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V1G/V2G ユースケース(事前知識)

エネルギー系の政府機関であるNRELに転職してからもう6ヶ月経過しました。写真は転職後にいった隣州の UtahのMoabです。

6ヶ月間いて思うところはちょこちょこ変わってはいますが、やはりアメリカの組織であろうが組織が大きかろうが政府組織であろうが組織やチーム運営における根本的な問題や課題は変わらないなと思いました。
この辺りはまた別の記事で書きます(多分)が、結局自分の上司が誰であるのかがかなり重要だと感じています。
その点、今の環境に満足はしていません(転職して悪くなったという意味ではなく、純粋にもっとよくできるだろ!という気持ちが日々募る)が良い上司的な人に巡り会えたし、そもそも前職のバリバリ日系でそんなに大きくない企業でも素敵な上司に出会えたし、自分の運に感謝。

ということで直接関連する人がより上流のUtilityやDOE(エネルギー省)になったので前職と比較すると目線が変わった気がします。
実際にやっていることもV1G/V2Gだとどこからどう指令が来るのか、具体的に誰が何を制御しているのか、みたいなことを調査しています。

ということで前回の下記ポストの図を進化させたのがこちらです。

系統概略図

とりあえず制御実体の名前が追加されたのと家の中が細かくなりました。
通信の絵も描きたかったのですがそれは今仕事でバリバリ描いていることだしそもそもiPadで作図する限界を感じたのでやめました。

構内制御: PCS (Power Control System)

日本でPCSというとパワコンを指しますが、アメリカではNEC (NFPA 70)で言われるEMS (Energy Management System)をUL化(UL 3141)したのがPCSです。系統連系インバータではありません。
平たくいうと、構内の電流を監視して定格を超えないようにスマートロード(e.g. スマート家電)を制御したりブレーカを切ったりする制御実体です。
個人的にこの規格が面白いと思ったのは、クラウドベースのPCS/EMSは禁止されている点です。

さて、EMSが出てきましたがNECにおけるEMSはかなり狭義的で、いわゆる経済的な便益を追求したエネマネを含みません。
確かにカリフォルニア州のDynamic Pricing (1時間前プライシング)でもEMSは使われず、ASP (Automation Service Provider)という結構意味不明な単語が使われています。いや意味はわかるのですが、結局広義的なEMSでは。。。

ということで制御対象は基本的には電流です。

配電網制御: DSO (Distribution System Operator)

DSOはアメリカ的に言えばいわゆるUtilityです。
DSOの興味は基本的には系統アセット、つまり電線やトランスが破損しないことにあると捉えています。
聞こえはいいですが、なんか若干泥臭いスマートグリッドみたいな感じで、センサを取り付けてこれらを監視しています。もっというと2010年前後でDOEがスマートメータ普及を主導したためその頃からアメリカではスマートメータが普及していて、それらを活用する製品がちょこちょこあります。(例えばItron. ずっと勘違いしていたのですがOSのITRONとは関係ないです。)

この絵には描けなかったですが、これら情報を使っていわゆるDR(デマンドレスポンス)を駆動しているという認識です。

昨今はDRと言えばOADR (Open ADR)ですが、これも色々調べていると2010年は違う感じだったりで何かこの15年であったんだなあ。。。

先にも述べましたが制御対象は基本的には電流です。
ただし電圧も監視されていて、ある区間の中で電圧変動が際立つ場合は、無効電力を調整したりします。(STATCOM)
ただし柱状トランスもタップ付きなので、電流が系統アセットの定格を超えないことがより重要視されている感じがします。V/Qとかはおまけな印象。

送電網制御: TSO (Transmission System Operator)

アメリカではRTOと呼ばれていたりなんとなく複雑ですが、いずれにせよ彼らの責任は需給管理、つまり周波数管理にあります。
需給管理なので欧州的な市場を活用した取り組みもあり、この辺はもう最近あまり関係ないなと思ったので調べていません!
しいていうならVPPはいうほどアメリカでは実用化されていないことが個人的には驚きました。

次回: 決意表明

本当はV1G/V2Gがこれら三つの制御主体に対してどういった価値を提供するのか(狭義的なユースケース)を書きたかったのですが、思ったより長くなったのでここでやめて次回書きたいと思います!

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