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不安で行動できない人の背中を押してくれるアニメ『宇宙よりも遠い場所』
今回は、アニメ『宇宙よりも遠い場所』のレビューをしていく。
作品を観たことがない人は勿論、観たことがある人も新たな作品の見方を得られるかもしれないので是非読んでほしい。
あらすじ
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何かを始めたいと思いながら、中々一歩を踏み出すことのできないまま高校2年生になってしまった少女・玉木マリことキマリ。
とあることをきっかけに南極を目指す少女・小淵沢報瀬と出会う。
高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、報瀬と共に南極を目指すことを誓うのだが……。
(公式サイトより)
『宇宙よりも遠い場所』のテーマ
人は行動するのが怖い、挑戦したいけど一歩踏み出せない…と不安になる時がある。
宇宙よりも遠い場所はそんな人の背中を押してくれるアニメだ。
このアニメの登場人物は全員高校生であり、学生は「学校」という狭い空間で、同じ人と同じ環境でぬくぬくと安心しがち。
しかし、このアニメの主要人物の4人の女子高生達は、学校という枠を超えて南極という未知かつ巨大な目標に向かう。
そんな彼女らの姿には心を動かされるし、不安で一歩が踏み出せない人心をほぐしてくれる。
【ネタバレあり】印象に残った話
ここからは、過去に本作を観たことがある人へ向けて、私が個人的に印象に残った話について振り返る。
3話 : 仲間
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3話は、友達のいなかった白石結月が、キマリ、シラセ、ヒナタの3人と初めて出会い、最後には「4人とじゃなきゃ、南極に行かないから!」と決意する感動的な回。
結月は人生で一度も友達ができたことがなく、できたとしても、タレント活動の影響で学校に行けず、せっかく仲良く慣れそうだった同級生ともすぐ疎遠になるということを繰り返していた。
そんな時に出会った3人。
「彼女らともまた疎遠になるのだろうな…」と見捨てられるような気持ちでいた結月だったが、彼女ら3人は見捨てずに、「一緒に行こ!」と誘ってくれた。
そこで結月は床に倒れ込んで涙を流す。
この涙には、「見捨てないでくれた…」という嬉しさ、安心、驚きが含まれており、そのほかにもユヅキの中で溢れ出る感情がそこで爆発してしまったのだろう。
私にも友達は現在進行形でいないので、この話には深く感情移入できた。
しかし注意すべきなのは、あくまでこの時点では「友達」ではなく、「同じ目標に向かって進む仲間」であること。
また、結月は友達がどういったものかがわからず、これについては10話で出てくるのだが、「友達誓約書」なるものを作ったりと、少々ずれた言動をするのだが、そこも含めて健気で魅力のあるキャラだった。
5話 : いってきます!
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心が痛む、衝撃的な回。
それと同時に感動的な回でもある。
キマリの親友であるめぐっちゃんが、キマリが南極へ出発する直前に「絶交しにきた」という衝撃的な一言を放つ。
あまりにも突然のことだったが、ここで、キマリ達が南極へ行くことや、シラセが100万円を所持していることをクラスの連中に広めていた人物がめぐっちゃんであることが判明。
めぐっちゃんは、キマリが仲間と共に目標に向かって旅立つことに対して、疎外感、嫉妬心、嫌悪感を覚えていたのだ。
そして、自分が頼られているのではなく、実は自分がキマリに依存していたことに気づく。
友達に頼られるふりをして満足感を得て、いざ友達がいなくなったら、空っぽで何もない自分に気づく。
個人的に、こうなってる学生は意外と多いと思っていて、先にも述べたように、学校という空間は狭く、そこで友達に依存して、自分が本当に好きなものや熱中できるものを見失い、人に依存してしまう人は一定数いるのだ。
しかし、そのことに気づけていない学生が多い中でめぐっちゃんは気づけた。
そして、最終話の最後の最後で、1人で北極に行っていたことが判明!
