SIer営業の業務プロセス全貌 ~僕が大規模案件を受注し ビジネスを拡げるためにやること~
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SIer営業の業務プロセス全貌 ~僕が大規模案件を受注し ビジネスを拡げるためにやること~

あくえり

あくえりです。

今回は「営業アドベントカレンダー(#営業アドベント)」企画の投稿です。当企画は、Twitterで名高い各業界のエース営業が、日替わりで記事を投稿していくものです。大変畏れ多くも、僕が 8日目を担当させていただくことになりました。

ここまで全記事を読んできましたが、いずれも本当に勉強になるものばかりです。これ以降も、素晴らしい方々の投稿が続きますので、営業やビジネスに関わる方は、是非チェック&フォローしてみてください!

さて今回は、"大規模SIer(システムインテグレーター)の営業" がどのような仕事をしているか。そして、どのように大規模案件を立ち上げ受注し、顧客満足度を高めてビジネスを拡げているかについて、お話をしたいと思います。

僕は、この業界の営業を最前線でやってきて10年近くになります。最近は、部下1名とのチームで、年間15億円程度の受注/売上を担当。主なミッションは、新規ソリューション(製品)の企画&展開と、最近参画した 2つの大企業グループのアカウント深耕(同一顧客向けに受注額を増やすということ)です。

新卒では、日本最大級の企業統合案件を経験し、最大でSE 1000名体制となったプロジェクトの立ち上げと受注に、8人の営業チームの末席で関わりました。かたや、会社としてほぼ実績のない顧客層やソリューションを担当し、誰も頼れない状態で、SEに代わってパートナー(いわゆる下請)を管理していたこともあります。タイ・シンガポール・香港の案件を提案し、慣れないビジネス文化の中で四苦八苦しながら受注まで漕ぎつけたこともあります。

様々な経験を積ませてもらったからこそ言えますが、大手SIer営業の業務範囲や必要なスキル&知識は幅広く、めちゃくちゃ学べることが多いです。また、タフな局面での交渉や調整を通じて、あらゆるビジネススキルを鍛えられます。何より楽しい。

一方、ネットの世界では叩かれがちな業界で、"SIer の営業は無能" という声もよく聞きます。以下はGoogleの検索結果だけど、なかなかヒドイ。

画像1

実際イケてない会社や営業も多い業界だけど、僕の周りのエース達は、本当にすごい。マジで何でも出来る。何とかこのイメージのギャップを埋めたい。

そんなわけで、今回の投稿では、僕が普段どんな仕事をしているかをお伝えし「SIer 営業の一つの姿」を知っていただきつつ、その営業スキルや考え方を、皆さまのビジネスに活かしていただけたら、と思います!

なお、今回書くべきテーマには悩んだのですが、以下のTwitterアンケートに基づいて決めさせていただきました。ご協力頂いた皆さん、どうもありがとうございました!

その他についても順次、記事にしていきますので、この機会に是非、当アカウントをフォローください!Twitter(@beh1st)でもお待ちしております(^^)

本稿も、書きたいことを連ねたら1万字を超えてしまいました。長文になりますが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!

長いので、一旦のブックマークをオススメします。
※はてブに登録できます

1.SIer 営業とは何か?

そもそも皆さんは SIer をご存知でしょうか。システムインテグレーターの通称であり、ウィキペディアでは以下のように書かれています。

『システムインテグレーター(英: Systems Integrator)は、個別のサブシステムを集めて1つにまとめ上げ、それぞれの機能が正しく働くように完成させるシステムインテグレーション事業を行なう企業のことである。』
- ウィキペディア(Wikipedia)より引用 -

これ実は、日本語が分かりにくいことに加え、あまり正しくないです。大手は全然違うビジネスをしています。

例えば、僕が関与している範囲でも、以下の事業を行っています。

・経営/事業課題のITコンサルティング
・システム導入計画の策定
・要件定義~開発~保守運用(アプリもインフラも)
・パッケージの企画~開発~販売~導入~保守運用
・ハードウェアの販売~導入~保守運用
・クラウドサービス(SaaS/PaaS/IaaS…etc)の開発~導入~保守運用
・データセンターの運営
・エンジニアの派遣
・IT及びその活用に関する研究

