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Melodie of Shadows歌詞制作秘話②作詞と裏テーマ

タイトルは、DとD

12月26日朝、本格的に作詞作業に取り掛かった。
私はまず、せっかくシンガーが決まっているのだから、彼女の声が魅力的に聞こえる音について考えた。
私自身の勝手な印象によるが、彼女の声質から「D」のつく言葉を入れたいと思った。
さまざまな言葉を探し、最初に気に入ったのが、

「Depths of Despair」(デプス オブ デスパイヤー)

という言葉だ。
りんこが発声したらと考えるとワクワクした。
意味は、絶望の淵。
なかなかいいではないか。ダークファンタジーっぽい。
しかし、歌詞やタイトルにすることを考えるなら、日本人の9割の人が一瞬で理解できる言葉が望ましい。
と考えて断念。

実は、作詞することが決まってから楽曲を待っている間に、りんこをイメージしながら密かに考えていたフレーズがある。

「Rising from the shadows」

このイメージとはやや違う楽曲になったが、全くかけ離れてもいない。
そして「Shadows」という言葉は使えると思った。
アクセントが当たる位置ではないにしろ、Dが入っている。
そこで、Dが入る言葉を並べて、

「Melod(D)ie of Shad(D)ows」。

これをタイトルに決めた。
Yonnyにも許可を取った。
朝の7時半だった。

ちなみに、なぜ「Melody」ではなく「Melodie」なのか。
特に深い意味はなく、字の並びの作る雰囲気で選んだだけだ。
アン・シャーリー(モンゴメリ著「赤毛のアン」)が、
「Ann」ではなく「Anne」と呼んで欲しいと言っていたのと同じようなものだ。
知らんけど。

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音楽と言葉

タイトルは決まった。
主人公のイメージも決まった。
次は、具体的に音楽に言葉を合わせていく作業だ。

以前、自分のオリジナルを作っていた時は、音楽も歌詞も、同時に歌いながら作っていた。
どちらかといえば歌詞先行型かもしれない。
しかし今回は違う。すでに用意されたメロディに歌詞を入れていく作業だ。

Yonnyからは、メロディの細かいところは、歌い手の都合で変えても良いとされていた。
彼は若い頃のことを語っていた。
バンド活動をしていた頃、彼が作った曲に作詞していたボーカリストから
「息継ぎをするところがない」とか、逆に
「音数が少なすぎて当てる言葉がない」
とよく言われていたとか。
当時のYonnyは
「絶対にこのメロディでなければダメだ!」
と主張してボーカリストと衝突したこともあったそうだが、今では、歌い手ありきの思考に変わっているらしい。

今回の曲に関して言えば、最初のデモにラララを入れた際、
「息継ぎは大丈夫か?」
と思った部分があった。
それはYonnyも分かっていたのだと思う。
音楽の流れが変わらないように気をつけながら、少しだけ歌いやすいように工夫した。

作詞の基本的なこととして、
メロディの上下の動きと言葉のイントネーションが、できる限り合致するのが望ましい。

例えば、冒頭の「いつも」は、音が上から下にさがるワードから選んだ。
「あした(⤴︎)」などであっては、あまり合わないのだ。
もちろん、楽曲中すべてのワードがメロディの上下と合致するわけではないが、基本的ににこのことは常に考えている。

メロディの切れ目(息継ぎのタイミング)と、センテンスの切れ目が一致するようにも心がけている。メロディの音数と、入れたいワードの音数が一致しないこともある。その場合は、同じ意味でありつつ文字数が合う言葉を探す。

しかし文字数などが合えばいいというわけではない。
その曲の核となるフレーズが必要だ。

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「歌」と「生きる」

私は最初から考えていた。
りんこのオリジナルの1曲目として、彼女の魅力をあらわす言葉を書きたい。
最大の魅力はやはり、歌声そのものだ。

「歌」と、Yonnyが示した強いキーワード「生きる」。
それに主人公のイメージを当てはめた時、

「叫ぶように歌って 歌うように生きて」

というフレーズが生まれた。
「いける」
と確信した。
主人公が生き生きと動きだし、りんこの歌声が聞こえる気がした。
「生きて」に楽曲のアクセントがバチっと当たるのも最高ではないか!

それからは猛烈に早かった。
のんびりしていたら、せっかくとらえたイメージが逃げそうな気がして、
大急ぎで1番を書き上げた。
それをすぐに歌って録音、Yonnyに送信した。
しかし確認を待たずに全てを書ききり、それも歌って送った。
この時、時刻は10時半くらいだった。

Yonnyの反応は

「凄い!何か、どうしようもない孤独と、強い意志を感じる」

つまり1発OKだ。
私は、
「曲もすごいから」
と返信したあと、盛大に満足のため息をついた。
不安もあった作詞作業は、午前中で完了したのだ。
手応えもある。

「私も、まだなかなかのエンジン積んでるじゃないの」

と思った。
いや待て、そうではない。
10年放置していたエンジンは、上質な燃料のおかげで作動したのだ。
Yonnyの音楽と、りんこの魅力の賜物だ。
私は大いに興奮していた。
すぐにでもりんこに読んで欲しかった。
ところがYonnyは

「追加でやって欲しいことがあるんだけど」

なんですと!?

どうやらりんこには、コーラスも入れて仮歌を完成させた状態で渡すつもりのようだ。

次回は、仮歌制作について記すことにする。

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以下、余談である。

裏テーマ

実はこの歌詞には、現在(2024年3月)に至るまでYonnyにもりんこにも明かしていない、私の中での裏テーマがある。

物語を作る際に、表向きはファンタジーのような物語でも、今を生きる私たちと共感しあえるポイントが必要だ。
今回この曲の主人公に託したのが、2020年から始まったコロナ禍に感じた、猛烈な違和感である。
ソーシャルディスタンス。3密。ステイホーム。ロックダウン。同調圧力。努力義務。
それまでなじみのなかった言葉が日常に入り込んできた。
閲覧していた動画等が次々排除されると言う事態にも驚愕した。

言論の自由は一体どこに行ったのだ。
私たちは、ほんとうに社会に守られているのか?
それとも、なにかにコントロールされて生きているのか?

楽曲説明文に書いた
「束縛や他者からのコントロールを決然と拒絶」
と言う言葉はこの辺りから来ている。

ちなみに私自身は、そんなことをごちゃごちゃと考えていただけの小市民である。

記録として残すが、このような裏テーマのことなど考えずに聴いていただきたい。

③コーラスと仮歌編につづく




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