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写実表現かイメージ表現か「そっくりなモノは作りたくない」と思っていた私が、考え直したその理由。

私はネコ専門の造形作家です。小さなレジン製のネコを作っています。私は「そっくり」と言われる事に抵抗感がありました。「そっくり」=「本物ではない」と思っていたからです。しかし最近、その思いに変化があり、そのいきさつをお話しさせてください。


今まで目指したのは「写実」ではなく「印象」。

私のネコ作りは、猫を写実的に再現するのではなく自分にとっての「猫の印象」を形にすることを目指していました。

その具体的方法は、体は骨格や動きなどを含め写実的に表現し、頭部=顔は、あまり写実的よりも自分の中のイメージを優先し、ややイラスト的な表現の組み合わせで制作をしていました。

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【写真上:今までの私の造形】

なぜこうなったかと言うと、写実的に近づけると確かに「形状は似る」けど、「自分の持っている猫の印象と違う」ようにずっと思ってきたからです。

これは平たく言うと、写実的表現は「怖く」なりやすく、猫を見たときの「あーかわいい」という印象から離れるように感じていたからです。

また、この「体は写実的」「顔はイメージ」の方法が成り立つと思ったのは、よく漫画やアニメーションでも、体は普通の人間なのに、顔の作りは明らかに目が大きいなど、現実ではあり得ない顔でも決して気持ち悪くなく、普通に受け入れられていることも大きなヒントになっていました。

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【上図:現実ではあり得ない顔でも気持ち悪く感じにくい】

「そっくり」とは「本物ではない」と言っている。

一方、「そっくり」や「再現」という言葉はかねてより抵抗感がありました。それは「そっくり」「再現」とは本物、現物ではない事を自ら認めている言葉だと思っていたからです。

だから自分が目指す造形は、猫そっくりなモノでも、猫の再現、でもなく、「猫の印象を作る」ことを目指す。という言い方をしていました。意図的に再現という言葉を避けていたのです。

「そっくり」と喜んでくれる人がいた。

そんなある時「自分の飼い猫を作ってほしい」というご依頼をいただきました。私としては、今まで手を付けなかった「実在の猫ちゃんをモデルに」制作することになりました。

制作では試行錯誤の結果、私としても依頼者さんとしても納得のいくものにしあがりました。

そこでは、実在のモデル猫と「そっくり」と言って、とても喜んでくれる依頼者さんの声がありました。私の造形活動は「作りたいものを作りたい」という思いと同時に「自分の造形で人に喜んでもらいたい」という思いも強いです。

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【写真上:実在猫ちゃん1。過去の記事でも登場した猫ちゃん】

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【写真上:実在猫ちゃん2。エキゾチックショートヘアのボディに、彩色で実在猫ちゃんを表現】

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【写真上:実在猫ちゃん3。まるちゃん】

「そっくり」と言って喜んでくれる人は、決して「そっくり=本物ではないモノ」とは、とらえていません。そこで私は改めて「そっくり」とは何を感じ取っているのか、よーーく考えてみました。

「猫かわいい!」と感じるスイッチは、猫そのもではないのではないか?

例えば猫が好きな人が、猫に接した時に発生する感情があります。それは「かわいい」とか「癒される」等のポジティブな感情を自分の中で発生させたとします。そしてそのスイッチは猫とのコンタクトです。

しかし実は、その「ポジティブな感情を発生」させているのは、猫そのものではなく、猫をスイッチにして、自分の中で自分がポジティブ感情を発生させているのではないかと考えてみました。

そうなると、「発生のきっかけ」は、必ずしも現実の猫でなくても良いのかもしれない。例えば「ネコのイラスト」や「猫を思い出す」ことでも同じスイッチが入り、そこでは実際に猫と接した時に発生するものと同じ=偽物ではない本物の感情が発生するのではないかと。

そう考えると、ネコの造形に接した時に「わーそっくり」と言う反応は、「現実の猫と接した時に発生する感情と同じものが出てきましたよ!」という事を言っているのではないか。

また「再現」とは、現実の猫ではないものを「疑似的に作りだす」=「偽モノ」という意味ではなく、猫と接した時の感情と同じものを発生させる造形、という意味だと思い始めました。

すいません。言ってる事がわからないかもしれません。私もうまく言葉にできずもどかしいです。

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要は、「そっくり」とは「本物ではない」という意味ではなく、「求める対象と同じ感情が発生します」という事なのではないか。と考えるとあえて避ける事ではなく、むしろ目指すべきことなのかもしれません。

また、それこそが元々目指していた「印象を作る」ということなのかも。と思うようになってきました。

そっくりと感じるだけの写実性は必要なのかも?

この「そっくり/再現」問題と「写実かイメージか」問題は、近いけど微妙に違う話だと思います。しかし強く関連しているとも見ています。

そこで自分の中ではまだ解決していないこの課題に対し、具体的な試行錯誤をしていこうと考えています。

その方法とは、初めから「頭部は別のもの」と考えず、頭部も自分の中で許容できる範囲で写実的に猫に近づける。=怖くならず自分でかわいいと思える範囲の中で。という事にトライしてみたいと考えています。

見る人にとって、猫から受ける印象と同じものが発生する「そっくり」「再現」を目指して。そして自分でもそれこそが「目指す印象」になる可能性を探るため。

言葉にできないもどかしさ

今回は、何年も前からずっと考えてきたことを、なんとか言語化したくて文章化してみましたが、うまく言い表せないもどかしさがあります。

自分の中でまだ消化しきれていないことと、言葉の技術も未熟なため言い表しきれませんでしたが、しかし今後も、造形の実例を増やしながらまた言語化に挑戦したいと思います。

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ありがとうございます。
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ネコ専門の造形作家54歳です「何の役にも立たないけど、そばにいると嬉しい」をテーマにレジンのネコを制作しています。多摩美を卒業後、広告会社でデザイナーとして勤務。その後どうしても「手でものを作りたい」と2020年に退職して造形作家に。 https://benieda.com