雨の日の家はコーヒーの匂いがする

朝、娘を幼稚園まで送っていった。園に着くと、娘は元気に集団の中に吸い込まれていき、私は1人、雨の中傘をさして帰った。
こういう時、改めて、ああ私はもう1人じゃないんだな、と感じる。

雨なのに家を出なきゃいけない。

私が1人だった時にはありえないことだ。
もし雨の日に予定が入っていたら速攻でキャンセルしていたし、家の中でひたすら本を読んで過ごしていた。そういう事をOKしてくれる人付き合いしかしていなかったからだ。

でも、幼稚園は雨でも行かなきゃいけない。娘は長靴とカッパを着るとテンションが上がっていつもより歩くのが遅くなるので、2倍近くの時間をかけて幼稚園まで行かなきゃいけない。文字だけでくらくら、目眩がする。

これが、小学校になり中学になり高校になり、大学生になり、社会人になるまで続くのだ(ちなみに私は雨の日は自主休講していたので、大学では当てはまらなかった)。

家に帰ってドアを開けると、コーヒーの匂いがした。朝、私が飲んだコーヒーの匂い。

晴れてる日は朝一番に家中の窓という窓を開けるので、こんな匂いはしない。今までは雨の日に家を出なかったので、コーヒーの匂いが家の中に充満していることは知らなかった。

雨の日の家はコーヒーの匂いがする。

今日初めて気づいて、なんだか幸せだった。
この匂いが嗅げるなら、幼稚園の送迎も頑張れそうな気がした。

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