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中国IT企業でのリストラが頻発で大学生の進路にも変化が

先日書いた、中国で働くことの大変な側面とリストラ事情のnoteはたくさんの人に見られました。

上にリンクを貼ったnoteの中でふれた、動画Platformの「爱奇艺(aiqiyi)」やおなじみテンセントでの大量リストラの件はその後も中国国内のニュースやSNSで連日話題になっています。直近では12月22日に中国女性Eコマースで有名な企業「蘑菇街(Mógū jiē)」も大規模なリストラを行ったことが話題になりました。部門によっては解雇率が80%ほどだったとのことです。

そして注目されているのはリストラされた人たちの中には修士や博士の人材も多く含まれていたということです。

中国の企業での競争の激しさは採用にも影響を与えていて、それを反映してか学部卒業した後に大学院に進む学生が急増しています。教育Platformによる調査「2022年全国大学院進学調査報告」によると2022年の大学院進学希望者数は前年比21%増の457万人と過去最高を記録したことが明らかになりました。

統計によると、過去5年間は修士号取得希望者は増加傾向で、今回の21%増は5年間で過去最高の伸び率となります。公開された分析では「ジャーナリズム・コミュニケーション」のMaster's degreeが特に人気なようで、有名校の入試倍率は35倍にもなっている。例えば、上海国際大学は前年比47%増、上海交通大学ではすでに35対1の応募倍率だそうです。

中国の大学院(博士課程を含む)の在籍者数は、2020年に110万人に達し、2021年には120万人です。ちなみに2022年の大学卒業者数は1076万人と過去最高を記録していて、これは20年前の約10倍となります。

大学院に進学する学生のインタビューの中には

大学院で2年間過ごすことで、コロナ禍による採用不況を回避できると期待しながら、自分の能力と学歴を高めることから考えて、時間を「価値」と交換できる。現在の多くの学生にとって「戦略的配置」であるとのことである。 一方、時間を「価値空間」と交換することで、より高いスタートラインに立つことができる。

との内容もありました。大学にもよりますが、大学内での内巻(競争)も激しく学部時代は将来を考える時間もなく忙殺され就職してしまう人が多いとも感じているので、このような考えを持つ学生がいることには共感できます。

また、企業の待遇も学歴によって露骨に変わってくる点も進学者が増えている理由の一つとなります。先日日本でも、とある新卒就活サイトが学歴フィルターを使っていることで炎上してるのを見ましたが、一部の中国企業では”給料の学歴フィルター”を採用しています。有名校が3つのグレードに分けられ、学校のグレードによって基本給が明らかに違うというもの。日本人の感覚からすると炎上しそうですね。

さらに、仕事だけでなくお見合い市場でも学歴重視の高まりが明らかになっています。お見合い事業を展開する企業の担当者によると、ここ数年ビッグ都市であればあるほど学歴を重要視するニーズが高騰していると言います。高学歴が恋愛市場で有利なのは世界共通で中国でもそうでしたが、さらに加速しています。そしてその背景には高学歴と良い職位との繋がりによる影響があります。

ただ、当然不満の声も増えています。

ここ数年の政府政策からは就職における学歴差別を減らそうという動きが明らかに伝わってきます。かなり前から求人情報に「985」「211」「ダブル一流」(いい大学をよりいい大学に発展させるための国からのプロジェクトの名称)などの項目の掲載が禁止されてます。

また、IT大手各社が今まで「とにかくお金がある」経営をしてきたことも変わってきています。高い給料で一流大学・大学院出身の新卒を雇用してきて、新卒の給料が同じ職位で3年間働いた人を上回ることも珍しくないです(中国の場合IT大手では同じところで3年間働ける人は立派なベテランとの考えは妥当だと思います)。しばらくは新卒の競争も激しくなりそうです。

一方で経済が不安定で民間企業の競争が激しいことが影響して、公務員や教師など安定的な職業に関する競争も益々激しくなっています。これも別の機会で紹介したいと思います。

(参考資料)


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