の人間関係においては、誰とでも近寄りすぎず離れすぎず、を基本としている。
相手に自分の嫌だという感情をいかに悟られず、付かず離れずの人間関係を保つのは得意中の得意だ。

他の人にもやってそうな「距離の近さ」気軽な「ボディタッチ」。これで察しない女は居ないだろう。



時は流れ、

11月。
ある日の仕事の合間で。
彼に手招きされて近寄ると、「はい」となにか手渡された。

私の手にはおかしが乗った。
「え、いいんですか!?嬉しい!!」
時は夕刻、腹も減って家恋し。

そんな状況で、ただの市販のお菓子なのに、凄く嬉しくて、思わず満面の笑みを向けてしまった。
ちょうど、その、心を開いてしまったタイミング。
「そんなに喜ぶ?」と言う彼に対し、

「ありがとう、おかしをくれる、、人?「おじさん?」」

私の言葉にかぶさったその言葉に、思わず顔がまた綻んでしまった。
「おじさんなの?」
いかにも自信持ってそうな人が、意外にも自分をしっかりと「おじさん」だと認めていたんだ、と。
なぜか私はそのギャップ?にときめいてしまったのだ。

いつからなのか、彼はどうやら「お菓子配りするおじさん」になっていた(その後、彼は自分でそう言っていた)。
一緒に仕事する機会があると、おかしをくれた。
もちろん、私だけでない、同僚にも。

私のスタンスは変わらない、でも先のギャップで気が緩んだ。会えば話をする人、にまで昇格してしまった。いや、私からそんな話しかけてなかったかな?あまり覚えてない。
どうせ皆にそうやって好意持たせるような行動してんだろ?みたいな上から目線決め込んでいた。
我ながらそんなこと考えてる時点で終わってる。



そんな

ある日のことである。
彼と話をしている中で、最近引越した、という情報を聞いた。そしてさらっと「遊びにおいでよ」と。
私は基本的に、面白そうだと思ったことは大してリスク考えずに(その間に面倒ごとがなければ)飛び込んでいくタイプだ。
言われた時は流したけど、その後結局好奇心で「本当に行ってもいいの?」と聞いてしまった。

運の尽きである。

それでLINE交換して、行く流れになったけど、一回目は予定が合わなくてなくなった。
普通に夜に会う流れだったけど、「まあ嫌だったら拒否って帰ればいいし」くらいのスタンスでいた。
私がこれまでどれだけ異性に対して雑に接してきたかがわかる思考だ。

そう、私はかれこれまともな「お付き合い」は学生以来なのである。もちろん社会人になって何人かとそれっぽい感じになったけど、身体的な触れ合いで拒否反応が出てしまい(つまり生理的に無理⭐︎)、長い付き合いに発展しないのだ。
性欲はあるし異性愛者だという自覚もあるけど、生理的に受け付けない範囲が広すぎて、もはや生身の異性とは無理なのではないかとすら思っていた。

そんな時の、完全に他人と比べると心配も少なく、しかもスムーズにことに運んでくれそうな年上のおじさんの家に誘われたのである。
試してみない理由もなかった。

その後予定を合わせようとしたけれどうまくいかず、面倒になり、「もう予定合わないねー」と躱そうとしたのに、何故か彼は引き止める。
結局彼は忙しいようで、いつのまにか年を越し、1月も末に会う約束をした。

空気感だけは、「恋愛してる男女」だった。
私は自分の性欲と恋心の混同を危惧していた。実際、様々な感情が1人の相手に対して沸いてくると、それを恋だと勘違いしてしまうのは人間の本能だと思う。
勘違いだとわかっていながらも、本能には流された。
私と彼の家は遠かったから、間をとってとは言いつつ、彼の家に近い場所で食事をすることになった。


駅で待つ。
「行こうか」とナチュラルに手を繋がれた。

LINEのやりとりでは話が通じないことが多々あり(しかも返信遅すぎる)、その時点で私の中で本命候補ってやつからは外れてた。こんなにやりとりがうまくいかない人ははじめてだ、私が周囲の人間関係に恵まれていることを変なところで実感してしまった。

