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聞いてみた! セガサターン30周年記念アルバム『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE V -』─by 佐伯 憲司─

今回、ウェーブマスター/SOUND! SHOCK SERIESより8月8日に発売された新譜『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE V -(テクノソフト ミュージックコレクション - サンダーフォースⅤ -)』が、「もしメガドライブで『サンダーフォースⅤ MD』が出ていたら?」という意欲的なボーナストラックを収録していることを知り、即個人的にショップに予約を入れた私、ライターの佐伯憲司がBeep21編集部に記事化を提案させていただきました。

その理由ですが、もちろん、私個人も『サンダーフォースⅤ』(以下『TFⅤ』)のサウンドは大好物であることは前提として、今作がこれまでのSOUND! SHOCK SERIESの『サンダーフォース』(以下『TF』)シリーズのラインナップとは異なり、オリジナル音源がセガサターン(以下SS)/ PlayStation(以下PS)世代のPCM音源世代のトラックであり、その両バージョンが収められていること。そして、なぜ、ボーナストラックがメガドライブ音源での『TFⅤ』サウンドの再現というマニアックなものになったのか?  パワーアップした本シリーズの制作意図をいちゲームミュージックファンとして、制作陣にお伺いしたくなったからです。

そこで、今までの体感記事シリーズのレビュー記事とは趣向を変え、本CDのスーパーバイザーである奥成洋輔氏(株式会社セガ)、Co-A&Rを担当された西村“まぢん”真人氏(株式会社セガ)と、メガドライブ音源で『TFⅤ』のサウンドをディメイクされたサウンドクリエイター工藤索興氏(有限会社エムツー)に加え、A&Rプロデューサーの伊藤“モバ”良弘氏(株式会社ウェーブマスター)同席のもと、皆様にお時間をいただき、オンラインインタビューを敢行。このインタビューを中心に、このCDの魅力の一端に迫ってみたいと思います。

また、試聴動画も本作の魅力をわかりやすく紹介したものにするべく、鶴岡八幡氏のご協力をいただきました。本記事がCDを入手された方々、これから入手しようとお思いの方々、そして読者の皆様のよりよいゲームミュージックライフに彩りを添えるようなものになれば幸いです。(以下、文中敬称略)


『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE V -(テクノソフト ミュージックコレクション - サンダーフォースⅤ -)』

テクノソフト生み出した大ヒットシューティングゲームシリーズで、初めて3D化を果たした第5作『TFⅤ』(1997年発売)。今回のアルバムではオリジナルであるSS版と、PS移植版となる『TFⅤ Perfect System』(1998発売)向け楽曲も含めた全曲を収録。SS版は初代アルバム音源より、PS移植版は実機コンバート前のオリジナル音源より、それぞれリマスタリングを施しCD2枚組ですべての楽曲が収録。

また、本アルバムだけでしか聴くことのできない【Disc-I [M01~05]】のSpecial Bonus Trackとして「もしMDで『TFⅤ MD』が出ていたら?」という夢の音楽を、サウンドクリエイター工藤索興氏(有限会社エムツー)がMDのFM+DCSG音源という環境で再現している。

発売日:2024年8月8日
価格:3,630円(税込)
発売・販売元:株式会社ウェーブマスター
JANコード:4571164385839
特設ページ:https://wave-master.com/ent/tf5/

『Beep21』読者に『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE V -』を2名様にプレゼント!

『Beep21』読者に、今回記事で取り上げたCD『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE V -』を抽選で2名の方にプレゼント
※当選者の方へはX(旧Twitter)のDMでご連絡差し上げます。

以下のハッシュタグをつけてX(旧Twitter)で、皆さんどしどし投稿してきてくださいね。

本CDのプレゼントをご希望される方は
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当時の熱い思い出や、本記事に対しての感想をポストしてください。

インタビュー参加メンバー紹介

伊藤“モバ”良弘 氏 (株式会社ウェーブマスター) A&Rプロデューサー
奥成洋輔 氏 (株式会社セガ) スーパーバイザー
西村“まぢん”真人 氏 (株式会社セガ) Co-A&R
工藤索興 氏 (有限会社エムツー) アレンジャー(Disc-I : M01-05)

