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絶望の先にある希望を見せてくれる瀧本哲史さんと、世の中を変える柿内芳文さん

この本を読んだ。
人生がちょっと変わるくらいびっくりした。


なんの話かというと、「パラダイムシフト」の話だ。

みなさん、パラダイムシフトって言葉、聞いたことありますよね?
パラダイムチェンジとも言うのかもしれませんが、要は、それまでの常識が大きく覆って、まったく新しい常識に切り替わることです。
たとえば、超有名な天動説から地動説への大転換があるじゃないですか。ガリレオ・ガリレイとかの。
あれって、どうやって起きたと思います?
どういうふうに、みんなの考えがガラリと変わったんだと思います?

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これ、ちょうど今年のはじめのLobsterr Lerrerで、似たような話を読んでいた。

1972年以降、シカゴ大学は毎年1〜2回、幅広いトピックについての社会調査を行っている。そこからわかったのは、世論はよりリベラルになっているが、それは世代交代の結果であり、マインドの変化の結果ではないということだ。たとえば1972年、アメリカ人の42%が共産主義の書籍を公共図書館からなくすべきだと主張していたが、その意見は年代によって大きく異なっていた。そして今日、アメリカ人の4分の1がこの政策を支持しているが、実は各出生コホート内では、48年前と現在ではその意見はほとんど変わっていない。世論全体の変化は、1928年以前生まれの回答者の割合が49%→0%に低下したこと、加えて、1981年以降に生まれたミレニアル世代の割合が0%→36%に上昇したことによって引き起こされたと考えていいだろう。
Lobsterr Lerrer vol.43の「変化はスローにちょっとずつ」より
原文はSocieties change their minds faster than people do

年初に読んで、半年たっても覚えてるくらいだったんだけど、瀧本さんによるとなんと『科学革命の構造(1962)』の著者のトーマス・クーンがすでに指摘していた話だったんだそうだ。半世紀前の議論!


地動説が出てきたあとも、ずっと世の中は天動説でした。
古い世代の学者たちは、どれだけ確かな新事実を突きつけられても、自説を曲げるようなことはけっしてなかったんですね。
でも、新しく学者になった若い人たちは違います。古い常識に染まっていないから、天動説と地動説とを冷静に比較して、どうやら地動説のほうが正しそうだってことで、最初は圧倒的に少数派ですが、地動説の人として生きていったんです。
で、それが50年とか続くと、天動説の人は平均年齢が上がっていって、やがて全員死んじゃいますよね。地動説を信じていたのは若くて少数派でしたが、旧世代がみんな死んじゃったことで、人口動態的に、地動説の人が圧倒的な多数派に切り替わるときが訪れちゃったわけですよ。結果的に。
こうして、世の中は地動説に転換しました。
残念なことに、これがパラダイムシフトの正体です。
身も蓋もないんです。


あらためて読んでも、どんよりとする話だ。

人は、科学的な事実に基づくものでさえ、なかなか考えを変えるようなことがない。

これほど世間が「ハンコは非合理的」という意見で盛り上がっても、どれだけハンコより電子署名のほうが合理性があると説明しても、決裁権をもつ年配方がどっぷりとハンコ文化に浸かっている場合、なかなか意見は変わらないということだ。

「結局、世の中は変わらない」という絶望感で身体から力がぬける。はぁあ。

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しかし、瀧本さんがすごいのは、ここからだ。

でもこれ、逆に考えると、めちゃくちゃ希望だと思いませんか?
「世の中を変えたい」と考える人はいつの時代も多いですけど、なかなか世の中って思うようには変わらないんですよね。選挙に行って一票を投じても変わった実感はぜんぜん得られないし、努力して上の世代の考え方を変えようとしても、徒労に終わるばかりです。
で、そこで「やっぱり世の中は変わらない」って諦めちゃう若い人も多いんですが、みなさんが新しくて正しい考え方を選べば、最初は少数派ですが、何十年も経って世代が交代さえすれば、必ずパラダイムシフトは起こせるってことなんですね。
たしかに時間はかかりますけど、下の世代が正しい選択をしていけば、いつか必ず世の中は変わるんです。


これ、すごくないですか???


じぶんたちが、正しい選択をしていけば、いつか必ず世の中は変わるんです。


逆に言うと、目の前の上の世代の考えは変えられないとしても、じぶんたちは「なんだかなぁ」というものを引き継いではいけない。

正しい判断をして、正しい選択の結果を下の世代に引き継がないといけない。

そしてできれば、じぶんが上の世代になったときには、「けしからん」とか「いかがなものか」とかではなくて、下の世代の正しい選択を後押ししたい。


世の中を変えるのに大事なのは、声の大きさや勢いじゃなくて、すぐには変えられないとしてもいったん心に棚上げして、喉元過ぎても忘れずに覚えておく「執念深さ」なんじゃないか・・というところまで考えて、この本のあとがきを書いている柿内芳文さんが、めちゃくちゃ執念深い、という話を思い出した。


瀧本さんと柿内さん、とても相性のよいお二人だったのだろうな。ちょうど今日のほぼ日で、パラダイムシフトの話が出てきた。来週の更新も楽しみだなぁ。



とりあえず、決裁権を持ったら絶対にハンコをなくして電子決済にしてやるからな。覚えておけ、俺。

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