理想通りかって、疑心暗鬼だって。2024.06.22 湘南ベルマーレ vs FC東京 マッチレビュー
開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。
■試合の振り返り
昼間は厳しい日差しだったものの、夕方からは涼しさを感じる気候の中でキックオフ。湘南は引き分けた前節名古屋戦から2名のメンバー変更。髙橋、阿部が外れて淳之介が左CB、山田が左IHでスターターに入る。3バックの中央は大野が務め、負傷から復帰した畑がベンチ入りを果たす。対する東京はCBエンリケ・トレヴィザンが累積警告で出場停止で、代役は岡。前節磐田戦からは前線の並びに変更があり、ディエゴオリベイラと安斎に代わって荒木がCF、仲川が右WGに移動してトップ下には松木が入った。
この試合の湘南はミドルゾーンで構えるのではなく、積極的なプレッシングを見せる湘南。開始直後からCBまで圧力をかけ、2分には奪ったボールから山田のオープニングシュート。
6分、東京のセットプレーを跳ね返しを拾った福田がロングカウンター。横を走る池田を囮に使って一人でシュートまで持ち込んだ。序盤からテンポの早い試合展開を見せる。
9分は東京のフリーキック。ボックス手前右側から荒木がゴール右隅を狙ったシュートはGKソンボムグンがセーブ。
ボール保持においては、湘南は下からの組み立てにはこだわらず、裏に走る2トップをシンプルに使ってくる場面が目立つ。湘南がボールを握って東京陣内に押し込む時間が長い前半だが、決定機にまでは至らない。
東京が単発的な攻撃に終始しているため陣形が間伸びしてくると、DFラインから中盤へ通して安全にプレスラインを突破。崩しは左WB小野瀬のドリブルに任せるシーンが増えてきたが、最後のところまではやらせない。
43分は東京自慢のカウンター。荒木と仲川でロングカウンターを完結してボムグンとの1vs1。しかしシュートはボール1つ分逸れる。
直後に湘南のチャンス。セカンドボールを拾って繋ぎ、池田から右サイドのポケットに走り込んだ雄斗へスルーパス。ややマイナス気味のグラウンダーのクロスに落ち着いて合わせたのはルキアン。そのシュートは福田の手にコースが代わっており、ハンドの判定でゴールは認められず。前半は0-0で折り返す。
両チームともにメンバー交代なしで後半へ。試合の流れは大きく変わらずで、49分には湘南がまたも先制ゴールかと思われたが、シュートを打った山田の位置がオフサイドで取り消し。
51分、小野瀬のサイドチェンジは一度カットされるが、再び湘南が奪ってフリーの雄斗へ。強烈なシュートを放つが野澤のセーブ。
54分、DFラインから繋いで福田へのフィード、セカンドを拾った雄斗が東京DFを引きつけて山田へパス。DFをかわして右足でボックス外から放ったシュートは野澤がセーブ。
58分、湘南のコーナーキック。ショートで繋いで田中のクロスにファーサイドで合わせたのは大野。しかし野澤のセーブと松木のゴールカバーによって得点とはならず。再度ルキアンが拾って淳之介がシュートを打つが、野澤がまたもセーブ。決定機を続けて迎えるものの湘南はゴールが奪えない。
63分は東京のカウンター。仲川がDFラインの背後を突くランニングからボックス内に侵入してクロスを送るが、走り込んだ荒木にはぎりぎり合わず。
67分は湘南の決定機。コーナーキックのセカンドを奪い取り、繋いだ先の田中がファーサイドへクロス。ルキアンがDFを引きつけた結果フリーになった大野が合わせるが、シュートは枠の外。
68分、東京の選手交代。荒木と仲川が下がり、ディエゴと安齋が入る。
72分、湘南も続いて選手交代。山田に代わって畑、池田に代わって章斗。小野瀬がWBから左IHへ移動。畑は負傷からの復帰戦。
73分、交代直後の章斗がチャンスを迎える。ルキアンの競り合いからこぼれ球を拾った章斗が雄斗へ繋ぎ、再びパスを受けた章斗がボレーシュート。しかし野澤が立ちはだかる。
77分、東京の選手交代。高と俵積田が下がり、原川と徳元が入る。交代直後の78分、右サイドのスローインから細かく繋ぎ、外側で待っていた徳元がミドルシュート。ファーストプレーで放ったシュートはゴール右隅に突き刺さり、東京が先制点を挙げる。
試合はそのまま東京が逃げ切り、0-1でFC東京が勝利。湘南はボールを長く握って数多くのシュートを放ったのにもかかわらず、一発に泣く結果となった。
■得点以外は上出来…か?