友達への依存から独立し、自分の心からワクワクできるものへと向かうことができためぐっちゃんの姿に感動。
依存し合わず、互いに刺激し合い、だけども時には助け合い。
そんな関係性がまさに「親友」と呼ぶのだろう。
12話 : ここにきた目的
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ここは宇宙よりも遠い場所の伝説的な回で、最後の報瀬のメールが大量にパソコンに映し出される場面が印象に残っている人も多いだろう。
報瀬は最初に南極に到着した時、「ざまぁみろ!」と大きな声で叫んだ。これは学校で南極に行くことをバカにしてきた同級生に対してのセリフだろう。
しかし、私はこの台詞に違和感を覚えた。
報瀬がここにきた理由は、母が見た景色を見るため。
あくまで目的は母が中心なのに、到着した時に出てきたセリフが、同級生に対してのものなのに違和感を感じたのだ。
別に報瀬は馬鹿にした同級生を見返すために南極に来たのではない。(モチベーションの一つではあるが)。
また、報瀬はこう言っていた。
南極に来たら泣くんじゃないかって思ってた。でも実際は、何を見ても「写真と同じだ」くらいの感想しかでてこなかった。感動がなかった。
そう、報瀬は南極に到達した時、感動したり驚いたりなどせず、何も感じていなかったのだ。
南極についた先に何があるのかがわからなくなっている報瀬。
しかし、報瀬は最後に、ここに来た目的を見つけ、果たすことになる。
それが、キマリ、日向、結月の3人が必死で探し見つけた、報瀬の母・小淵沢貴子のノートPCである。
そこには、大量の報瀬から母へのメールがあり、ここに来てようやく報瀬は涙を流した。
このメールは母に届いていたということがわかって、今までの努力が報われたと実感できたのだろう。
報瀬の中でずっとモヤモヤしていたものが一気に晴れたような気がした。
キャラ
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本作の登場人物は、一人ひとりが、辛い過去やコンプレックスを抱えている。
しかし己と向き合いながら、仲間と互いに刺激しあうことでそれを乗り越えていくのが見どころ。
彼女達がどんなコンプレックスがあり、それをどう克服していくかに注目してみるのも面白いだろう。
話数
本作は、13話という短い話数にもかかわらず内容が濃い。
「もっと続いてほしい」とも「13話は短すぎ!」とも思わない。
むしろ13話という短さだからこそ作品に没頭できたし、話をテンポよく進み、内容もスッと頭に入ってきて、心の奥深くまで感じ取ることができた。
声優の演技
水瀬いのり、井口裕香、早見沙織、花澤香菜。
アニメをかじっている人は一度は聞いたことがあるだろう。
演技力については文句なし。
それどころか、予想をはるかに上回るほどの神がかり的な演技を見せつけてくれた。(特に、花澤香菜の泣きの演技には圧倒された。)
また声優一人ひとりの演技力に加えて、キャラとの相性も抜群。
玉木マリと水瀬いのりは、元気はつらつとした仲間思いで熱い性格を。
三宅日向と井口裕香は、場を盛り上げ、周りも気遣えるムードメーカー的存在だが、心の中にどこか闇を隠している性格を。
白石結月と早見沙織は、孤独で冷静、だけど時には天然で健気な性格を。
小淵沢報瀬と花澤香菜は、固い意志を持っていてぶれない軸があるが、それ故に周りが見えなくなって自分を見失ってしまいがちな不器用な性格を。
それぞれ声優とキャラの相性がバッチリ合っていて、聞いていて心地よい演技だった。最高。
作画
作画についてだが、これは可もなく不可もなくといった感じ。
別に「良い」とも言えないし、かと言って「悪い」というわけでもない。普通。
酷い作画ミスがあったわけでもないので、特にこだわりがない人は全然観れるクオリティだし、内容が作画を上回ってくるのでそんなこと考えている暇はなくなる。
総評
この作品は、作画を除いてはズバ抜けて完成度が高いアニメだった。
最初はただの萌え豚アニメだと思っていたが、彼女たちが成長していく過程を見ていく中で私は画面に釘付けになっていた。
小淵沢報瀬の「お母さんが行った南極に行く」という強い意志から、共に同じ場所を目指す3人と出会い、たくさんの人達を巻き込んで到達する。
やはり、人は常日頃から誠実にコツコツと努力していれば、何らかの形で報われるのかなと思ったりもした。
確かに、現実では目標は達成できないことの方が多い。
しかし、あなたの努力を継続しているのを見ている人は必ずいるし、同じ志を持った人は同じ場所に集まるのだ。
「君は1人じゃないよ」というメッセージを私は本作から受け取った。
現実でうまくいかないことがあったり、不安で行動できない人は一度観てみてはいかがだろうか。
※今回使用した画像は、ヘッダー画像含め全て『宇宙よりも遠い場所』公式サイト(http://yorimoi.com)より引用しています。
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