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1番特等席で君の笑顔⾒たいんだ。 2024.09.28 湘南ベルマーレ vs 鹿島アントラーズ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ


■ハイライト

 日中は蒸し暑さが残りつつも秋らしさを感じる気温になった関東地方、久しぶりに飲水タイムが設けられない気候条件となった平塚でキックオフ。湘南は前節から2人変更。髙橋がベンチからも外れて大岩が右CBに入る。FWは阿部がベンチにまわり、章斗と福田が2トップを組んだ。
 対する鹿島はリーグ戦⇒天皇杯⇒リーグ戦と3連戦の3試合目を戦う。水曜日のゲームから変更は1名のみ。負傷した知念に代わって仲間が入り、三竿と柴崎がCHを組み仲間が左SH、名古がトップ下に入った。



 序盤はお互いにロングフィードからチャンスを迎える。6分は鹿島が大きな浮き球をヘディングで繋いでサイドを突破、最後は鈴木優磨のシュート。7分は湘南、章斗の抜け出しから最後は福田のシュート。ともにGKがシュートを抑え、開始早々両チームでシュートチャンスを作った。

 湘南は鹿島のフィードに対し、大岩とミンテで分担しながら鈴木優磨に対応する形を準備。だが鹿島も名古や仲間が代わりに競り合い、こぼれ球を鈴木優磨が拾う形で対応する。もともとフィードの跳ね返しやこぼれ球の処理も甘く、鹿島にフィードを諦めさせる程の対応は見せられていなかった。
 鹿島のプレスもやや怪しいところがあり、右SHの師岡は平岡と畑のどちらをケアするのかはっきりせず。畑が裏抜けを見せれば師岡がついていくので、平岡は簡単にフリーに。あるいは淳之介がボールを持った際、コースを切らずに寄せていくため大外の畑が空く。平岡が濃野の背後に向かってランニングをすれば、畑はフリーの時間を得られていた。


 16分、湘南のセットプレーを跳ね返してカウンターに繋げようとする鹿島のボールを逆に引っ掛け、湘南が追撃。遠めの位置から雄斗が右足を振ったがシュートはポストを叩いた。

 22分、コーナーキックから鹿島が先制。名古のキックに関川がニアで合わせると、ファーで濃野がゴールに押し込んだ。湘南はまたもセットプレーから失点を喫する。
 続く27分の鹿島、左サイドを突破してクロス、ミンテの跳ね返しを濃野が拾って鈴木優磨へパス。ボックス内に侵入して再びボールを引き取ると、ミンテの制止よりも早くゴールへ蹴り込んだ。鹿島が前半のうちに2点のリードを奪う。

 前半の終了間際、カウンターに単騎で臨もうとした鈴木優磨を淳之介がストップ。こぼれ球を畑が回収し、フリーで抜け出した章斗へパス。追い縋る植田を切り返しでかわすと、ニアサイドへ強烈なシュート。湘南が1点を返して前半が終了する。


 ハーフタイムで湘南に交代。イエローカードをもらっていた淳之介に代えて松村が投入。ポジションは変わらず左CBを務める。1点を追いかける湘南は攻勢をかけるがゴールには迫れない。
 63分に湘南が再び選手交代。章斗に代えて根本を投入する。

 65分の湘南、DFライン裏に走る雄斗に向けてフィード、跳ね返しが甘くなったところを根本と小野瀬で回収。雄斗が引き取って中央へパスを通すと、平岡が足元で収めて巧みにターン。鹿島守備陣を中央に集結させたところ、フリーで入ってきた畑へスルーパス。畑は右足で冷静にファーサイドのゴールネットに流し込み、湘南が同点に追いつく。

 67分も湘南、バックラインでボールを回して鹿島の隙をうかがっている場面。右サイドで大岩がボールを持つと、小野瀬が仲間、雄斗が安西の意識を引き付ける。それによって生じる安西の背後のスペースに向けて根本が走り込み、大岩も合わせてボールを送る。フィード自体は根本のマーカーである関川によって跳ね返されたが、小野瀬が見せた次のアクションへの準備は、鹿島の選手たちよりも早かった。前向きにこぼれ球を拾って福田へ通すと、今度は動きなおしていた根本へ。関川のアクションは一歩遅く、ゴール前は福田と根本に対して鹿島は植田1人。二人の冷静なストライカーのパス交換で植田を振り回すと、最後は福田が左足でゴールに蹴り込んだ。連続ゴールで湘南が2点差から逆転に成功する。


 リードを奪われた鹿島は即座に選手を交代。70分に仲間と名古を下げてチャヴリッチと藤井、76分に柴崎と師岡を下げてターレスと樋口を投入する。チャヴリッチが最前線で鈴木優磨がトップ下、樋口がCHでターレスが右SH、藤井が左SHに入った。

 鹿島は濃野のいる右サイドから執拗に攻め立てる。鈴木優磨も中央から右へ移動してチャンスメイクに参加するなど、松村の仕事は多いうえに高難度だった。
 湘南も一方的に攻められていたわけでもなく、81分は逆転ゴールと同じく安西の裏に走り込んだ根本がボールを呼び込んで関川を中央から引き釣りだし、斜めに走り込んだ雄斗がシュートに持ち込む決定機。根本はこのシーン以外にも前線で身体を張ってボールを収めたり引き出したり、ファールをもらって時間を稼いだりと途中出場ながら印象的でチームを助けるプレーを見せた。鹿島はフィードを容易に跳ね返せなくなり、なかなかラインを上げられない状態に陥っていた。