もはや SI は事業の一つに過ぎません。現在も主要な事業ではあるものの、技術や商慣習の変化に追随しながら、SIer も変わりつつあります。これらも踏まえて、僕の SIer の定義はこうです。

顧客の経営や事業がより発展するための課題を、顧客と共に明らかにし、ITを活用するあらゆる手段を用いて、それらを実現する企業のこと

このようなミッションを達成するために、コンサル・SE・研究員達は、システム導入に向けた各種の計画、提案、開発、サポートを行うことで、顧客の課題解決に対する実質的な付加価値を生み出します。

それに対し営業は、上記のメンバーによるチームを組成し、彼らの付加価値創出をサポートしつつ、それを適切に顧客や社会に届けながら、自社のビジネスを成立させています"商材を売る" だけではなく、幅広く事業創造や運営を行っているのだと理解していただければと思います。

そういう意味で、本記事も、これから事業を始めようとしている方や、既に小規模の事業を運営されている方の参考になればいいな、と考えています。

なお、SIerにも様々な会社があります。各企業内にも様々な営業がいます。本記事の記載も、大手のSIerにしか当てはまらないこともあると思います。あくまで僕の事例である旨、改めてご認識ください。

以下で、具体的な業務内容を説明します。

2.SIer 営業の業務内容

まず、SIer 営業を理解する上で必要な2つの言葉を解説します。「アカウント営業」と「ソリューション営業」です。

アカウント営業
特定の大規模顧客(アカウント)を担当する営業。その顧客ビジネスの発展のため、あらゆる商材を用いて、あらゆる提案をし、課題解決を先導する。顧客や顧客業界を徹底的に知り、様々な部署や経営層とのリレーションを作り、プロジェクトで実績を出しながら、顧客満足度を高めていく。そのリレーションや顧客満足度を武器に、当該顧客内での自社のシェア(商圏)を広げる。シェアを広げることで、規模の経済や生産性向上によるコスト削減を図り、粗利率を高めていく。こうしたアカウントビジネスを主導する営業。
ソリューション営業
特定のソリューション(製品)を担当する営業。顧客を問わず、ソリューションを広く提案し、受注件数を増やす。顧客との中長期の関係構築より、市場価値の高いソリューションを創出し、自らも業界の先駆者となりブランド化することがポイント。その付加価値やブランドを元に差別化し、受注確度と粗利率を高める。一顧客あたりの売上規模は小さいことが多いので、導入顧客数をどれだけ増やせるかが勝負。こうしたソリューションビジネスを主導する営業。最近流行りの SaaS やサブスク系ビジネスと一緒。

SIer の営業は、上記のどちらかに主軸を置き、キャリアの中で両方を経験していくことが多いと思います。両方を兼務することもあります(僕も兼務型です)

さて、こちらを踏まえて、以下の図をご覧ください。僕が実際に行っている業務の全体概要です。

業務全体概要

要は、市場ニーズに沿った製品を用意し、市場に浸透させる。興味を持っていただいた顧客に対し、戦略的に提案を実施してコンペを勝ち抜く。そして、会社として正式に契約をし、システム開発(等)のプロジェクトを開始する。

プロジェクト開始後も、SEに任せきりにせず、顧客への最終的な付加価値を実現できるまで、営業としてやるべきことをやる。無事に納品やリリースできたら、適正にお支払いいただき、自社のビジネスとして成立させる。

こうして顧客満足度を高めつつ、また次の仕事に繋げるための仕掛けを行い、ビジネスを拡大していく。

あまり細かいことは言えないのですが、こうした活動を通じ、現在は、部下1名と共に、年間約15億円を受注/売上しています。アカウントとしては 2つの大企業グループを担当しながら、1つのソリューションの日本展開を狙っています。

アカウントの1社は、5年ほど前に、自分が主導した提案活動によって、当社として初めて参画。以降商圏を広げ、現在は年間約10億円のビジネスに成長させた。これは、我ながらよくやれたなぁと自信に繋がっています。

以降で、簡潔ではありますが、上記各プロセスの内容や意識しているポイントを書いていきます。

 2-1.製品企画

自社企画
メーカーなど、商品を販売することで利益を出す会社では、通常「商品企画/開発部」などが製品企画を担当します。一方、SIer では営業が主導して、SEと協力しながらソリューションの企画や開発を行います。
※正確には SIerでは、じゃなくて、当社は or 僕は、かもしれませんが… 