セガサターン30周年記念をきっかけにアルバム化

──今回、ついに『TF』シリーズで初のSS/PS世代の『TFⅤ』のCDがリリースされることになった経緯を教えてください。

奥成 本CDの企画の立ち上がりとしては、まず伊藤からSSの30周年記念アルバムとしていくつかCDを出すプランがあるのだけれども、その中で『TFⅤ』をぜひ商品化したいと提案をもらいまして。ぜひぜひやろう! という感じで、僕と西村が参加したと。

テクノソフトの音楽CDは、過去にもテクノソフトとトゥエンティワンからもリリースされていました。その後セガがテクノソフトブランドの権利を取得してから、ウェーブマスターで新たにいちから作り直しました。『TF』シリーズだけでも主なものを挙げていくと、

・2019年9月19日 メガドライブミニに『サンダーフォースⅢ』収録
・2020年5月14日 Nintendo Switch『SEGA AGES サンダーフォースAC』リリース
→2020年7月23日『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE III & AC -』発売
・2018年9月20日 Nintendo Switch『SEGA AGES サンダーフォースⅣ』リリース
→2021年8月19日『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE Ⅳ -』発売
・2021年12月17日 セガ メガドライブ for Nintendo Switch Onlineに『サンダーフォースⅡ MD』登場
→2022年2月44日『Technosoft Music Collection - THUNDER FORCE I & II -』発売

と、これまでのSOUND! SHOCK SERIESはゲーム自体の復刻をきっかけにCDがリリースされるという流れで制作されていたんですよね。「メガドライブミニ」で『TFⅢ』を復刻し、Nintendo Switchで『SEGA AGES サンダーフォース AC』(以下『TF AC』)、『SEGA AGES サンダーフォースⅣ』(以下TFⅣ)と復刻し、ゲームが現代に遊べるようになったタイミングでアルバムを出すという流れをんでいたんです。

その後、伊藤から「『TFⅤ』はいつ復刻されるんですか?」 と言われ続けてきたんですが、2024年現在でそれは実現できていなくて。しびれを切らした伊藤から「SSの30周年だったら(アルバムをリリースしても)問題ないだろう」というわけで、ようやく待望の『TFⅤ』のCD化が実現しました。

伊藤 こじつけですよね(笑)。弊社のテクノソフトのアルバムとしては2022年10月27日に発売された「SEGA Genesis Mini 2」に収録された『エレメンタルマスター』を『Technosoft Music Collection - ELEMENTAL MASTER -』として2022年12月に発売してからですから、1年半ぐらい経ってます。

奥成 もちろん、テクノソフトのアルバムはこの順番で全部出していこうと決まっていたわけではなく、毎回恐る恐るアルバムをリリースしていて。それが伊藤の想定しているノルマを超えて出し続けてこられたというのが正確なところですね。

──レーベルマスターの伊藤さんのほうから、「そろそろ『TFⅤ』も出したい、ちょうどSSが30周年だし」ということでタイミングが合致したと。

伊藤 そうです。テクノソフトファンの方には「今度『TFⅤ』のアルバムはいつ出るのだろう?」と期待されている方もいらっしゃると思いましたので。

西村 話としては、過去にも『TFⅤ』のアルバム化の話は俎上にありましたしね。

──なるほど。続けてSOUND! SHOCK SERIESのテクノソフトタイトルの作業工程に関してお話を伺いたいのですが?