 86分に湘南も守備固めの交代、平岡と福田を下げて茨田と奥野を投入。田中と茨田が中盤で横に並ぶ5-4-1にシステムを変更した。
 アディショナルタイムには安西、藤井と際どいシュートを放つが枠の外。湘南が2点差をひっくり返す逆転劇で、2試合ぶりの勝利を手にした。



■試合の振り返り

・前節を踏まえた修正とその収支

 結果は最良だったものの、内容はどうだったかな…という試合。とはいえ、筆者はできることを最大限発揮して呼び込んだ結果、という見方でいこうかと思う。


 先週のセレッソ戦では相手の4-4-2プレッシングに対して対応できず、思ったようにボールを運べなかった湘南。この試合も相手は同じ並びだったが、かけられるプレスの様子は若干異なっていた。鹿島が見せたのは2トップの片方がアンカーを消しつつ、ボールの状況でSHが左右CBにプレスをかける形。追い込めていたらSBやCHが近くの湘南選手に寄せ、ボールを奪う狙いだったように思う。左SHが2トップと並んで圧をかけてきた前節とは違って、左右CBが多少時間を持てる場面が多かった。

鹿島のプレス。
アンカーを塞いでから左右に追い込んでいく。

 湘南も前節から変わりなしというわけではなく、主にIHの振る舞いに変化があった。とくに小野瀬は前節良く見せていたCB-SB間のスペースを狙う動きは控えめで、田中と同じラインに留まって中央での受け手となっていた。またFWの福田も降りて受ける動きが多く(もともと彼がFWに入ると3-5-1-1的な並びになるが)、田中がDFラインからボールを引き出せないところをその周囲がカバーするような形を準備してきた印象だ。以前までは池田が個人の力量で取っていたバランスを、コーチ陣を含めた全体で取るようにしたのかもしれない。

 その降りてきた小野瀬にボールが通って相手の守備陣を崩せたシーンはほとんどなかったが、相手SHの足を止めることには成功。それによって大岩と雄斗のマークが甘くなる状況が生まれ、守備ブロックの外ではあるがフリーに近い状態でボールを受けられていた。
 課題はそこから先の部分で、人が降りてきた代償として前線の人数が不足、また背後を狙う人員もいなかったところ。鹿島からすれば前半は目の前にいる選手を抑えれば危険なシーンはほぼ作られない時間だっただろう。受け手を用意してボールを繋ぐことは出来ていたが、目的であるゴールを奪う過程に対して効き目があったかは微妙なところである。前半に奪った章斗のゴールに関してもシュート以外は偶発的な側面が大きく、再現性は低いシーンだった。

湘南が見せた修正というかこの試合に向けた準備は、
アンカーの補填としてIHとFWが引き出す動き。
ただしあくまで補填であって、プラスになっているかは微妙。

・相手の弱みと効果的な交代

 後半に入るとIHが降りる動きはそこそこに、相手の背後を狙うボールが増加。後半の2ゴールは共に相手の左SBの背後を突いた動きから生まれているため、不足していた動きを補って鹿島守備陣を崩し切ったといえる。それまで見せていたブロックの外でフリーになるWBや、相手の手前に選手を配置するプレーたちが結果的に布石として機能し、食いつき気味になった安西の背後が空いたという解釈も(都合よく見れば)できるだろう。
 CB関川は外に釣りだされた後のプレーが軽く、狙いどころとして最適だった。根本が上手に身体をぶつけていてボールを呼び込んでいたのはあるとしても、ポジションの取り直しが遅くゴール前にスペースを空けてくれた点は湘南が助けられたところである。


 また前線の選手たちが中盤に降りたことにより、前向きかつスペースがある状態で相手陣内に攻め込むことができていた。ボールが前に進んでも突っ込みすぎてスペースが潰されノッキングを起こしてしまうシーンが最近はよく見られていたが、この試合においては根本投入以降、手詰まりになる場面はほとんどなかった印象だ。展開自体がオープン気味であったことを考慮したとしても、走力のある湘南の選手たちにとっては後から走り込んでいく方が向いているのかもしれない(その分ボールを収めるFWにかかる負担は大きいけども)。

根本の投入以降に見られた背後を取る動き。
前半見せた手前重視の振る舞いが、背後を空けさせることに
繋がったのかもしれない。



 この鹿島に勝利したからと言って、次節以降も同じ形で勝ち点を得られるという話には繋がらないという印象ではある。だが少なくともこの試合においては効果的な修正と方針転換した結果であるし、相手の弱みを突くために持てる策を使い切って掴んだ勝ち点3と言えるだろう。ベストな内容でなくても勝利できたならむしろそちらの方が望ましいし(良い内容であっても勝ち点が取れない経験を何度したことか!)、勝利によってチームが取り戻せるものもあるはずだ。

 順位表では(消化試合を勝利した想定の)磐田にようやく得失点差で半歩リードしたところ。この勝利が”終盤に強くなる湘南”のきっかけになることを願うばかりである。




試合結果
J1リーグ第32節
湘南ベルマーレ 3-2 鹿島アントラーズ

湘南:鈴木章(45'+3')、畑(65')、福田(67')
鹿島:濃野(22',27')

主審 清水 勇人



タイトル引用:初星学園(月村手毬)/Luna say maybe

先日3Dお披露目があった倉持めるとがカバーした楽曲より引用。間に挟まるものが伝達を阻害するMVの内容と、2点差をひっくり返す試合展開を重ねた。めっちゃいい曲です。

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