例えば、その業界の様々な顧客と会話する中で「未解決で共通的な業界ニーズ」を捉えたとします。そして、それを解決するソリューションが日本になければ、"創ってしまえば良い" という発想になるわけです。この辺は、大規模だからこそできることかもしれませんが。

本気でやると決めたら、社内の投資を引き出すために、上司やエンジニア、場合によっては、顧客・パートナー企業・ベンチャー企業・コンサルティング会社等を巻き込んで、マーケットの調査や分析、仕様検討、販売計画&コスト計画の作成、費用対効果分析…などを一通りやり、それっぽい社内説明用の資料を作って経営陣にプレゼン。上手くいけば投資が認められて、開発に着手できます。

「それっぽい」とやや斜に構えたのは、結局、ソリューションが当たる/当たらないは、正直、運の要素が強いと思うからです。緻密な調査や分析で売れる程に市場は安定化していない。新しい技術もビジネスが矢継ぎ早に誕生する中、ニーズも刻刻と変化している。このような時代では「営業や現場の経験に裏打ちされた勘」に基づいて、市場への投入スピードを早めた方が良い。

なので、ごちゃごちゃと社内審査に時間を掛けず、さっさとやっちゃえば良くね?というのが個人的な意見なので、まずは、現場レベルの数百万円程度の投資で、プロトや簡易デモを創って市場に投下し、顧客の反応を実証して自社の経営陣にも説明するプロセスが良いと思っています。

他社製品の販売&導入パートナー化
自社で創る体力がなかったり、世の中で既に洗練された製品があれば、自社で作る必要はありません。

日本に適切なソリューションが存在せずとも、世界には存在していることが多いし、日本の製品ベンダーやベンチャー企業にも卓越した技術や製品はある。彼らと上手くアライアンスを組み、我々が保証を付与すれば、市場のニーズに応えられるビジネスを創れる。

彼らが必要としている、国内企業への販路や信頼関係を我々は有しているので、両者にとってメリットあるスキームが組めるわけです。

ただ外部ベンダーの製品で本格的にビジネスをするのは本当に難しい。感覚的に、上手くいったアライアンスは 2~3割くらいだろうか。それでも全体としてペイしているから良いのだけど。

特に海外ベンダーの製品は、仕様もサポートも不安定なことが多い。日本の大企業顧客はとかく「品質」に拘るので、海外基準でバグだらけの製品をそのまま持ち込むと、ほぼ炎上する。現場としては、色々と工夫して乗り切るけど、結構しんどい仕事です。新規事業って内実はめちゃくちゃ泥臭い。

自社企画も含め、最初は多分赤字を出します。2-3年で黒転し、さらに1-2年で累計の赤字をなくし、そこから稼げるビジネスに出来れば上出来。成果が出ずとも、粘り強く現場は努力し、経営陣は気長に支援する…そういった文化や雰囲気がすごく大事。あと、それを実現できる経営体力ですね。

また、アライアンスの組み方や、販売代理店契約の内容には気を配った方が良いです。大して内容を理解せずに締結すると、悲惨な未来が待っています。営業も SE もハイクラスの仕事をするなら、契約書(英語含む)を読むスキルは必須です。

例えば、競合製品の取り扱い禁止条項の有無、販売数のコミット(到達しないときの罰則)の有無、利益配分、ベンダーによる保守サポートの有無と範囲など…ビジネスに与える影響はかなりデカイ。

 2-2.マーケティング

生み出した製品は、潜在顧客に認知してもらう必要があります。なのでマーケティング活動も、営業主体で行います。

一方、我々は基本的にターゲットを大企業に絞っているので、マーケっぽいマーケはしていません。インサイドセールスもあまり抱えていない。だから、大半のことは僕ら "アウトサイドセールス" がやります。

主なプロモーション手段は、顧客への直接訪問と、セミナーの主催です。ターゲット顧客は、既にアカウント営業側で押さえているので、そこを窓口に製品紹介やセミナーの案内をします。これはソリューションビジネスの観点から見ても便利だし、チャネルとして非常に強い。

新規企業にアプローチする際は、リストを有するパートナーに発注して、単純にメールやDMを送ります。リスト選定の条件は、予算感に合わせて何となく決める。大した数や金額でもないので、あまり拘らない。

