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山の幸(春)

 食レポシリーズ第1弾。実家の周囲で採れた山の幸の記録をまとめました。

土筆

 つくし。スギナの胞子嚢のこと。春先に乾いた土地にニョキニョキ生えます。地下茎で他と繋がっているので、地上に見えている部分だけ採ればOK!指で手折ればプチッと軽快な音と共に採取できます。切り口は吸い上げられた水分が出、表面張力を感じられます。
 食べ頃は5~10cm程度まで伸びたもの。短いと食べごたえが無い上後述の下処理が面倒です。逆に長くなりすぎたり発生から時が経つとスジっぽくなり美味しくありません。目安は頭の胞子嚢が開き切らない程度です。

 採取したつくしは、頭と袴を取り、水に晒して下処理。その後はお好きに食べてもらって結構ですが、私は佃煮が好きです。
 砂糖と醤油で甘辛く煮たつくしの佃煮。箸で持つとしなりと柔らかいのですが、繊維がしっかりしているためジャキジャキとした食感が楽しめます。レタスやエノキのような、繊維を噛み切る感覚です。味付けによりご飯も進むので、油断すると3合ほど消えます。

 身近にあり、子どもでも採取が容易で、山菜にしては下処理が容易な方なので興味が湧いた方は試してみては。

明日葉

 アシタバ。手の平を広げたような形状・大きさの葉を伸ばす高さ1mほどの植物。冬でも緑色の葉をつけるので見付けやすいです。これもつくし同様、子どもでも容易に採取が可能でしょう。茎も食べることが可能なので、テキトーに採取してしまって大丈夫です。新芽の方が食用に適しているので、春先を狙うと食べやすいかと思います。

 別に春先でなくとも食べられます。摘んだ際もそうですが、植物に付いた傷から出る青臭さが多少あります。キャベツやレタスにはこの青臭さがほぼ無く(ゆえによく使われますね)、ほうれん草を茹でた際の匂いのような物と思ってください。ほうれん草はまた少し独特な青臭さですけれども。草刈り・草むしりなどの経験があれば、そのときに土の匂いに混じっていた植物の匂いがそれです。
 この匂いは新芽の方が弱く、大きな葉ほど基本的には強いです。したがって夏以降に食べるのでしたら刻んだベーコンとバター炒めとかにしたら美味しいと思います。
 どちらにせよ生のままでは繊維が強いので、火を通して食べることをお勧めします。

 食べた感じは普通の葉っぱです。生で感じた青臭さも火を通すと軽減され、爽やかな香りに感じられます。また、加熱により鮮やかなエメラルドグリーンになるので、見た目のアクセントとして最適でしょう。天ぷらの盛り合わせで1点アシタバを入れると、皿が引き締まって高級感が出ます。
 アシタバの天ぷらは、衣を通してなおその輝きを感じられるほどの鮮やかなエメラルドグリーンです。色合いは折り紙の金銀みたいな光沢のある緑のアレ。葉の厚みは普通の葉っぱなので、天ぷらとしては非常に薄く、食感はパリパリのサクサク。揚げ玉チックな感じで、衣の食感がダイレクトです。味は天ぷらによって癖が軽減されているため、何を食べているのか分からない程度に感じません。爽やかな香りが少し。ですので他の品の箸休めに良いでしょう。
 美味しいですよ。

蕗の薹

 フキノトウ。フキの花の部分のことです。春になると花を咲かすためにフキの地下茎から一斉にこの部分を伸ばします。食べられるのは花がつぼみの間、花茎の部分全体です。花が咲いてしまう頃には茎部分は堅くなり食用に適しません。地下茎には毒があるので、地上に出た部分から採取するようにしましょう。また、際限無いほどポコポコ出るのと、3日も放置すると食べ頃を過ぎてしまうので、群生地での週1採取ならば食べ頃を狙って採っていきましょう。

 採取したら、地表に顔を出すまで本体を覆っていた堅い袴の部分を外し、水にさらして汚れを取ります。天ぷらにするならそのままキッチンペーパーで水をよく切り、衣をまとわせGo。それ以外の調理法を取るなら、重曹を入れた熱湯で軽く茹でてから水にさらし、あく抜きをしましょう。

 天ぷらは楽しい食感です。ブロッコリーやカリフラワーを柔らかく大粒にしたような食感と共に、噛んだ瞬間から山の香りと独特の苦みが溢れます。天つゆにつけてビールと合わせると勝利が見えます。
 それ以外だと、あく抜き後に酢味噌和えにしたものをよく食べました。強烈な苦みと、しばらく残る香りや後味が大人向けです。スッキリした後引きの日本酒と相性が抜群です。

 フキ。前述のフキノトウの葉っぱ部分です。地下茎で繋がっているので、地上出ている部分は茎と葉のように見えますが、それ全体で1枚の葉です。
 大きいものはスジを除くのが手間なので、春ごろに新芽を狙っていきます。採取したら塩で板摺の後に重曹で下茹でして灰汁を抜きます。その後スジを除いて下処理完成。

