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変わらないもの。 2022.09.10 清水エスパルスvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

スタメンと嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
噛み合わせ

■膠着した前半

 前半は互いに相手の長所を消しあうような展開で、どちらのペースともならない時間が続く。湘南はサンタナに入ってくるボールに対し大野が激しくマーク、清水に思ったような前進をさせない。対する清水もピカチュウと原、白崎がスペースを消して湘南の左サイドからの前進を妨害する。4-4のブロックを敷いて構えていた前半の立ち上がりは目に見える穴がなく、なかなか決定機を作り出すことができない。12分にサンタナのミドルシュートが決まって清水が先制するが、一気に流れを引き寄せるところまではいかない。
 前半の中ごろから茨田が立ち位置を調整。DFラインが保持する際は相手FWの後ろに隠れ、WBに渡った際にピッチ中央部に位置しながら顔を出し、空いている逆サイドや長いボールを使って展開を見せる。湘南は決定機とは言えないまでも、徐々にシュートチャンスを作り出していくようになる。その状況を嫌がった清水は、2トップを圧縮して茨田の前からコースを規制。その後はDFラインからのロングボールを中心に前進を狙うがうまく決まらず、前半終了。
 清水にとっては茨田にフリーでボールを持たれるのはストレスだったかもしれないが、4-4ブロックを突破するだけの力が湘南にはなかった。前半の守備陣形を後半も続けていれば1-0、あるいはカウンターから追加点で2-0…となっていたのではないかと思う。

前半の清水の守備

■変わった清水

湘南が後半押し込んだ理由

 後半から清水は守備時の立ち位置を変更する。左SHの乾が内側に絞ってプレー、非保持の際には1列上がって茨田へのパスコースを切る。前半30分すぎから茨田が空いてしまい、湘南がペースを握ったための対応策だった。
 しかしその変更は裏目に出る。茨田へのパスコースは切ったものの、WBの石原までは自由にボールを運ばれるようになり、全体が押し込まれてしまう。対面の山原はタリクと石原の2人を1人で見る格好になり、奪取ではなく撤退守備を余儀なくされる。それでもサイド奥深くまで突破を許さなかったのはさすがの守備力であった。

清水の思惑

 清水の思惑としては湘南のアンカーに自由を与えず、その上でアンカー脇のスペースを乾が使ってチャンスメイクすることだったのだろう。左サイドの山原が対面の石原にマッチアップで勝利すれば、試合を支配できるはずだった。
 その思惑を上回ったのは石原の対人能力である。前半の盤面では山原と乾の2人を気にしながら守備せねばならず、前線からのプレッシングに参加できなかった。しかし清水が立ち位置を変更したため、石原は対面の山原にフルパワーでアプローチが可能に。後半1分に鈴木からのパスを受けた山原へ対してスプリント、ボールを奪ってショートカウンターに繋げた。

後半3分のシーン

 後半3分にも同様のシーン。前半なら空いていた山原へのパスコースが切られている状況に鈴木が判断ミス。タリクと町野に囲まれてボールを失い決定機となった。
 その後も湘南は右サイドを中心に押し込み続ける。失っても即時奪回のプレッシング、サンタナへのロングボールにはCBが複数人で対応して主導権を手放さない。清水は選手交代で流れを引き戻そうと手を打つが、そもそも守備のポジショニング・プレッシングの設計に穴が開いているため効果が薄い。湘南のシュートミス、権田のセービングで1-0の時間が続いた後半アディショナルタイム、”無慈悲なバズーカ(対清水専用機)” ウェリントンが炸裂。1-1のドローで試合終了。

■湘南は変わったのか?

 リアルタイムで観戦中は"後半から積極的にプレスに行くようになった”という印象を持っていた。しかし試合を見直してみると、”清水の変更が湘南の狙いにハマっただけでは?”という考えが強くなった。試合後の監督インタビューでは後半のプレッシングに関して聞かれると、「指示はしました。~~~いつもやっていることに変わりはない」と話しており、チームとしてプレスがハマる瞬間を常に狙っている(が、J1では中々その瞬間は現れない)と思われる。前半は相手の選択肢を奪いきれない盤面だったため一定強度のプレッシングにとどまったが、後半は左SHの移動によって時間と選択肢を奪うプレッシングが可能な盤面に。そうとなれば一気呵成に襲い掛かるのが湘南ベルマーレ。奪った後の精度は相変わらずだったものの、耐えるだけではない積極的な守備の姿を見せてくれた。
 この試合を見て、前からプレスかければ勝てる!と考えるのは誤りだ。プレスがハマる盤面を相手が作ってくれただけであり、その状況でもパワープレーで1点奪うのが関の山。リスクを負ってプレッシングに行く・行かない状況を選手たちで共有できている面はポジティブに捉えられるが、ゴール前で相変わらずのクオリティには頭を抱える。15本ものシュートを打った試合では勝ち点3を手にしたいのが本音ではあるものの、川崎・横浜・清水の3連戦で勝ち点4を得たのはプラスに考えたい。


試合結果
J1リーグ第29節
清水エスパルス 1-1 湘南ベルマーレ

得点者
12' チアゴ サンタナ
90+6' ウェリントン

主審
松尾 一

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