伊藤 これまでの『TFⅢ&AC』から第5弾の『ELEMENTAL MASTER』に関しては、以前ウェーブマスターに所属していた辻坂健次さん(現:クラリスディスク プロデューサー)にメガドライブの音源チップから直接デジタル録音してもらっていました。それを奥成、西村、私のほうで全体の尺を決めたり、音の鳴りに関しては西村とリファレンスとなる音源と照らし合わせたりしながらリマスタリングする、という工程でアルバムを制作してきました。

奥成 ディテールでいうと、最近いろんな復刻サントラが出ていて、あえて実機の鳴りに近いものですとか、近づけるようにリマスターするという方向性もあると思うんですけれど、ウェーブマスターではもともと、辻坂さんがディレクションを担当するようになってから以降は特に、なるべく音源に忠実=サウンドクリエイターが作った時の音に近い音を提供しようという方針でやってきて現在に至ります。

伊藤 開発機材レベルということですかね。

奥成 基板のアウトプット(メガドライブならステレオミニプラグ(ヘッドホン)端子やメガドライブ2のステレオアウト端子)からそのまま録音した音とか、それにリバーブ(残響音)をかけたサントラらしい音とかいろいろ出ていて、同じ音源ではあるんですが、SOUND! SHOCK SERIESではより音源チップの生の音が、作曲者が本来望んでいた音なんじゃないか、というポリシーでやってきていて。その後、辻坂さんがウェーブマスターを卒業した後も実機の音源チップからデジタル録音できたメガドライブまでのハードのタイトルでは伊藤が受け継いでやってきたという感じですね。

──ところが、今回の『TFⅤ』ではSSとPS世代になって、BGMにはCD-DAフォーマットとCD-(ROM)XAフォーマットが使われるようになったという大きな変化があったと。(編注:CD-ROMにはCD-DAそのままでは数多くのデータが入れられなかったという話は、メガCDで「LUNAR THE SILVER STAR」のサウンドを担当された岩垂徳行氏のお話が参考になります)

左がセガサターン版、右がPlayStation版

奥成 『TFⅤ』のサントラ化の話が最初に出たのは結構前の話で。3~4年か、さらにもっと前、このシリーズのアルバムがリリースされる前から話をしていました。2016年にテクノソフトタイトルの権利をトゥエンティワンさんから譲渡いただいた際に、ゲームのソースデータとか既存のアルバムの音源データなど、あらゆる資料を受け取っていましたので、あらかじめ音源に関してはあたりをつけていたんですよ。

当初はSS版発売時のアルバム『Technology』の音があればOKで、それから、PS版『TFⅤ Perfect System』(以下PS版)の追加楽曲を探そう、といった感じでしたね。

──権利譲渡の際からアルバム化は検討されていて、音源にあたりもつけられていたと。

奥成 ただ、SS版は、実はゲームのCD-DA音源と『Technology』の音を聴き比べたときに、CD-DA版はゲームに合わせて編集されていて、逆にサウンドトラック盤は長い2ループ収録だったりといろいろ違っていて。そもそもマスタリングが全然違う音だったんです。サターン版の音源としては、一番音楽的に聴くのに良い、『Technology』の音源を使いましょうと。なのでこれをベースに復刻するような感じになるのかなと思っていました。

──なるほど。

奥成 ところが、SS版の翌年(1998年5月21日)発売されたPS版の追加曲は当時テクノソフトからもトゥエンティワンさんからもアルバムに収録されていなくて。それじゃあということでPS版のソースデータを掘っていったところ、すべての追加曲のサウンドデータを発見できました。PS版はオープニングCGムービーの追加やスタッフロールなどでSS版と違う要素があるんですよね。一番大きかったのはSS版はCD-DAで収録されていたのですが、PS版はCD-(ROM)XAフォーマットで記録された音源が収録されていたんですが、元となるWAVEデータを見つけられたことですね。

全部の音源が揃ってからSS版、PS版のWAVE音源を並べて、どちらを収録するのが良いのか伊藤や西村に渡して聴いてもらいました。ここからは西村の話になると思うんですが、その時の返事が「これは全然違う!」と。だから「両方収録しなきゃダメだ!」って言われたんですね。

SS版、PS版両方を収録したCD2枚組になった理由とは?