「和食」とリクエストして行ったのは、居酒屋だった。正直、彼くらいの年齢の人とサシでご飯に行くなら、もっと良いところが良かった。
……本人にそう言ってやればよかった。
まあ下手におしゃれなところ行かれて場違い感に襲われるより、ずっといい。

表では笑顔で喜んで(喜ぶ気持ちも本物だ)、けど、どこかで否定したくなる自分を消すこともできない。

お手洗いへと席を立ち、戻ると彼はお会計を済ませていた。さすが、慣れている。

店内は騒がしく、音に押し出されるように店を出る。この後どうする、どこか別の店に、と話をしつつ、足は駅へ。
で、ここが、彼がとても上手だと思ったポイントだ。
「帰る」か、「家に行く」かの二択で聞かれた。

お菓子を配るおじさんに、居酒屋飯以上の価値はあるのか?
迷った挙句、行くことにした。

彼の家は言ってた通り広かった。
そろそろ寝よっかとなって、広いベッドに入ってからの距離の詰め方を、私は「こんな感じなんだー」とどこか人ごとのように見ていたけれど、

「え、ちょっと待って」

おいおい、そこで止めるならなぜ家に行ったのだ、ベニ子よ。
そうツッコミを入れてほしい。

割と真面目なトーンで、「私はあなたのことが結構好きだから、なんかこの流れ無理だわ」っていうことを多分もうちょっといい感じの言葉で話した。

返報性の原理。真剣には真剣で答えてくれた。
「まだ好きかとかわからないけど、誰でも良いってわけじゃないよ」確かこんな感じのことを返された。

それは誰でも良い奴のセリフだろ
恋愛すると人間は馬鹿になると言うけれど、私は元来も加わった馬鹿であったが、頭のどこかに冷静に見る第三者が控えていた。

ちょっと恋バナをした。
なんか本当にセッする流れになると思ってなくて(家に行く時点でなると思えよ)、少しパニクった頭も話をしているうちに落ち着いた。
で、普通にした。

夜して、夜中目が覚めてちょっとして、朝して。
とりあえずおじさんが慣れていて上手で、でも私的には人として形作られたようなというか、習慣化された言動というか(ほら仕事とかって染み付いてるから流れでうまく事を運べるじゃん、みたいな)、定型化?パッケージ化?されたみたいな言葉と行動が、妙に怖かった。

ただパッケージ化されたそれは、期待を裏切らないという、パッケージ通りのメリットとデメリットでしかないという、そういう安心感も私に与えてくれた。

普通に会話をすると、普通に真面目で普通に面白くて普通にただの変人で、そこには人として興味や好感を持てるのに、ちょっと恋愛くさい行動や言葉はどうしても受け付けない感じがした。
普段は人と人として、一対一で会話ができていたから、居心地良いとすら感じていた。女として見られていると感じた途端、空気は違和感に変わり、私が私じゃないみたいな、強烈に逃げたいような感覚に襲われた。

この時に私がわかったことは、「私は異性が完全に無理なわけではない」ということ。
そして、おじさんは経験豊富であるということ

朝、私が早々に帰ろうとすると、彼は少し引き止めた。
そういう時に、ちゃんと寂しいという感情を表に出せる人じゃないと、私は一緒にいられないよ。




それから

バレンタインがきて、私はチョコレートをあげた。

何故かって、あげたかったから。

ホワイトデーが来る前に、また食事に行った。
また彼の家に泊まった。

彼の行動は私を好きだと言っているのに、言葉には出てこないのが不思議だと思った。
感情が言葉に見えたのはほんのちょっと、ハグして「落ち着く」ってだけだったかな。
私は普段おとなしい方で、あまり自分の意見を話せないタイプだ。でも、伝えるべきことはしっかり伝えるし、良い感情であれば表に出すことを厭わない。だから、私はこの時も、楽しいとか嬉しいとかそういう感情が全面に出てたと思う。

翌朝、彼は昼から予定があって、途中まで手を繋いで電車に乗った。
次に会う日を決めた。
別れ際にぎりぎりまで離れなかった手なんて、お互いに寂しがってる証拠なのに。

私は彼のことを好きだと思ったけど、なぜかこの人と付き合いたいとは思わなかった。
だから、この付き合ってない曖昧な関係が私にとってもちょうど良くて。
でも会ってない間、頭の中は混乱するし、違和感のオンパレードだった。


