詩27「ミザリー」

宇宙人がやってきてあたしの手首を掴んだ
燃えるような夕焼けだった
薔薇の花びら散らしたような
今まで見たことのない、見たことのない赤
おそろしく綺麗な

涙が横に流れていって納屋の床に滴った
よく見るとあなたも泣いてる
行かないでくれと懇願している
ごめんなさいあたしの脳は全てを拒否して
忘却の津波に揺れてる

古いホウキや錆びたオイルの缶
埃を被ったテントだとかそういうのはわかるの
あなたは誰なの
ワインの澱がわきあがる
あたしは誰なの

チリビーンズの缶が足元に落ちて
ダイニングテーブルから体を起こした
厭な夢を見た
床が抜けるような
喉に詰まった抗鬱剤の甘く崩れるような

電話が鳴る
電話は嫌い
いつまでもいつまでも鳴り続ける
誰か
誰か代わりに出てくれるはずなのに

宇宙人がやってきてあたしの手首を掴んだ
沼から引き上げるように
涙の沼から
あたしは宇宙人に丁寧にお礼を言って
その指にはめられた指輪を見た

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