♯27 耳管開放症という障害。
知らない話
画面に映る私の検査結果、総合病院からのカルテを見ながら先生が話し始める。
「まず、鼻から空気通してごっくんって唾を飲み込む治療やってた?
やってたね、うん、これは僕すごい痛いと思う、痛いよね、痛かったね、うちではやらない、大丈夫。うん。
で、自分の声が大きく聞こえてしまう、足音とか、心臓の音とか。
これは実際にあるよ、症状としてあります。
あなたがおかしいとかそういうのじゃない、大丈夫。』
ニコニコとしてるかと思いきや、真面目な顔をしたり困った笑みを浮かべたり表情豊かな先生。
さっきの綺麗なショートカットのお姉さんが私の肩に手を乗せてさすりながら、そんな事があったの?あぁ、痛いね。頑張ったね。頭を撫でてくれる。
柔らかい、そして暖かい雰囲気だった
『これは耳管の問題かな、ひとまず鼻の治療を進めましょう。
アレルギーの症状がかなり強いね』
今まで言われてこなかった事をすらすらと説明してくれた。
模型を使って、画面を見せて、音が聞こえる仕組み、中耳炎とは何か、どうして空気を入れる治療をしていたか、今はどういう状態か。
出す薬の作用、副作用、やってはいけないこと、気をつけたほうが良いこと。
そして最後に先生は言った。
『今チューブが入ってるから結構楽だと思うんだけど、ずれてしまったりもするし、お鼻の状態も見たいからお薬が無くなったらまた来て下さい。
症状が無くなったから治ったというわけではないので、お大事にどうぞ』
初めて聞く言葉だった。
来なくていい、思い過ごし、治らない、何言ってるかわからない、キチガイ、無駄だと思う、わかんない、意味がない、また痛いの?なんでだろうね。
この言葉以外私は聞いたことがなかったから。
否定されず、話も聞いてくれて、痛みに共感してくれた。
これが当時の私、今の私をどれだけ救ってくれたか言葉では言い表せられない。
待合室に戻る、お会計は早かった。
薬局もすぐ前にある、便利な立地。
『こんにちは、初めてですかね?』
これはもう本当にこの時から今でも変わらずで一周回って笑けてしまうのだが、薬剤師さんたちの対応、表情の豊かさも凄かった。
ニコニコしているかと思いきや、こちらの症状を聞いている時には気難しそうな顔をして話を聞く。
ここで出会う人全員がとにかく病院らしからぬ温かみを感じるのだ。
日常生活でさえこんなに心が温まる連続はそうそう無い。
人が人を呼ぶ。
私がこの病院に出会って一番最初に学んだことは紛れもなくこのことだろう。
ここに不安なく通えると確信した。
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