ホワイトデーの日は、彼がちょうど職場に来てる日で、ハンドクリームをもらった。
素直に嬉しかった。

彼は3月いっぱいでこの職場にはもう来なくなるらしい。
私は、賞味期限ギリギリのスーパーで値引シール貼られまくったスイーツみたいにただただ甘いものが食べたい時に欲しくなるみたいな、そんな程度の1シーズンのクソストーリーのエンディングの準備をし出した。
自分史にて、秋冬に始まった恋愛が春に終わっていないことなんてなかった。
謎の自分ルールを言い訳に、サクサクと脳内では最終章を書き上げる。

次に会うのは彼の旅行帰りの夜、こんどは私の家の近場で。
翌日私は仕事だから、と確実に食事だけで終わらせる準備も整っている。帰り際に、気持ちだけ伝えて、さようならする。



さよならの予定で会ったからか、彼の「好きになれないところ」がよく見えた。
ナイフとフォークを上手に使うところ。
海外というか慣れない場所が苦手な私に、「行ったほうがいいよ」と旅行を勧めてくるところ。
今のままで十分幸せな私になぜか求めてもないアドバイスをしてくるところ。
痩せ型なのに運動不足そうな体型。
人に変わることを求めて、自分が相手に合わせて変わることは絶対しなさそうなところ。

食事を終えて店を出てからの「家行っちゃダメなの?」。
それに対して「嫌に決まってんじゃん」と答えた私に対して、「なんで?」と言う図太さ。
家族や仲のいい友達しか家に入れないし、付き合ってもない人入れるわけないじゃん、と言った私に対して、「人の家には入るのに自分の家には入れないんだ」とか、男女わかってるくせしてわざわざそんな嫌味みたいに言ってくるところ。

ただ、恋は脳の勘違いだから。
この誤作動を修正するために。

仕事でもプライベートでもまた何度も会うような彼の言葉に、もうさようならだよ、という言葉を何度も言った。
いや、この時点でわかれよ。
……違うか、ここまできても私みたいな優しくて可愛くて弱々しい雰囲気の女の子なら、流されてくれるとでも思われたのか。
それとも

「私はあなたことが結構好きだから、もう終わり。じゃあね」

結局、私の好きの前には「結構」がついた。
確信を持って言えるほどでもない大きさの好きは、どれくらい伝わったのか。
伝わらない方がいい。

振り返らずに家に帰った私の手には、おみやげにともらったお菓子の紙袋。
狭い1Rの部屋には、ホワイトデーにもらったハンドクリームも転がっていた。

なんだこれ、みっともない。

泣きたい気持ちなのに、いつもなら扉を閉めた途端に涙がポロポロ溢れてくるはずなのに、なぜか一滴も涙は溢れてこなかった。
これどころか、ちょっと笑えすらした。


親友にLINEをした。
大便した後みたいなスッキリした気分だ。
親友と、一緒におみやげのお菓子食べよーってご飯行く約束した。

結局、私が恋愛としてちゃんと人を好きになったことってあるのだろうか。

というか恋愛としての好きってなに?
人としての好きじゃだめなの?

やっぱり私はあの曖昧な関係がちょうどよかったのかもしれない、と思いつつ。

一度ブロックしたLINEを何故かまたブロック解除して。
親友との話題に使うためなんてクソみたいな言い訳しながら、どこかで違うこともきっと考えてる。

浅ましい私のことだから。
経験ないって言ったら綺麗に聞こえるけど、実際はそこまで人との関係性を深められないだけだから。

裏で愚痴を言いながらもパートナーがいる人生を選ぶ人の気持ちがわからない。
浅い人間関係に時間費やすくらいなら、私は今私の近くにいてくれる人との時間の方を大事にする。

軸はあるのに、私の幸せがどこにあるかは私自身が一番わかっているのに、人の言葉に影響されすぎて、いつも流されてわからなくなって。

でもまた一つお勉強になりました。

わからなくなってもまたわかるようになるまで自分と向き合ってあげたらいい。



この言い表せないもやもやとした感情は、いつの間にか思い出すこともなくなっているんだろうか。

この記事を書いている間だけ、馬鹿な自分に浸らせてほしい。



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