空港で

空港で一人でいると人に話しかけられることが多い。
気軽に話しかけてくるのは大抵アメリカ人だ。デューティフリーショップで時間つぶしにカバンを見てると「あなたそれ素敵よ。色がいいわ。買うべきよ。」と声をかけられる。
南ドイツの保守的な地域に住んでいると見知らぬ人にフレンドリーにされることなど久しぶりなので内心驚く自分がいる。そして「ああアメリカではそうだったわ」と懐かしくなり、驚いている自分は表には出さず顔では何気なく「ありがとう。うん私も気に入ってるの。もうちょっと考えてみる」と答える。

「ちょっとトイレに行ってくるから荷物見ててくださる?」
とタワーのように積み上げたブランド物のスーツケースの番を頼まれたこともある。彼女はマンハッタンに住んでいるそうで、ドイツへは出張できていた。「荷物を預けてターンテーブルで出てくるのを待つのが嫌だから全部持ち込んでいるの」と言っていた。
私が荷物と待っていると職員が回ってきて
「これ全部お持ち込みですか?」と聞かれた。「自分の荷物ではなく人に頼まれてみているだけです。」と答える。
トイレから彼女が帰ってきたので「職員がきましたよ、話をした方がいいですよ」と伝えたが、焦りもせず堂々と座っている。しばらくして職員が戻ってきたが、彼女がチケットを見せたら「わかりました。」と去っていった。
それから他愛もない話をした。長男が高校を卒業するという話をすると「私の孫も今年から大学生よ」と写真を見せてくれた。名前も知らない彼女がマンハッタンのどんなところに住んでいるのか想像もつかないがドラマ『ゴシップガール』の世界がふと頭に過った。

軍関係者で日本に住んでいたという人にもよく会う。日本で数年住んでいる間に学んだという日本語を使って家族の話をしたりジョークもバンバン言う。私は何年英語やドイツ語を学んでも話すときに自信がなく最小限の会話で済まそうとしてしまうのにといつも感心する。

しばらく話をした後みんな聞く。「ドイツの暮らしってどう?」
さてどう答えようか。
ドイツ人はよく「アメリカ人は嫌い」と言う。フレンドリーなのは表面だけだと。でもその場限りであったとしてもフレンドリーに接してもらえると嬉しい。
「うーん、一言では言えないけどあなたみたいに気軽に話しかけてくる人はいないわ。」と言うと「わかる!」とのってくるアメリカ人。ここで調子にのってドイツ人を批判したり冗談にしたりするような話をしてはいけない。周りのドイツ人はだいたい英語がわかっている。私たちの話も全部聞こえているのだ。

これをオンにするかオフのままにしておくかだいぶ悩みました。おこがましいのではないかと。でも決めました。 書くことが何より好きでそれを仕事にしたいからその第一歩として。よろしくお願いします。