♯19 耳管開放症という障害。

20年の時を超えて

記憶が正しければ中学生だったはず。
少なからず高校生ではない。

確か中学二年か三年生に、総合病院の皮膚科の先生と約束した宿題を長年通い続けた耳鼻科の先生に告げた。

『何も問題なんかないけどねぇ』

先生は笑ってた。
この人はいつも綺麗にニコニコ笑う。
綺麗な髪を束ねて、綺麗に化粧をして、いつもニコニコしている。

結論から言うとこの日が最後だった。
この日以来この病院の敷地を一度たりとて跨いでいない。
たまに歩くのはこの病院の向かいの歩道、耳鼻科の下でさえ一度も歩いていない。
何ならそれも避けている、せいぜいあっても一年に三回だろう。


余談だがこの病院での出来事を知っている友達が一人いる。

私がこの話をしたのを、時が過ぎ友が忘れた頃、仕事が忙しくどうしてもかかりつけの病院に行けない、でも症状的に外耳炎。
立場上自分が責任者だったのもあって、バイトの子達に任せ目の前にあった耳鼻科に行ったらしい。

この病院は狭い。
患者の説明する声、先生の声、全て筒抜けだ。

『症状が出なくなったらもう来なくて大丈夫ですからね』

このセリフで友は私から聞いた話を思い出したらしい。
残念な事にこの友達が行ったのは去年の冬、2022年の話。

約20年前のセリフを未だにこの先生は言い続けていると。

あぁこれはやらかした、このセリフは聞いた事がある。
そういえばそうだった、完全に一致する、この病院だ。
だけど受付しちゃったもんはしょうがない。

薬さえ貰えばそれでいい、あいつみたいに通うわけじゃないと考えながら診察を受けた。

『うん、外耳炎だね!
お薬垂らしてね、痒くても綿棒はしないでね
これで良くなるから!

症状が治ったらもう来なくて大丈夫ですよ』

もう私笑っちゃったよ、本当に言うんだって思ってさ。
びっくりした、ここまでお前が言ってたことが現実に、しかも自分の身に降り注ぐなんて考えてもいなかったしな。

友達はケタケタ笑っていた。


それで?あんたはその外耳炎は治ったの?

いやぁ、全く。
おかげさまで四千円払って世にも奇妙な物語を体験しただけでした。

頭を掻きながら友はケラケラ笑っていた。

もう今は完治しているが結局かかりつけに行くまでの間、随分と酷い思いをしたらしい。
これは非常に仲のいい友達同士で、かつ悪友とも言える位の関係だからこそ笑える話。


そして友は言った。

なぁ、あそこの病院本当に子供が居ないんだな。
一人もいなかった、そんな事ある?ってくらい時が止まったかのようにおじいちゃんとかおばあちゃんだけだった。

何なら怖かったもん、異常なくらいに静かだしね。


そうだ、懐かしい。
それは気づいていた、私がこの病院を離れ新しい先生のところに行った時、一番衝撃を受けた事だったから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?