第32話:ひまわり

お向かいのケーキ屋さんに

最近

新しいひとが

立っている


アーケードの明かりが消えたのに

まだ明かりが灯っている

ケーキ屋さんで

新しい人が

ひとりで

ケーキのショーウィンドウを

ふいていたので

捨ててしまうだろうひまわりを

持って行った


翌日、同じ時間に

同じ人が

ウィンドウに霧を

吹きかけているところ

きのうと同じ花を

持って行った


その次の日には

もう別のひとが

ウィンドウに

薬をかけていた


売れ残ったひまわりは

半分捨てて、

半分持ち帰った


それから、ひまわりばかりを

束ねる日々だった


そうしているうちに

ひまわりの季節が

終わった


あの新しいひとが

ケーキを持って

ひまわりを買いに来たとき

季節はもう

次の夏になっていた

家に飾るための

ひまわりだった

ケーキをもらって

ひまわりをあげた


それから

この夏は

一度だけ

ひまわり畑を見に行った


夏が終わった

ケーキ屋さんに

また

新しい人が

立っている










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