よって、ソリューション営業として何をしているかというと

・製品や業界に関する学習と研究
・アカウント営業への教育、啓蒙、営業活動の管理
・製品紹介パンフレットや汎用提案書の作成
・DMやメールの作成とリストへの送付
・自社Webでの紹介ページの作成
・セミナーの企画/主催と当日の運営
・他社イベントへのブース出展
・訪問しての紹介やデモの実施
・etc

といったところです。もちろん一人で出来るものじゃないので、担当のエンジニアと協力して、役割分担しながら進めていきます。

マーケに関しては、正直、僕よりも詳しい人がたくさんいます。ググればいくらでも勉強になる記事はあるし、Twitterにも素晴らしい知見が溢れています。この #営業アドベント にも、マーケ系インサイドセールスの神様達がいるので、是非、彼らの記事を参考にしてください。

 2-3.情報収集・案件探索

こちらは、アカウント営業としての活動です。アカウント営業は、これまで説明したような製品企画やマーケを主導することはありません(前述の通り、ソリューション営業と一緒に、担当アカウントでの認知を深める活動はする)

その代わりに何をするかと言えば、徹底的に顧客やその業界とビジネスを知るべく顧客の中に入り込みます。机上調査だけでなく、様々な部署の、様々な担当者とコンタクトを持ち、会話(ヒアリング)をします。上席を含めて、顧客の役職者とのリレーションも作ります。そして、色んなレイヤーからの情報収集で、顧客の状況や課題感、やろうとしていることを複眼的に炙り出しながら、精力的に情報提供をしていきます。この活動が、後の提案精度向上やコンペの回避に効いてくる。

もちろん、顧客側も理由なく関係を作ったり、無駄話に時間を使う余裕もないので、そこはアカウント営業の技量が試されます。営業各人のキャラや強みを活かし色々工夫します。

この辺の「アカウント営業がどのように "アカウント深耕" を行うか」については、以下の note に書きました。13,000字ありますが、読みやすいと好評いただきました。

こうした地道な活動を続けていると、ふと「提案機会」が巡ってきます。これは RFP(Request For Proposal 提案依頼書)で明確に提案依頼をもらい、正式なコンペで進めるケースもあれば、「今こんなこと考えてるけど御社で何か提案できる~?」とふわっと宿題をもらい、情報提供とディスカッションを続けるうちに、ノーコンペで案件獲得が決まるケースもあります。圧倒的に後者が楽なので、アカウント営業としては、こうした案件組成を狙っていきたい。

なお、RFPを受けてから案件の存在を知り、提案を始めるようではほぼ負ける。アカウント営業としては十分な反省が必要。

このケースでは、既にどこかのライバルが顧客と具体的な話を詰め、ほとんど発注の心を決めている。顧客の社内説明用に比較検討した証跡を残すための形式コンペに過ぎず、RFP自体もライバルベンダーと協力して作ったりしている。

ハッキリ言えば、自社は当て馬に過ぎず、本気で提案してもリソースを無駄にするだけ。こうして受注確度を見極められず、社内を掻き回した挙句に失注する営業には、目も当てられない。

日頃から顧客と接して信頼関係を創り、顧客のやりたいことを理解して寄り添い、その実現のために社内のリソースを調整しながら、顧客と共に企画をし、その結果として案件も受注する。そんなプロセスこそ、本当のアカウント営業の戦い方です。

ここで一度復習に、全体プロセスを再掲します。

業務全体概要2

さらっと書こうと思っていたけど、書き始めると長くなってしまいました。皆さん、まだまだ続きますよー!

ちなみに、疲れたときは「キムチェウォン 高画質」での画像検索がオススメです。ちゃんと戻ってきてくださいね。笑

 2-4.提案

提案依頼を受け、自社としても付加価値を提供できる目途がつけば、いよいよ提案活動の開始です。いわゆる「営業」の仕事で、一番イメージがつく部分かと思います。僕としても、最も楽しく気合いが入り、強みを活かせるところ。

大手SIer のように、大企業を顧客とする営業(エンタープライズセールス)の特徴として、”提案機会が少ない" ことが挙げられます。この辺は、営業アドベントカレンダー3日目、salesforce 佐藤さんの以下の記事でも触れられています。合わせてご覧下さい!

