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空っぽな暗闇に目を凝らすのさ。 2024.05.03 鹿島アントラーズvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ

■試合の振り返り

 大型連休後半初日、晴天の鹿嶋でキックオフ。湘南は前節札幌戦からメンバーとシステムを変更。4-4-2から3-5-2として、左WBには杉岡ではなく畑、アンカーは奥野ではなく茨田が入る。髙橋は右CBを務め、ルキアンの相方には阿部に代わって福田。GKは馬渡に代わり、ソンボムグンが3試合ぶりに湘南のゴールマウスを守る。対する鹿島は勝利した前節ガンバ大阪戦からメンバー変更なし。


 前半の鹿島は鈴木優磨にボールを当てて湘南守備陣を中央に集め、そこから開けたサイドへの展開を画策。しかしDFラインの前でボールを回されるので、湘南としてはそこまで対応も難しくなさそうな様子。あらかじめスカウティングがあったのか、鹿島が狙いがちなボールサイドでない方の大外のケアもWBが下がって対応できていた。


 徐々に鹿島が攻め手に迷う時間ができると、ボール奪取から福田の脚力を活かしたカウンターが見られるように。さらに左サイドは畑による縦突破、右サイドは複数人による関係性での崩しからのクロスで鹿島ゴールに迫った。23分は雄斗のクロスから福田、こぼれ球にルキアンがミートできれば得点という決定機。
 鹿島に思い通りの攻撃をさせず、逆にカウンターから相手ゴールに迫る形を見せるなど、ある程度プラン通りの展開で前半を終える。だが結局0-0であるため、湘南が何本か放ったシュートがゴールを脅かすところにまで至らなかったのが残念。


 後半開始から鹿島は樋口に代えて前線にチャヴリッチを投入、組み立てからの崩しは控えてシンプルな裏狙いのフィード&FWの高さ強さを利用。前半の名古や仲間が見せたランニングの形を、より得点力のある選手で強調する修正を見せる。圧力を高めて湘南を自陣内に閉じ込め、波状攻撃とセットプレーで一気呵成に出る鹿島。狙い通りコーナーキックの流れから50分に鈴木優磨が先制ゴール。前半は出来ていた大外のケアが空いてしまい、フリーでチャヴリッチに折り返されたのが痛かった。
 鹿島は引き続きチャヴリッチ起点で押し込み続け、湘南のラインを押し下げたらバックラインから組み立て。62分に左サイドからのフリーキックを鈴木優が合わせて追加点。効率よく得点を重ねてリードを広げる。


 湘南も選手交代で攻勢に出るが、逆にカウンターによる失点で万事休す。67分、チャヴリッチのゴールで3-0となり、85分に福田が1点を返すも反撃はここまで。二試合連続の3失点で3-1の敗戦、順位もとうとう最下位に転落。厳しい連休を過ごす湘南、次の試合は休む間もなく中二日でホーム鳥栖戦を迎える。下位に沈む両チームにとって大きな直接対決になりそうである。


■"また"相手の修正に対応できなかったのか?

 前半は互角かそれ以上の戦いを見せながらも、後半で相手に上回られるというよく見た試合展開だった。3失点目のGK早川の素晴らしいフィードから生まれたカウンターはまだしも、1・2失点目のセットプレー時におけるゾーンディフェンスのミスは何試合も続いているポイントのため、相手に狙われ始めている弱点と言えるはずだ。

 後半開始から投入されたチャヴリッチと鹿島の圧力に押しつぶされる形になったが、この試合も相手の修正に為す術なく敗れていったのだろうか。
 筆者の感覚として鹿島がハーフタイムに取った変更は、戦術的な修正というよりは意思統一といった方が適切に思われる。高さと強さ、スピードのあるFWを裏に走らせ、シンプルに相手を押し込むという方針を強調するための人選(樋口⇒チャヴリッチ)と実行方法の提示(細かく繋がず裏へフィード)。その指示のもと5分のうちに得点を奪ってしまうあたり、さすが鹿島(ミンテの言うところの勝負強さ)と言える所以なのかもしれない。

 ただ裏へ抜けるパターンは前半にも見られており、その際は問題なく対応したり、フィードを遠くへ跳ね返せていた。おそらくボールを受けた選手が仲間や名古であり、湘南DF陣でもフィジカル的に引けを取らない相手だったからだろう。それがチャヴリッチに代わると途端にズルズルとラインを下げざるを得なかったのは、相手の方が様々な面で質の高い選手だったこと、湘南が相手のロングフィードを遠くまで跳ね返せなかったことの二つが理由として考えられる。
 そのためこの試合を振り返る際に「相手の修正に対応できなかった」という話をするのであれば、「湘南DF陣が見せた対応の質」についても検討する必要があるだろう。


■伸びしろは残っているか?

 この試合を通して見たときに筆者が感じたことは、「しっかりと鹿島相手の準備をしたのだけど、結果に繋がらなかったな」というものである。鹿島が仕掛けたいピッチ中央からのショートカウンターを外すようにサイドを中心にボールを繋ぎ、仮に奪われても大外のスペースを取るSBはWBがしっかりと監視して使わせない。中央エリアを動くFWとSHに対してはCBや中盤が迎撃して前を向かせず、逆にカウンターの起点としていた。次第に鹿島が攻めあぐねる時間が生まれたあたりは、監督のプラン通りだったと思われる。

 しかしながらそこまでしても得点は奪えず、逆に細かなミスを重ねて失点。追いかけても点差は広がるばかりだった。対鹿島戦において、準備できることはやった(各局面でのプレーミスという話ではなく)にもかかわらず結果は敗戦。やれることをやったうえで負けたとなると、手付かずや未履修の課題があって負けた場合よりも切なさが大きい。まだできていないことだらけで、発展途上であることを見せられた方がマシだろう。
 つまり基礎的な部分が決定的に足りていない状態で、即効性のある改善策が残っていない可能性があるのでは?と感じ始めている。何か所も水漏れしている屋根のある一か所だけ直しても、その場しのぎにしかならないのと同じだ。一枚で何か所も塞げる板(選手)を用意するか、屋根そのもの(守備と攻撃の設計)を取り換えるか、家自体を建て替えるか。


 これが筆者の見る目のなさが理由ならそれで一向にかまわない。まだチームに伸びしろが残っているならば、それをピッチで見せてほしいと強く願う。



試合結果

J1リーグ第11節
鹿島アントラーズ 3-1 湘南ベルマーレ

鹿島:鈴木優(50',62')、チャヴリッチ(67')
湘南:福田(85')

主審 上田 益也



タイトル引用:渡会雲雀/skylark

鹿島アントラーズのコラボライバー、渡会雲雀の楽曲より引用。懸命に取り組みつつも結果が出ない現状は暗闇に迷い込んだようで、その中で必死に光を探して目を凝らしているチーム状態から。

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