中国の本要約サービス「樊登读书」。ユーザーの集め方の秀逸さ
中国で1,200万人の有料会員、2020年の1年間の収益規模は10億元を達成した本要約サービスの「樊登读书」(Fán dēng dúshū)。本要約サービスは日本でもフライヤーが伸びてたり、YouTubeで本要約の動画がよく見られるようになってきてますよね。そして中国ではずっと前から流行っていて今や生活のインフラにまでなりつつあります。
その誕生の経緯についてを前回紹介しました。
今回はその続き。現在の利用状況や発展につながった手法で面白かった箇所を紹介します。日本でのサービス開発のヒントもあるかもしれません。
■利用ユーザーのデータが意外だった
まずはどんな人が利用しているかについて。普段オープンにされてないデータが出ていて、これが中国独自の観点があって面白いです。左から性別、年齢、消費力の統計↓
これを見ると、利用者では女性が約6割。日本の本要約のサービスは男性の方がかなり多いって噂を以前聞いたことがあって(教えて詳しい人、コメントください)、女性のユーザー数の方が男性よりも多くなっていることが興味深い。レポートによると、子育てや心の成長のための本の需要が高いという分析もありました。
そして年齢層は24歳-40歳が大部分を占め、30歳以上であれば通常なら企業の中間管理職から上級管理職。24歳~30歳未満の43.94%は大学や職場に入って1年~6年です。知識を短時間で得たいという、知識経済のターゲット層に刺さっているのだと考えられます。
知識経済の大手「得到」のビジネスについては以前解説しました!
他には地域別の利用者数などのデータもあり、主要な都市だけでなく全国で満遍なく利用されているとのことでした。地域、年代を問わずかなり普及していることも明らかになっています。
■O2Oを組み合わせたユーザー獲得システム
そんなユーザーをどうやって集めてきたかの詳細も解説されていたレポートを見つけました。「樊登读书」はマーケティングの基本をベースに
①Fishing(新規ユーザー獲得)→
②Captive(ユーザー育成)→
③Return(ユーザー対応)
の3つのプロセスでユーザー成長の仕組みを戦略的に組み立てています。今回は中でも「新規ユーザーの獲得」の工夫を3つほど紹介します。
①トライアルと拡散
新規ユーザーに7日間の無料期間トライアルを設定しています(けっこう短い)。そのほかにも、読み手のパーソナリティをしっかり見せることや、外部への露出ルートを絞って効果的に興味を持つ人を集める戦略を採用しています。
具体的には、オフラインの講義、文化プログラム、ライブチャンネル。そして有名な機関や有名人に推薦してもらうことにも注力している。
②招待システムと離脱を防ぐ仕組み
友達を招待できるような仕組みも作っています。まずは、招待した方、された方の双方にポイントが付与されるというもの、これは特別なものではないですよね。ただ、工夫されているのは支払いの招待欄に、ユーザーの目には流通しない「互恵主義」の仕組みを採用していて、「友人を紹介することでお金を稼ぐ」という嫌悪感を巧みに回避しているのが上手いと思いました。
また、チームリーディングといったモデルも採用しています。上にリンクを貼った「得到」を紹介したnoteでも触れましたが、本を読むことや勉強を1人で続けることは挫折して離脱に繋がりやすいです。これを防ぐためにチームリーディングの仕組みを取り入れている。
具体的には(友達を誘って)3人のチームを作れます。推薦されたリストの中の3冊の本を聞くと1日分のVIP報酬が与えられる、チームメンバー全員が3冊の本を聞くと、チームメンバーはさらに2日分のVIP報酬を得ることができ、もし共有すればさらに3日分のVIP報酬がもらえる、といった仕組み。
こうして日々の習慣を連帯することでエンゲージメントを上げていくのです。
③ショート動画の活用
日本のTikTokを最近全く見てないんですが、コンテンツの内容は女の子がダンスするものから変わってきましたか?ずっと前から中国ではBusinessへの活用が進んでいます。そして本要約もユーザーを集めるためにショート動画をフル活用している。
↑開設しているアカウントとフォロワー数。2019年からアカウントをいくつか作って始めたらしく、今では総ファン数は1億人を超えているとのこと。
これらのアカウントのコンテンツについては各自で中国のTikTokである「抖音」で見てほしいですが、ちょっとだけ内容を紹介すると、樊登さんのスピーチやショー、ライブなどに参加した際の動画が掲載されていたりします。このショート動画のプラットフォームに広告を組み合わせたり、7日間無料に誘導したりと様々な方法で自分たちのプラットフォームに誘導しているのです。
ということで、またも長くなってきましたので今回はこのあたりで。他にも日本のサービスでは見ないような集客の仕組みがたくさんあるのですが、解説したらきっと1万文字を超えてしまいますので、需要があったら。気になる人はTwitterにDMください。
次回はいよいよ賛否の議論を巻き起こしている過激なビジネスモデルの解説を行います。ぜひフォローしてお待ち下さい!
(参考資料)
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