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「デザイナー」になりたかった。



 「人生何度目かの就活をしている。」と書くのさえも数回目になってしまった。

大学3年の時、早期選考みたいな枠で内定をもらいつつも、蹴っても他見つかるだろーみたいな気持ちでいたら大手を受けている間にコロナが流行り、持ち駒がなくなった。5月ごろから1からエントリーし直したのだけど、もはや軸なんてないし、どの企業もピンとこない。
働きたい気持ちはあるけど、あれもこれもやりたくはない。そんな状態の私に親がこう聞いてきた。

「あんたは何がしたいの?」

うーん。もはやわからない。けれど、今からでもなんでもできるなら、
「デザイナー」になりたい思った。

何かを創ることへの憧れは小さい頃からあった。そういえば、小学校の時図工が一番好きだった。自分の面白いアイディアを試してみんなに見てもらいたかった。イラストレーターになりたいと思った瞬間もあったけど、手先が器用でないことは幼いながらに知っていた。そのすぐ後に舞台監督になりたいと思った。感性が及ぶところの全部の決断を委ねられている人になりたかった。

高校の時ぼんやりと芸大に行きたいと思ったこともあった。でも絵を描いたことなんて一度もなかった。またアーティストとして食っていく自信なんて微塵もなかった。できるだけ可能性が広いものを選びたくて総合大学にした。(今思えば、芸大に行ったからといってみんながアーティストになる訳じゃない)

大学でダンスサークルに入った。1年生の頃、3年生だけができる自分の振り付けを創ることに憧れていた。なのに、ダンスが下手だと気づいてしまったら、創ること評価されることが怖くなった。振り付けをすることは諦めてしまった。

いつしか創ることは「やりたいけれど、最も怖いこと」になってしまった。

それでも創ることの近くにはいたい。そんな気持ちがあって大学時の就活は広告業界を受けた。デザイナーでなくともデザインすることの近くに入れると思った。


就活に失敗した私はデンマークで「自分を見つめ直せる」らしい学校に留学した。その学校にはアート、リデザイン、セラミックなどの授業があった。久々に「創ること」をしてみた。セラミック(陶芸)の初めての授業の日、私はつくりながら泣きそうになっていた。
頭の中でイメージしているように手が作ってくれない、人よりも下手なことが死ぬほど悔しくて、悔しかった。こんなに悔しいと思うと思わなかった。
自分の卑しい気持ちを見ているみたいで嫌だと思った。センスがない自分に向き合う自信がないなと思った。


でもどんな時も、就職先としてみてしまうところはデザインの会社だった。
じゃあグラフィックデザインとか学べば良いんじゃない?
確かに。でもなんだか、「見た目」のデザインをしたい訳ではないんだよなともずっと思っていた。じゃあ私がしたいのはなんなのだろうか。デザイナーになりたい訳じゃないのだろうか?それとも言い訳なのだろうか。


ベルリンでカオスパイロットという教育機関に入った。リーダーシップを学ぶ学校なのだけど、3つのコアの1つに「デザイン」の文字があった。
しかし実際入ってみるとここでの「デザイン」は広義であった。絵が描ける人がいるわけでも、アプリやウェブを作る人がいるわけでもなかった。スキルとして目に見えるようなものが身につけられたわけではなかった。
でも私のやりたかった「デザイン」に何よりも近いような気もした。絵は描かないけど、体験もデザインすることができる、過程だってデザインすることができる、場をデザインできる、そんな意味での「デザイン」が魔法みたいに思えた。

今2年間の海外での学びを終わりにしようとしている。既卒という枠になってしまった今の就活はあまり楽なものでもない。そもそも条件にすら当てはまらないことも多い。「こんなシステムクソ喰らえ。」なんて思いながらも、愛想を振りまいて、3年前の就活の写真を使いまわして「普通」になりすます。


しかし、ふと今自分が応募している職種が「デザイナー」であることに気がついた。ポートフォリオとして自分がやってきたことをまとめるデザインをしていることに気がついた。
あれ?今デザインしている?しかも、もしかして「デザイナー」になれるのか?

取らぬ狸の皮算用かもしれない。まだ受かってはいない。この道のりは正しかったと言いたいだけかもしれない。それでも前からの夢に少しだけでも近づいているのかもと思えたことに少し嬉しくなってしまった。

ずっと心に留めている言葉がある。思えば大学生の頃からの言葉である。

なるようにはなるが、なりたいように私はなりたい。

就活は、「やりたいこと」を聞いてくるようで、本心の「やりたいこと」をいってはいけないような気味悪さがある。でも、私は就活のルール知っててその通りにできますみたいないかにもな顔の内側に、自分のやりたいを貫く図太さを少しだけ持てていると思えた。

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