 煮物にしてよく食べました。煮てすぐだとチンゲン菜のような歯応えが楽しめます。またニンジンやゴボウ、シイタケなど他の煮物食材に無い苦味があるので、味のバラエティが広がります。寝かせた煮物だとこの苦味と出汁がフキの中で調和を初め、噛んでいる間に味の移り変わりを楽しめるでしょう。

山椒

 調味料や薬味として有名なあの山椒ですが、今回はそうして使われる実ではなく、葉の方です。葉は椿のようにやや肉厚ですが、長径1cm、短径4mmほどの楕円をした小さな葉が房を成すような形で枝から伸びます。この葉は固く食用にあまり向かないのですが、低木である山椒は、やはり春には新芽を伸ばします。この新芽は食べることが可能です。

 山菜の調理法の鉄板ということで天ぷらにしました。やや繊維が硬い部分もありますが食べられます。味は山椒の実のそれから、刺激的なトゲを除いた感じ。香りはまさしくそのもので、おのずと唾液が溢れる匂いが噛んだ途端に流れ出し、口内から鼻に抜けていきます。好みの問題も出てきますが、薬味の山椒が好きな方には是非味わっていただきたい
 タマネギやニンジンのかき揚げに混ぜ込んでアクセントにしても輝きますし、そのまま日本酒のアテにしても最高です。

たらの芽

 美味い。
 ただ木は頑丈な棘で覆われているので採取には注意して下さい。また、1本のたらの木が1年に伸ばす芽の数は非常に少なく限られているので、自分の管理地でない山で採るのは避けましょう。絶滅してしまいかねません。

センマイ

 山菜の代表格。クルンとしたアイツです。
 採取したら袴を除き、綿を取り、一晩水に晒します。その後に重曹などで茹でて灰汁を抜きます。めちゃくちゃ手間です。

 味は、苦味や渋みも少々ありますが、これは灰汁抜きの程度で多少変わるので何とも。ただ香りの爽やかさは良い。炊き込みご飯にするのが好きですが、おひたしも良いです。ただ手間に見合うかと言うと怪しいので、そこまでオススメはしていません。美味しいですけど。

 フルーツとして有名な柿ですが、大きく甘柿と渋柿に分かれます。その上で品種が色々とあるわけですが、実の食べ方は秋の部に取っておきます。今回は葉を食べます。山椒と同じ流れですね。
 食用に適するのは甘柿の新芽です。あまり採り過ぎると枝が上手く伸びず成長に影響が出るのでほどほどにしましょう。また木によっては枝が高い位置へ伸びるので、転落などにも気を付けてください。
 新芽は透き通るような淡い色をしているので、葉っぱらしい緑になり始めたら採取は避けておきましょう。繊維が硬くて楽しみにくいです。

 採取後は灰汁抜きなどは不要です。洗ったらそのまま調理してOK。
 定番と化した天ぷらで頂きました。新芽は1つ1つが小さいので、複数をまとめてかき揚げ形式で。青臭さは無く、上品な甘さに驚きです。スープに入れた擂りニンジンや、火を通したタマネギのような自然の甘味を堪能できます。塩を軽く振ると甘みがより引き立つので試してみてください。強烈さは無く、包むような素朴で柔らかな甘み。他では未だ味わったことの無い味ですので、お読みの方も是非。

 タケノコ。竹林で採るアレです。採る際には足の裏で生命の息吹を感じてあげると、最も美味しい逸品が手に入ります。採取時には、タケノコの反りの方向から地下茎との接続部分に見当をつけ、そこを鍬で切断します。この辺の見つけ方採取の手際に熟練度が反映されます。初めてのタケノコ狩りなら5本も採れれば良い腕だと思いますよ!

 遠方へ輸送する場合は土の付いたままでないとすぐに傷んでしまうので注意が必要です。
 食べる際は、土を落とす前に根を切り落とし、皮を剥ぎます。これで土も一緒に落ちます。その後は、土の質によりますが、米糠と共に茹でこぼして灰汁を抜きます。冷めてから糠を洗い流して下処理完了です。

 一番美味しいのは刺身です。山葵醤油で、日本酒もあると優勝。灰汁抜きした当日でないと出せない味ですので、貴重です。シャキシャキの食感と、ふわりとした香りが風流です。それのみで完成された味と言えるでしょう。
 あとは炊き込みご飯、青椒肉絲、味噌汁などなど鉄板メニューがありますが、変わり種でステーキを紹介。根っこに近い、土に埋まった部分を使います。こちらを1~1.5cmの厚みにカットしてバター醤油で焼きます。採ってすぐならば柔らかく、バリバリとした歯ごたえも楽しめるでしょう。ご飯も進みますし何よりビールに合います。

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