「デザインのデ」 #3 シグニファイア
3つの扉
解説
多くの人が、最初の時点では、どの扉のあけ方も分からなかったと思います。しかし、動画の後半では、それぞれの扉の開け方が全く違うにも関わらず、自然と察することが出来たと思います。このような認識の違いは、いったいどこから来るのでしょうか?
前回、モノと私たちの間には、アフォーダンスという関係性があるということを解説しました。今回のような場合、扉には、開けるというアフォーダンスが存在することになります。もう少し踏み込んで考えてみると、それぞれの扉には、引く、押す、スライドする、というアフォーダンスが存在したということになります。
動画の前半でも、これらのアフォーダンスは変わらず存在していました。しかし、それは私たちの目に見える形ではありませんでした。後半では、扉に取っ手が追加されることで、これらのアフォーダンスが存在することが分かるようになったのです。この、アフォーダンスの知覚を助けるための手がかりをシグニファイアと呼びます。
私たちが作り出した人工物に、いくらアフォーダンスがあると主張しても、それが知覚可能な状態になっていなければ、全く使い方が分からないものになってしまいます。現代のデザインにおいて、適切なシグニファイアが自然と生まれることは必ずしも多くはありません。そのため、デザイナーがしっかりと意図を持ってシグニファイアを埋め込んでいく必要があるのです。
さてここで、扉のシグニファイアについて詳しく見てみましょう。
扉に付けられた取っ手は、まず、握る動作をアフォードし、かつ、手前に突き出た形状から、手前側に引っ張る、という動作をアフォードするので、引く、のシグニファイアとして機能します。
扉に付けられた平面の板は、それを使って何か操作できる形状ではないが、手を置くには丁度いい大きさのため、その部分を押す、という動作をアフォードし、押す、のシグニファイアとして機能します。
扉に付けられた凹みは、その大きさから、手ではなく指を引っ掛ける動作をアフォードし、かつ、その形状的な制約(上や手前に動かそうとすると指が外れてしまいます)から、横にスライドさせるという動作をアフォードするので、スライドする、のシグニファイアとして機能します。
こうして見てみると、日常的に目にしているものでも、様々な視覚的な工夫や、物理的な制約を利用して、シグニファイアが作られているのが分かります。ぜひ、皆さんの身の回りにあるシグニファイアも探してみてください。
まとめ
・アフォーダンスを知覚するための手がかりがシグニファイア
・意図を持ってシグニファイアを埋め込んでいく必要がある
・視覚的な工夫や物理的な制約を利用してシグニファイアを作る
#2 アフォーダンス | #4 対応づけ
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