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色合いは相手次第。 2023.06.11 鹿島アントラーズvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ

■好都合だった鹿島の配置

 霧が立ち込める鹿嶋でキックオフ。湘南は前節のメンバーから2人変更。累積警告で出場停止の杉岡に代わって大野、所属大学に帰還した髙橋に代わって舘がスターターに名を連ねた。一方の鹿島は前節からメンバー変更なし。システムは湘南は5-3-2で鹿島が4-4-2、配置上では湘南のWBとアンカー、鹿島のSBが浮きがちになる噛み合わせとなっている。

 序盤はたがいに長いボールを蹴り合うが、ペースを握ったのは湘南。セカンドボールの回収と浮いている選手を使って鹿島陣内に攻め込んでいく。鹿島は2トップの背中で湘南のアンカー茨田を消す形で対応するが、中央を締める分横幅を取るWBとの距離が開いており、また誰がケアするのか不明確な状態だった。湘南はここを起点に前半から繰り返しチャンスを作り出す。
 右サイドからスタートしてIHへパス、降りてきたFWのポストプレーで逆サイドに展開、畑がフリーで受けてアタッキングサードに侵入。同じようなパターンで幾度もゴール前にボールを送るものの、強固な鹿島CB陣を焦らせるまでには至らず。ファーサイドで折り返したり、大外からもう一段内側のハーフレーンまで突破するなど、CBのポジションと目線を動かすプレーが必要だった。なお前半の早い時間で両チームに負傷による選手交代が発生。岡本と垣田の早い復帰を祈りたい。

 序盤15分を過ぎても依然として湘南ペース。上手く間を取った茨田からの縦パスやセットプレーのこぼれから大橋の突破など、ペナルティエリア近辺までは順調に進めるものの、相手の守備位置を動かすような攻撃は見せられず、ゴールを脅かすシュートは町野が蹴ったクロスバー直撃のFKくらい。”いい感触だが点は取れない”時間を過ごしていた。

 一方の鹿島もかなり苦しい様子。ビルドアップで湘南のプレスを剥がせず、2トップがロングフィードを収めるシーンは数えるほど。シュートを打つようなシーンを作れないまま前半の終盤を迎えたところ、好機を作ったのは耐え忍んでいたCBだった。湘南のビルドアップの場面で町野が自陣まで降りたところ、関川が後ろから猛烈なチャージ。ボール奪取からそのままドリブルでゴールに向かうと、たまらず茨田がファール。ゴール前で得たFKを樋口が直接叩き込み、1本目のシュートで鹿島が先制した。前半を通して湘南の2トップがポストに降りる際はCBからボランチに受け渡していたところ、この場面では湘南陣内まで関川がしっかりとマーク。とくにこのシーンの2分前には大橋が佐野の前で捌いて逆サイドに展開、クロスからシュートまで繋げており、”何度も同じ形でやられるわけにはいかない”といったCBとしての意地が見えたプレーだった。

■有効な時間の過ごし方

 後半頭から鹿島は2人を選手交代。名古に代えて藤井、安西に代えて常本を投入した。システム変更ではなく、選手のキャラクターを変えることで配置的不利をカバーするのが狙いの交代だろう。藤井はスピードと豊富な上下動、常本は対人守備能力を発揮して湘南のWBを封じようとする。またマンツーマン気味の守備に変更したことで持ち前の強度を復活させ、浮いた湘南の選手を作らせない指示を与えたと思われる。そしてこの采配は湘南に対して効果覿面であった。

 前半は空いていた場所が封鎖され、思ったようにボールを運べない湘南。困惑しているうちに深紅のユニフォームに襲われて逆襲を受けてしまう。決定機を作られたとまではいかないが、前半よりも明らかに自陣に押し込まれる時間が増える。1点リードしている鹿島にとって、最高でなくとも十分な時間の過ごし方だったと言える。

■わかりやすさは相手にも伝わる

 石原の立ち位置によって藤井が最終ラインに吸収されるシーンが続いたのち、鹿島は66分に昌子を投入して5-3-2に移行。結果的に5人が最終ラインに並ぶのであれば、専門職に任せた方が合理的である。この交代によって各選手の役割と担当をはっきりさせ、戦い方も明確にする狙いがあったのだろう。

昌子投入後の各ポジションの嚙み合わせ
互いのシステムが噛み合っているのが見て取れる。

 しかしながら鹿島にとってわかりやすくなった盤面は、湘南にとっても同様であった。ほとんどチャンスを作れなかった60分までと比較して、昌子投入後(5-3-2移行後)は何度か鹿島陣内に侵入できるように。鹿島の3ライン間が間延びしていたのもあり、スペースを見つけられるようになった。タリクとの交代でIHに入った阿部と小野瀬が巧みな立ち位置でボールを引き出し、流れを引き戻そうと試みる。66分の舘による抜け出し、67分の町野が見せたシュートといったシーンがより多く作れれば、試合結果は違ったものになったかもしれない。

 ボムグンの2連続PKストップという勢いに乗る大きなきっかけを自らふいにした湘南は、そのままゴールを割ることなく試合終了。J1リーグ10試合勝利なし、リーグ前半戦で対戦した相手すべて(延期分の浦和戦を除く)で失点する散々な結果となった。


■雑感

 良い内容に見えた前半も後半途中の好機も自ら手繰り寄せた印象はなく、相手の配置が湘南にとって都合がよかっただけと思われる。鹿島の采配ミスとその修正によって試合に色合いが出たが、試合開始からWBを抑えられていたらモノトーンで一方的な試合になっていたかもしれない。
 対策されると打つ手がないのは相変わらずで、この状況下ではやり方に合わせて担当者を最適化する(選手補強)か、担当者に合わせてやり方を最適化する(戦術変更)のどちらかを取るしかなくなってきた。あとは監督・首脳陣の決断が奏功することを祈るしかない。


試合結果
J1リーグ第17節
鹿島アントラーズ 1-0 湘南ベルマーレ

鹿島:樋口(43')
湘南:なし


主審 上田 益也

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