このようなコンペでは、ライバルも、数少ない営業機会をモノにすべく本気で狙ってきます。当然、競争は熾烈になる。先程、RFPが出てからでは遅いと書いたのも、このような事情によります。普通に戦っても勝率は上がらない。

営業としては、一瞬の気も抜けない勝負が始まります。一つのミスが命取りになる。スピードを求められ、リソースにも限りがあるので、無駄な活動にに時間は避けない。

ここで必要になるのが "ゴールを見据えた戦略的な提案活動" です。エンジニアや上司を含め、提案チーム一体となって意識を合わせながら、やるべきことを無駄なく正確にスピード感をもってやる必要があります。

そうした、戦略的提案活動のプロセスやポイントについて、以下の記事に書きました。オススメですので、こちらもご覧ください!

参考までにプロセスだけ抜粋すると、こんな感じです。詳細は是非記事をご覧ください。

① 受注に必要な条件の棚卸し
② 現状(既存情報含む)整理
③ 課題(不足情報含む)の明確化
④ 課題解決プロセスの策定
⑤ 役割分担と実行
⑥ (再度②へ…以降繰り返し)

このような活動を通じコンペに勝ち抜けば、受注はもうすぐです。でも、SIer営業の仕事は、ずっと続きます!

 2-5.契約

コンペに勝っても、会社として正式にプロジェクト(システム開発等)を開始するには、契約が必須です。この手続きも営業が担います。

契約って単純な事務作業だと思うかもしれません。でも実は、結構大変な知的作業です。

というのも、システム開発の契約(いわゆる業務委託契約)では取り決めるべきことも多く、またその内容は両者の利害関係が真正面からぶつかるものです。両者が納得できる範囲で落としどころを探るのは、結構大変。両者の法務部はもちろん、場合によっては外部の弁護士を含めて調整することもあります。

主に協議すべき代表的な事項は「損害賠償」「秘密保持」「知的財産」「プロジェクトの完了、検収、支払い条件」「再委託条件」などです。会社ごとに許容できるレベルがあるはずなので、その最低ラインを守りつつ、相手方と交渉していきます。

僕らの日常生活…すなわち to C サービスだと「契約交渉」なんて基本的にないと思います。サービスの利用規約なんかほぼ見ないし、ジムの入会契約だって黙って受け入れますよね。

でも、to B はガツガツ契約条文を書き換えて交渉します。この感覚がないと、知らず知らずのうちに不利な契約をし、後に問題が起きたときに取り返しがつかなくなります。

このように営業が自ら契約法務を理解し、プロジェクトの内容やリスクに合わせ、どこまでの文言を許容できるかを判断。顧客の事情も鑑みて、最終的に営業が責任を負う形で、契約の各事項を決めていきます。

こんな感じなので、新規先の契約だと二~三ヶ月かかることもあります。ある程度付き合いの長いお客さんだと、契約上の文言には拘らず、プロジェクトの中で上手く折り合いをつけます。

契約が遅れると色々と不都合が生じるので、コンペに勝つ前から契約面の調整を始めたり、契約までのリードタイムがあったとしても確実に契約をもらえるよう内示を得たり、上層部での根回しをしておいたり、色々暗躍しておくのも大切な仕事です。

 2-6.プロジェクト支援

さて、やっとプロジェクトが始まりました、ここから先は、エンジニアやコンサルタントに頑張ってもらうフェーズです。でも、"受注したから営業の仕事が終わり" かというとそんなことはありません。

会社として最終的に顧客に価値提供ができるかは、このプロジェクトの成否に掛かっています。営業として顧客満足度を高めるには、プロジェクトを成功させることが必須です。もちろん、営業自身が開発をすることはないですが、その他必要なあらゆることをやります。

詳細は、SI特有のマニアックな話になるので割愛します。営業のミッションは受注だけではなく、プロジェクトを完遂して顧客に満足してもらい、自社や自分への信頼感を醸成することでもある、とご理解いただければ十分です。

 2-7.納入

紆余曲折を経てプロジェクトが終わり、無事にシステムをリリースできたとします。このとき、営業的(ビジネス的・契約的)には、プロジェクトの完了を顧客に承認してもらう必要があります。具体的には、請負契約なら検収、準委任契約なら善管注意義務を果たし作業を完了した旨を承認してもらいます。

