【第6話全文無料公開中!】『Beep21』メガドライブミニ2収録作品「魔法の少女シルキーリップ」あの時の裏話(後編) 書き手 : 遠藤正二朗
【New! お知らせ】いよいよ最終回! 第11話「30年後 残ったいくつかのあれこれ」を公開しました!
10月27日に発売される
メガドライブミニ2には
メガCDの名作タイトルが収録され、
大きな話題となりましたが
その中でも注目を集めたのが
「魔法の少女シルキーリップ」。
まさかの収録決定を受けて
『Beep21』は当時の企画担当者の
遠藤正二朗氏にコンタクトし、
あの時のエピソードを執筆して
いただきました。
▼前編(0話〜5話)はこちら!
31年前のあの時、
「シルキーリップ」が
いかにして生まれてきたのかが
克明に描かれていて、
まるで1990年代に戻ったかのような
雰囲気を味わえたはずです。
今回の「後編」は6話から11話までで
構成されていますが、この臨時増刊号を記念して
最初の第6話を全文無料公開しちゃいます!
その続きの7話からは前回同様に、
公開開始日から毎日1話ずつ
追加公開していきました。
無料公開する最初の第6話は、開発当時に
カットされた幻の3話と9話の話から!
どうぞお楽しみください!
※本記事はこちらから読むことができます。メガドライブミニ2についての話題が凝縮された『Beep21』メガドライブミニ2臨時増刊号はここでしか読めない当時の開発秘話が満載!メガドライブミニ2関連記事をすべてご覧いただけますのでどうぞお見逃しなく!
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第6話「幻の3話と9話」
さて、ここから後半戦のスタートでございます。こういった形での執筆は初めての試みだったので少々不安もあったのですが、どうやらご好評をいただいているようなので、後半も気合いを入れてお届けしたいと思います。
今回はシルキーリップに収録を予定していたものの、しかしながら泣く泣くカットしたエピソードなどについて語らせていただきます。
それでは皆様を三十一年前にご案内いたしましょう。
リップの開発に費やした九ヶ月間で、消費したCampusノートは計三冊。それは今も私の手元にある。このノートは仕様のメモや画面レイアウト、キャラクターラフや会話内容を書き込んだもので、いわばリップの骨格となる構成物のひとつだ。当時、既に仕事用のPCは支給されていたが、アイディアが閃いた際、OSディスクを入れてPCを起動し、ディスクをワードプロセッサーソフトに入れ替えまた起動、などといった手間は面倒でもあり、まずは手書きでアイディアを書き留め、後にデジタル化するといったプロセスは企画職の間ではよく用いられていた。
そんなノートに、こう記されている。
これは開発初期に今後必要となるフィールドマップをリストアップしたメモだ。「デート先」「サーカス」「役所」といった、発売されたソフトには実装されていないものもあり、現在の私でも「デート先」と「サーカス」をどう使うつもりだったのか記憶にない。だが、「役所」については心当たりがある。
更にページを進めると、会話モードのリストが記されている。会話モードはS-1からS-14までのブロックで区切られており、Sはエピソードを意味する記号だ。
そう、つまりリップは当初、現在のかたちの全11話ではなく、全十四話の想定で開発が進められていたのだ。
1991年秋。『魔法のプリンセス ミンキーモモ』がテレビアニメとして復活したそのころ、我々スタッフは開発スタート三ヶ月足らずにも関わらず、スケジュールの上で窮地に立たされていた。残り三ヶ月でのマスターアップを実現するためには、想定している登場人物やフィールドマップといったリソースの実装がどうしても間に合わないからだ。
リップは十四のエピソードで構成されていたが、これを削り込みリソースを圧縮する必要性が生じてきた。幸い、まだデザイン自体が追いついていないキャラクターもあり、ムダなリソースの発生を防ぐためにもこの段階での決断が必須であった。
まず着手したのが、終盤の圧縮だった。十一話より魔法の囚人が脱獄し人間界に逃れ、最終回の十四話までの三話にわたりリップやイザベラと対決するという展開を予定していたのだが、これを二話に圧縮した。その結果、戦闘モードのいくつかのリソースがカットできたが削減範囲は極めて限定的であり、更なる削り込みが必至である。
熟考の末、第三話と第九話に予定されていたエピソードを丸々カットすることを決めた。それでは幻となったお話の内容についてお伝えしよう。
これら二つのエピソードを削り込むことでリソースもカットでき、これでリップは全十一話となり、現在の構成にまとめられることになった。しかし九話については特に実現したいエピソードだったため、正に断腸の思いで決断したのをよく憶えている。
結局、小鳥の表現と歩道橋のリソースは最初っからみんなに問題視されてはいたんだよなぁ……黒いライトバンのちょっとヤバめの人たちはこれまでのゲームだとあんまり取り扱われないタイプだから、ぜひとも登場させたかったけど、今回はお預けかぁ……。
はぁ……不得手にしゃしゃり出てくるなんて、まったくもってこの若造はお仕事ってものを舐めきってますね。次作になる『Aランクサンダー・誕生編』でもこのトンマはサブキャラのデザインと原画なんてやっちまって、それでだれが一番損するかって、購入してくれたユーザーのみなさんですよ。まったく。
さて今回は仕方なく幻となってしまったふたつのエピソードを紹介させていただきました。このあとのタイトルでも度々こういったことは起きているんですよね。『メタルファイターMIKU』のサファイア戦とか、『MARICA(マリカ)~真実の世界』の獣人デパート編とか、ホームレスと警官編とか。あっ……サンダーに至っては後半が丸々……うっ、うぅぅぅぅ……。
はい、それでは次回は音声収録にまつわるエピソードなど、お伝えさせていただこうかと思います。
第7話「おっかない、本当におっかないある1日」
リップを作っていたころ、既にPCエンジンではCD-ROMユニットが発売されていて、長尺を喋るキャラクターのボイスをプロの役者が演じるのは当たり前のことになっていました。しかし、業界自体が芸能というジャンルに対して経験が浅く、横書きの台本があったり、状況説明がなくただ長いセリフが記されていたり、ファン気分でスタジオまで見学しにくる野次馬スタッフがはしゃいだりするなど、演じる側からすれば高いテンションでは挑めない現場も多々あったと、のちに録音現場の方々からお話を伺ったりしたものです。
今回はリップ開発の中でも特に印象的だった一日、音声収録日の様子とその前後のエピソードなどについてご紹介いたします。
それでは暦を三十一年ほど遡ってみましょう。
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