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ボードゲームで生計を立てられるとでも?(Can you make a living out of board games?)

本記事は、Caroline Black氏が2022年3月12日に投稿した「Can you make a living out of board games?」の翻訳である。

Caroline Black氏は、イギリスのエセックス州ブレインツリー在住のボードゲーマー。2017年からボードゲームの世界に入り込んだ。「カルカソンヌ」が最初にはまったゲームで、タイル配置やユーロゲームを好むようだ。

彼のブログである「The Dyslexic Gamer」はBGGのブログ内でも人気ブログとなっている。美しいコンポーネントの写真などが目を引くエッセイ形式のブログだ。

本記事は、ボードゲームで生計を立てられるかなぁというCaroline氏の思いから始まる。どういうマネタイズをしているかという話かと思いきや、そういう話ばかりではない。ボードゲーム業界のコンテンツクリエイターに関する色々な話や、Caroline氏の所感を交えた話となっている。

本記事の翻訳・公開については、Caroline氏の許諾を得ている。また、元記事は以下のリンク先を参照されたい。なお、ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリー機能を利用している。

コンテンツクリエイターになって生計を立てられるのかどうかについて、あれこれ考えることが多い。そうやって生計を立てているように見える人も中にはいる。Tom VaselとThe Dice Tower(※業界最大手のボードゲームYouTubeチャンネルと、その主要ホストのこと)なんかはわかりやすい例だ。私も、過去にThe Dice TowerのKickstarterを支援したことがある。The Dice Towerは出版社からかなり独立していると見えるように活動しているところが気に入っている。彼らがまだ実績のない有望な(up and coming)Kickstarterをレビューしてるのを見たことがないよね。

彼らのビジネスモデルは、Dice Tower CruiseやDice Tower Exposといったボードゲーム体験を作り上げていることに重きを置いているように思える。私は、2020年に、Dice Tower Eastに行く予定だったが、感染症の拡大のせいでその旅行はキャンセルになってしまった。

近頃、比較的新しいボードゲームレビュアーであるQuackalopeBoardGameCoに関するスレッドが立っていた。彼らのコンテンツを少し見たりした。最近は、ボードゲームYouTubeチャンネルが急増している。私は、YouTubeを見るよりも書かれた文字を読む方が好きだと認めざるを得ない。YouTubeはボードゲームに関係しないおしゃべりが多すぎる。簡潔で短めの(quick)レビューの方が好きだ。

いつからQuackalopeは、ボードゲームに関する独占ニュースを配信する主要チャンネルになったのか。(When did Quackalope become the go-to for exclusive board game coverage?)

上記のスレッドでは、資金調達についての話がなされていた。特に、出版社から対価を受けて(paid)レビューをすることに関してだ。このことによってレビューにバイアス(※偏り)が生まれるのだろうか。コンテンツクリエイターは、本当は面白くもないのに、あるゲームが面白いと言うのだろうか。Rahdo(※Richard HamがホストのYouTubeチャンネルのこと)は、レビューで取り上げているゲームよりもはるかに多く、取り上げるのを断ったゲームがあると主張していた。それは、とてもよく理解できることだ。好きでもないゲームのルールを覚えて、プレイしたい奴なんているんだろうか。おそらく、レビュアーがこういった仕事をしようと思った理由の1つは、自分のキャリアの中で、もう少し自立性があって楽しいことをしたいと思ったからだろう。

クレジット: Caroline Black

私は未プレイのゲームの山がある(※積みゲーがある)。少し金遣いが荒かったこともあり、今の時点でかなりの数を積んでいる。その中には、「Seize the Bean」や「Keyper at Sea」がある。新しいゲームを身につけるのは大変な作業だ。「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」や「Three Sisters」を優先的にプレイしようと思っている。今のところ、これらのゲームをやり遂げてから、次のゲームに移ろうと考えている。

クレジット: Caroline Black

1週間に数個のボードゲームのルールを新しく身に付けなければならないというと、飽き飽きするんじゃないかなと思う。以前、コンポートゲーム(comport game, ※定訳なし、confortの誤記?)について話したことがある。私にとっては、「カルカソンヌ」、「ウイングスパン」、「Cacao」のようなゲームをいう。戸棚から出してきて、ルールを確認することなく遊べるゲームのことだ。