スタッツ上では相手を圧倒する数字を残しており、ゴール期待値では湘南が2.27、東京が0.59と異なる試合結果になっていてもおかしくない試合内容だった。(下記リンク先参照)
ボールを保持して相手陣内に押し込む時間が長かったのはFC東京のプレッシングが大きく影響していると思われる。そこまで圧力が強くなかったのもあり、CBからWBに繋げば余裕をもって前進することができていた。
しかしボールへの寄せが緩い分、守備陣形も整ったままの状態。1stプレスラインを容易に越えたとしても中盤センター2枚と2CBはしっかりと構えた状態で守備対応できており、その結果としてGK野澤はシュートコースを限定しやすかったのではないだろうか。
FC東京が構える4-4-2、その2トップ脇くらいのタッチライン際に立つ湘南のWB。近くにいるWGは中を締めることを優先、SBには距離が遠すぎるのでアプローチできず、自由にボールを持てる状態ができていた。加えて小野瀬、雄斗と少ないタッチでもボールを展開できる選手がその位置にいるため、相手のプレスに後手を踏ませる状況を多く作り出せた。
ただし相手のDFを動かせているわけではないので、1stプレスラインを越えたとしても4-2ブロックは構えられたまま。ボールを前に進められてはいるが、相手DFが動いていない⇒DFはゴール前に引くため使えるスペースが狭くなる⇒FWは狭いスペースで正確なプレーをしなければならない、というのが試合の大半を占めていたように思う。
下図のようにボールを相手ゴールに近づけてはいるものの、それに合わせて相手の守備陣形もゴールへ下がっているシーンが多かった。そのため使えるスペースはどんどん狭くなっていき、シュートシーンはワンタッチで合わせるか、技術的に難しい要求を乗り越えた場合に限定されてしまっていた。
後半になると湘南のWBに対して東京のSBが出て対応するように。それにあわせてDFラインが横にスライド、WBが監視されて容易に前進出来なくなった。筆者としては、この東京の対応は湘南にとって美味しく調理できるものだったのではと考える。というのはIHがSB裏に走り込む形(平岡がよくやっていたアレ)を見せられれば、追いかけてくるCBか中盤1枚を中央エリアから引っ張り出せるからだ。
ただ残念なことにそういった飛び出しが得意な平岡は離脱中で、山田は裏へのランニングよりも小野瀬と繋がる立ち位置を意識していたように思われる。池田に代わって入った章斗もスペースへのランニングというよりは、中央に留まることが多かった。WBがあえて低い位置に立ってSBを引き付けるシーンも記憶になく、結果として東京にうまく守られてしまった、という印象だ。
この内容で勝利できないといつ勝てるんだという気持ちにもなるが、完璧な試合内容ではない。ボールを保持して相手を見ながら戦う、という点においてはまだまだできることがあったはずである(選手層といったリソースの面はいったん置いておくとして)。
理想的な成長曲線を描けているわけでもないし、結果が出なければ疑う気持ちが生まれることもある。それでも、信じて懸命に戦う選手たちの背中を押してあげたいと思う次第だ。
試合結果
J1リーグ第19節
湘南ベルマーレ 0-1 FC東京
湘南:なし
東京:徳元(79')
主審 木村 博之
タイトル引用:VOLTACTION/インレイド
FC東京のコラボライバー、セラフ・ダズルガーデンが所属するVOLTACTIONの楽曲より引用。相手陣内に押し込む時間が長く理想的な展開だったのにもかかわらず敗北し、何かを疑う気持ちが出てきてしまうかもしれない。それでも続く試合に臨むしかないよ、という思いから。
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