基本的には、契約の通りにプロジェクトを実行し、特に揉め事がなければ問題になりません。ただ、プロジェクトの進め方が甘く仕様が合意出来ていなかったり、プロジェクトで信頼関係が失われていたりすると、度々「検収されない」問題が発生します。「我々が欲しかったのは、こんなシステムではない、作り直せ、お金は払えない、もしくは減額しろ」という交渉を受けることになります。

こうなると大変です。万が一、想定していた金額を回収出来ないようでは、ビジネスとしては赤字です。それでなくとも、顧客との関係はボロボロになり、次の仕事をもらう…というのも困難になっていきます。かといって安易に要望を受け入れることも難しい。営業としては、ある程度強く交渉しながら、現実的な解に落とし込んでいく調整力が求められます。でも、こうなってしまった時点で、営業の案件管理としては失格です。

だからこそ、後々こうした問題が起きないようにプロジェクトの状況はきっちりと把握し、問題の芽があれば早く摘みに掛かる。不利な契約を結ばないように、営業自身がしっかり契約を理解する。プロジェクトが破綻するような無理な提案や、無駄に顧客の期待値を上げるような提案はしない。

こうして、案件の組成から徹底的に注意し、リスクを見極めながら提案を進めるのも大事です。ただ、あまり慎重になりすぎると、今度は提案が曖昧なものになり、受注ができなくなります。

なので、取れるギリギリのリスクを見極めつつ、イケる範囲では全力ポジティブに提案する姿勢が大切です。こうした絶妙なバランス感覚に、営業の力量が表れます。いやぁ本当に難しい仕事だわ…。

 2-8.請求

プロジェクトの完了承認まで済めば、顧客の財務に問題がない限り、あとは自動的に支払いまで進みます。ただ、海外の企業はもちろん国内企業でも「事務ミス・処理忘れ」は発生することがあるので、実際に支払われるまではきっちりフォローします。

3.まとめ

さて、ここまでが、SIerの営業がやるべき、そして僕が実際に普段の業務でやっている仕事(共通業務を除く)の概要です。提案~請求の部分は、案件毎に行っており、そして一年間に数十以上の案件を担当するのが普通です。

今回このテーマを取り上げたのは、我々の仕事があまりにも誤解されていると感じたからです。冒頭のGoogle検索の記事とかひどいでしょ…是非このnoteを上位表示にしてほしい。笑 

まぁでも言いたいことは分かります。本来はこのような仕事が必要でも、実際に出来ている営業はすごく少ない。結局全てエンジニアに押し付けていたり、人を派遣してるだけだったり、顧客の伝書鳩でしかない営業もたくさんいるのは事実。僕だってまだまだ。

だから業界全体で営業のレベルを引き上げなきゃいけない。そのためにも、分かっている人がちゃんと発信しなきゃいけない。そんな想いもあって、この場をお借りしました。

そんなわけで、このnoteを読んでくれた方には、SIer 営業の仕事は非常にスコープが広く、事業のあらゆる局面で細部まで気を配りながら、様々な関係者を巻き込んで事業を主導するものであり、タフながらも成長できる仕事である、ということが伝わったらめちゃくちゃ嬉しいです。

本当はもっと書きたいことがたくさんあります。省略した共通業務系にも、営業活動で超大事なポイントがあります。これらは、また日を改めて書きたいと思います!

最後にプロセスの図を再掲します。

業務全体概要3

非常に長文となりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!皆さまの営業や事業活動に、少しでも参考になる部分があったら嬉しいです(^^)

これからも営業やビジネスに関わる記事や発信をしていきますので、気になった方は、是非、当アカウントとTwitterアカウントのフォローをお願いします。本投稿も拡散いただけたら嬉しいです!

それでは、営業アドベントカレンダー、明日からもお楽しみくださいね!

あくえり


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あくえり

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あくえり
【法人営業の戦略や仕事論を語ります】▼東大経済→大手ITのエンタープライズセールス|企画&マーケ&PM&採用を経験、新規事業を含め年間売上約15億円、戦略策定から現場実行まで主導、シナリオメイクと論理思考が得意▼パパ1年・フットサル10年・趣味エンジニア15年