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中国VR最大手のPICOを買収したバイトダンスがメタバースを制する未来あるか

中国と新しいテクノロジーに興味がある皆さんはPICOとバイトダンスの件はご存知ですか?

バイトダンスはtiktokの会社で説明不要かと思います、そしてPICOは2015年に設立されVR事業を行っている会社。VRヘッドセットを販売していて、中国ではTop、全世界でも15%ほどのシェアを獲得しています。2021年の9月にバイトダンスがPICOを90億元で買収しました。

pico公式より

2022年の9月に「Pico4」を発売。とある研究室で使わせてもらってたのですが、性能がすごかったです。ご存知metaのVRヘッドセットのOCULUS Quest 2も凄いのですが重い(本体重量が約503g)。一方でPICO 4はそれより全然軽くて(本体重量を約295g)、長時間使っても疲れない。日本でも売ってるようなので、これ以上の感想はAmazonレビューしてる達人たちのを参照ください↓

そして本題に入ります。昨年9月のPICO4発表の際に、発売時期は未定とされながらも「PICO 4 Pro」について発表されたのですが、先日今年の4月-5月に販売されるとの情報が報道されました。「PICO 4 Pro」は赤外線カメラを利用することで顔の筋肉の動きから表情を識別することができ、メタバースでユーザーの表情を正確に表せるということで、ゲームチェンジャーになれるか期待されていました。

ザッカーバーグさまのツイートより。表情の重要性がよくわかる(それ以外も。。

ただ、この新製品の発売が遅れていたのはPICOの人員整理が行われていたことも影響していたと言われています。これに関してPICOは「組織の調整を進めており、実際の調整比率は外部の噂より低い」と回答。

■PICOに200億元をかけたバイトダンスに勝機は?

2022年の前半から中盤にかけては世界も日本もメタバースブームだったと思いますが、2022年後半からブームは一気に冷え込みました(今のネット界はメタバースを完全に忘れ、ChatGPTの話題で持ちきりかと思います)。

このメタバースブームですが、中国の識者による振り返りだとブームの火付け役は2021年のRobloxの上場だったとの意見が多いです。メタバースブームが起こり、Robloxの40億ドルだった評価額は1年後には450億米ドルへと急騰。 その後FacebookがMetaに名前を変え、中国でもバイトダンス、Tencent、アリババなどジャイアントが参入に躍起になったという流れ。

日本でも「MAU1億人」「若年層ユーザーが多い」など強い人がたくさん取り上げてました

中でもVR企業のPICOを90億元で買収したバイトダンスは、必然的に世界一のVRヘッドセットメーカーMeta(Oculus)と世界規模で競争することになりました。FacebookがOculus(約20億ドル)を買収したのは2014年。そして2022年の前半にはOculusは世界シェア90%以上。

バイトダンスは、2015年にPICOを買収後、国内VR市場でシェア約60%で国内TOPになり、世界での販売も強化しています。レポートによると2022年第3四半期にmetaのシェアは75%程度に低下する一方でPICOはシェアを3倍以上の15%程度に伸ばしました。ただ、PICOは頑張っているとはいえ、まだだいぶ差がありますね。

報道によるとバイトダンスは買収に費やした90億元と合わせPICOに約200億元を費やしているとのこと。さらに、現状はPICOのデバイスが1台売れるごとに約1000~3000元(2万円~6万円)の損失が発生するほど顧客獲得コストがかかっていると目されています。

■市場争奪戦と海外進出の現状

PICOとOculusを比較するとソフトの数が圧倒的に違うことが課題と言われてきましたが、意外と差は埋まってきていました。PICOが300アプリなのに対してOculusQuestは400ちょっと。ジャンルを見るとほとんどがゲームです。

picoのアプリストア

PICOのコンテンツ戦略は当初から、できるだけ早くOculusに追いつこうとゲームに多くのリソースを投入するもので、PICO4には30本強の無料ゲームが内蔵されている。ただ、クオリティなど今のところOculusを超えることは難しく、PICOはこれまでのコンテンツ戦略を調整し始めているとのこと。

当初の「ゲーム」戦略をベースにしつつも、「動画」戦略に力を入れ始めていて、版権を導入してコンテンツのリッチ化を行っていたり、ライブ配信に力を注いでいる。PICOの元社員への取材によると、PICOのライブストリーミングの収益は今やゲームの収益を上回っているとのこと。ここにはtiktok企業の強みが生かされているのでしょうね。

ただ、tiktokのように爆発的な普及にはまだほど遠い状況。去年後半からのメタバースバブルの崩壊でOculusの販売台数も低下している。PICOの社員によると、PICOも販売目標を下げていて、2023年の販売目標は35万台だそうです(なお、PICOの公式はこの主張を否定している)。

■今後PICOは世界を穫れるのか

買収してお金を出しているバイトダンスのPICOへのやる気も気になるところ。退社したPICO社員のリークによると、バイトダンス創業者の張一鳴は最近ではほとんどミーティングに参加していないとか

もちろんバイトダンスはtiktokやニュースアプリの头条があり、他にもライブストリーミング、Eコマース、ローカルライフなどの事業がある。それと比べると2000人規模と数十億の売上のPICOへの関与は限定的になるのはしょうがない。ただPICOのリストラと事業の最適化から、バイトダンスからの投資額が少なくなっているのは明らかなようで、内部のやりとりなど様々な噂が出ています。

ただ、それでも中国でNo1のVRヘッドセットメーカーだし、VRはいずれ世界中の日常で使われるようになると予想すると、悲観する必要もないのか。さらに、親会社のバイトダンスには中国の優秀な人材が集まっています。

PICO Neo3

少し前のことですが、PICOに関してバイトダンスの賢い宣伝戦略が話題になりました。

2022年1月、PICO 4の発売のだいぶ前にバイトダンスが社内向けのECストアで、PICO  Neo3の半額販売を開始しました。一人2台までで原則転売禁止でしたが、11万人の従業員もいて何回も入荷されても半額なこともあってすぐに売り切れになって、社内での取り合いもそのままSNSで話題になりました。また、使った感想をSNSでシェアすればPICO ストアで使えるポイントを獲得できるのでたくさんいる若手社員によるSNSでの宣伝効果が抜群でした。

バイトダンスの成長は恐ろしいです。アメリカなどで禁止の話も度々あるtiktokですが、昨年も海外で伸び続け今やDAU7億、平均利用時間2時間と驚異の数字。PICOと一緒にメタバースでも世界一になれるか期待してます。

(参考資料)


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