──では、ご指名のあった西村さんのターンということで。

西村 『TFⅤ』が大好きな人には周知のことだと思うんですが、まずSS版とPS版で音質が結構違っているんですよね。SS版では音がこもっていたりするんですけれど、ローファイ(低音が響く)で、音圧がある感じになっていて、PS版はハイファイ(高音が響く)で音がくっきりはっきりしているんですよ。ただ、ちょっと音が細く聞こえるんですね。さらに『Technology』版はSS版をクリアにしたようなミキシングをされていて。

聞き比べてみると音と音のバランスが違うというか、聞こえてなかった音がよく聞こえたりするんです。なので「『Technology』版とPS版は追加音源以外も同じ曲でも違うんだ」と感じて、「これは両方収録しないとファンに怒られる」と思ったし、僕自身もファンとして「サントラがリリースされるなら両方収録してないと絶対納得いかないなー」と思ったので、ちょっとわがままを言って両方収録させていただきました。

──今、伊藤さんの顔がまさに「ちょっと」じゃないって訴えてましたが(笑)。

奥成 最初は『TFⅤ』はもともと『Technology』でCD1枚だったし、今回も1枚で収まりますよねってトーンだったのが、西村が「両方ないとダメだね」って話をしてきて。これ両方入れるとどうなるんだろう? って両方の尺を合計してみたら、それぞれ40分ちょっとぐらいあるねと。PS版は曲も多いしもうちょっと必要だね、アレンジバージョンとか何も入れなくてもCD1枚じゃ無理だねと(笑)。という話になりまして。伊藤としては「西村が言うんなら仕方がないか」って陥落したというふうに(一同笑い)僕からは見えました。

伊藤 本当におっしゃる通りで(笑)。聞き比べると別物なので、西村から提案いただいた内容は本当にベストな内容でした。このCDをお手に取っていただけた『TFⅤ』ファンの方、テクノソフトサウンドファンの方々には、両者を聞き比べることもできますし、さらにこのアルバムのウリでもあるエムツーの工藤さんのMD版IFアレンジバージョンも入ってますし。

──ちょっと西村さんにサターン版や『Technology』版とPS版で聞き比べてわかりやすい、特徴的な違いってどこなのか、言語化していただけるとありがたいのですが……?

西村 言葉で説明するのがすごく難しいんですよね。

奥成 まず、これもファンの間では有名なことですが、「Legendary Wings」が違うんですよね。

西村 「Legendary Wings」のメロディラインの音色おんしょくが完全に違っているんですよね。これは聞き比べるまでもないというか。

──あれは意図的なものなんでしょうか?

西村 だと思います。完全に違う音ですからね。この後リリースされたテクノソフトタイトルの楽曲でもよく使われている音色なので。

▼視聴動画はこちらから

CD『Technosoft Music Collection -THUNDER FORCE V-』試聴動画 ※クリックすると音を聴くことができます。

前作から5年の間に激変したサウンドデータ作りの影響はあったのか?

──個人的には、SS版が発売された1997年ごろって、楽器としてのハードウェアの時代的にもFM音源からPCM音源へ、シンセサイザーからサンプラーへといろんな音源が使われるようになって、ヤマハ一強からローランド、コルグなどいろんなメーカーがしのぎを削っていった時期でもあったなと。(※1)SS版を最初に聴いたとき、「ローランドっぽいなあ」とか思った記憶がありまして。

※1……セガにおいてはセガ・マークIIIのFMサウンドユニットやセガ・マスターシステムでヤマハのFM音源を採用。当時IC工場を自社に持ち、音源ICの生産に力を入れていたヤマハのFM音源はシンセサイザー以外にパソコンなどにも普及が進んだが、メモリやICの発展に伴い、デジタルサンプラーが1980年代後半から普及し始め、シンセサイザーもPCM音源を発展させたものが各社から発売されるようになり、多彩な音源からクリエイターが選べる時代になっていった。

西村 『TFⅤ』はローランドの「ハチプロ」(※2)1台で演奏したBGMを録音したみたいですね。テクノソフトのCDに収録されたアレンジ版の音源でいうと、『TFⅢ』のころのアレンジではコルグのM1を使っていたと記憶しているんですけれど、『TFⅤ』の世代は「ハチプロ」になったみたいですよ。当時、「ハチプロ」だけであれだけの楽曲を鳴らしきるテクニックって結構すごいなと思うんですよね。