クレジット: Giorgos Iosifidis

出版されていないゲームを覚えようとしている際に、忘れてはいけないもう1つのことは、見ることができるプレイ動画がないことだ。「Keyper」や「スルー・ジ・エイジズ」のルールをどうやって覚えたっていうんだ。確実なのは、ルールブックを読んで覚えたわけないだろう。このことは、「Little Factory」が出版されてすぐに手に入れた時に発見したよ。遊び方に関する動画はフランス語でしかなかった。何十個ものゲームのルールを教えてくれたRahdoにはとても感謝をしている。

クレジット: Danko Petrovic

しかし、個人的には、昔のRahdoのプレイ動画の方がずっと好きだ。彼がよく知っていて、Jen(※Rahdoの妻)と一緒に何回もプレイしたゲームに関して作成されたプレイ動画は、素晴らしい輝きを放っている(shine)。私は、新しいゲームに少し熱狂する質(a cult of new gamer)だが、新しいゲームを遊び続ける終わりのないランニングマシーン(a constant tread mill)には乗りたくはないね。普段は、新しいゲームと一緒にお気に入りの旧作を混ぜて遊んでいるんだ。例えば、昔から気に入ってるがめちゃくちゃ評価の低いゲームの「Era of Kingdoms」を昨夜遊んだよ。

クレジット: Anthony Giovinazzo

もし、あなたがレビュアーで、それをフルタイムの仕事にしたいと思っていたら、自分のチャンネルを収益化するしか選択肢がないと思う。広告を付けなきゃいけなくなるだろう。出版社から対価を受けてレビューをすることにもなるだろう。定期的な視聴者を得て、KickstarterやPetreon(※アーティストやクリエイターに月額制で支援を行うことができるプラットフォームサイト)で支援を受けなければならなくなる。

Quackalopeは、ゲームが良いとは言わないようにしているようだ。もし、ゲームの良し悪しを言ってしまうと、定期的な視聴者たちは、彼らのレビューを信頼しなくなるだろうから。とても良い指摘だと思うね。

もはやKickstarterで支援をしなくなったということが、私がYouTubeをもうほとんど見ることがなくなった大きな理由だと思う。世界的な輸送危機や、ウクライナでの戦争によって引き起こされたエネルギー価格の大幅な上昇に伴って、新しいボードゲームを支援するリスクを取れなくなってしまった。その上、多くの人々と同じように、私も今年の生活費の大幅な上昇に直面することになるだろう。自分の判断で使える(discretionary)支出を抑えなければならなくなるはずだ。

YouTuberに関して最も気に入ってるところは、レビューよりもトップ10や他のコンテンツを提供していることだ。素晴らしいYouTubeコンテンツを強調したGeek Listがあったらいいなと思っている。Shut Up and Sit DownのQuinnがやっていたボードゲームの歴史(※この動画のことと思われる。)なんかは素晴らしかったと思う。Paula Demingのボードゲーマーの進化(※この動画のことと思われる。)も同じように素晴らしかった。Quinnは、ボードゲームのインストに関する素晴らしい動画(※この動画のことと思われる。)も作っていた。私は、レビュアー同士のコラボレーション動画も好きだ。私が求めているボードゲームメディアというのはこういう類のものだ。今週の私の任務は、こういうリストを作ることになると思う。

時として、BGGの外にはもっと広いボードゲームコミュニティがあるということを忘れていると思う。

じゃあ、私がレビュアーとして生計を立てていきたいと思っているかって。それはあり得ない。まず、公開の場で(in public)批判されるのが好きじゃない。忘れないでほしいのは、こういったレビュアーの多くが、私たちが無料で見ることのできるコンテンツを作るのに、何百時間も費やしていることだ。嫌な顔して(Surly)、数個の広告に我慢することだってできるじゃないかって。私は、Petreonでレビュアーを支援したことがないことをとても恥じている。大多数(※のレビュアー)はボードゲームに情熱を注いでる。彼らは、変わった無料ゲーム以外には、ほんの少ししか金銭的報酬を得ていないんだ。

次に、私は、あまりにも怠惰な人間だ。そんな仕事に乗り気(up for)にはなれない。良いチャンネルを作り上げるのに何年もかかる。近年は、制作価値(production value, ※映画界隈においては、製作費に比して成果物の質が高いという意味合いで使われる言葉であるが、単純に製作費という意味かもしれない。)が高騰してきた。今では、プロ並みの本格的な(serious)道具一式(kit)を揃える必要がある。iPhoneでの手ブレ動画なんかもう要らないわけだ。こういったことが、生計を立てる道筋を厄介にしているわけだ。

以上

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