※2……1996年発売のローランドのミュージックワークステーション「SC-88Pro」のこと。PCM音源モジュールで最大発音数は64。リバーブ、コーラス、ディレイなどのエフェクターも内蔵していた。通称「ハチプロ」。

工藤 そうですね。

──これはDTMをちょっとかじって挫折したおじさん視点の話でさらにわき道にそれるのですが、ファンの人に怒られるかもしれないんですが、テクノソフトのゲームはハードウェアを熟知したプログラマが限界まで性能を引き出していて、『TFⅢ』あたりからメガドライブの内蔵音源もがんばってるぞメガドライブ! みたいな分厚いディストーションギターやバスドラの音がすごくて、サウンドドライバーもいっぱいいっぱいな感じが音に出ていた記憶があるんですよ。FM音源モードからPCM再生モードへの切り替え(※3)で音が途切れることはありましたが。

※3……メガドライブの内蔵音源YM2612(後期型はCMOS版のYM3438が搭載)は、4オペレーターのFM音源6chが発音可能で、FM音源のCh6をDACとして使い、PCM再生にも対応していた。ただ、PCM再生モードの再生音質はサウンドドライバーに大きく左右されるため、『TFⅢ』などではFM音源の発音を停止してPCM再生に全振りするなど工夫されていた。

西村 テクノソフトのメガドライブのドライバの特徴なのかもしれないけれど、『TFⅢ』はYM2612のFM音源モードとPCM音源モードを切り替えて両者が同時発声していなかったですよね。多分、サウンドドライバの特徴だと思うんですが。それでテンポがよれたりしていたのは『TFⅣ』もそうだと思います。

工藤 メガドライブ、頑張ってる。

──それが『TF AC』では基板がSystem C2になって、ADPCM1chが独自に実装されたからボイスも同時に発声できていて、アーケード基板はさすがだなあと思ったりとか。

西村 そうですね。『TF AC』はボイスとBGMが同時発音できてました。

──さらに話は脱線しますが、今回の『TFⅤ』のCDに収録されたライナーノーツで当時テクノソフトにいらっしゃった新井さんが『TFⅣ』から5年経過して発売された『TFⅤ』はメガドライブでの幻の試作が行われて、SSへ開発が移行したのち、プロトタイプから作り直されたりと開発に相当苦労されていたというお話が書かれていました。

西村 そうですね。

──先ほどちょっと話を振りましたが、このころのサウンド作りの環境も激変の時代で、結果開発期間が長期化した『TFⅤ』のサウンドも、当時SC-88Proをギリギリのところまで使いこなしていたという話を西村さんから伺うと、“技術のテクノソフト”でもハードウェアDTM音源をギリギリまで使いこなしていたんだなあと感じられるところがあって。SS版のCD-DA音源でも「ああ、これプログラムチェンジの影響かな?」とかオーケストラヒットやリズム隊のアタックが集中するところでテンポがもたっとしたところがあるように感じていたんですけれど、これって私の耳がヘンだったんでしょうか?

西村 そういう意味で言うと、『TFⅤ』ではSC-88ProをMIDIでパソコンから制御してサウンドを収録していたと思うんですが、確かにプログラムチェンジが忙しいところなどにテンポがよれるところがあって、それがテクノソフトらしいところがありましたよね。

工藤 バッファがね……(笑)。自分もSC-88Proや近い年代のハードウェアMIDI音源を触る事もあるのですが、あの頃の音源側のCPUは現代のものに比べるとやはり処理能力が低くて、DAWからMIDIメッセージを大量に送り付けると『TF Ⅴ』のようにテンポがよれたり、あまりやりすぎるとMIDIバッファがいっぱいだとエラーメッセージを出して発音が停止することもあります。SS版の音源を聞いていると、かなりギリギリまで鳴らし込んでいることがうかがえますね。

──私の感じたことは間違いじゃなかったのかな……? ちょっと安心しました。当時のいっぱいいっぱいな感じが味わいに感じられたというか、好きなところだと思っていたのでうれしいです。

新たなスペシャルボーナストラックが生まれた経緯

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