『Beep21』真・セガハード列伝 ─ セガブラックハードのはじまり 第一夜 セガ・マスターシステム
『Beep21』では当時のクリエイターの
生の声を本人の言葉で残すのをモットーに
開発した”当事者”にその当時の関係者が
訊いていく、というスタイルで
記事を送り出してきています。
「真・セガハード列伝」は
当時のセガハード開発者が
それぞれの開発者に訊いていく
企画で、ナビゲーターは戸崎健司氏。
▼戸崎氏の前回の記事はこちらからご覧ください
今回、メディアに初めてベールを脱ぐソルクス・デザインの存在
今回の「真・セガハード」は、戸崎氏が尊敬し、
取材を熱望していたソルクス・デザインの
高須社長が登場します。
おそらく当時の『Beep』はもちろん
セガハード専門誌にも出たことがない
初めてメディアに登場する方です。
アメリカで大ヒットをした
メガドライブ(GENESIS)、
そしてその前身として世に出た
セガ・マスターシステム。
その後に出たゲームギアからスーパー32Xに
至るまで、セガのハードは一貫して
ブラックボディであることがわかります。
それ以前の世代のハード「セガ・マークⅢ」までは
白いボディだったセガハードは、なぜ突然"黒"になったのか?
実はセガ・マスターシステムの
ソリッドで先進的なデザインを
担当したのは、今回登場する
ソルクス・デザインによるものでした。
取材の中で、SG-1000IIとセガ・マークⅢは
実は工業デザイン業界では非常に有名な
“あの会社”が担当していた...という話も初めて判明。
メガドライブのコントローラーが
なぜクロワッサンのような
形をしているのか?
ゲームギアに組み込まれた
当時の最先端技術。
また6Bパッドのデザインの際の
当時の貴重なモックアップの写真なども
今回初公開されます。
世界で大ヒットしたセガハードの
デザインを手がけた
ソルクス・デザインとは果たして
いかなる会社で、どんな製品を世に出して
きたのか?
そして、黒いボディに込められた
デザイン哲学と想いとは──。
すでに30年以上経っても
デザイン的に色褪せない
メガドライブをはじめとした
セガのブラックハードの数々と
現代にも意外なところで目にする
ことができるソルクス・デザインの
プロダクトたち。
今回はその「第一夜」。
セガ・マスターシステム誕生編です。
今まで誰も知らなかった
セガブラックハードの秘密に
迫っていきます。
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今回登場する当時の関係者は...
松宮 当時のセガはアーケードがメインで、コンシューマ(家庭用ゲーム機)には全然力は入れてなかったんです。ですがその後、任天堂がファミコン(※ファミリーコンピュータ/1983年発売)を出す際に、セガも対抗して家庭用ゲーム機を出そう、ということで最初にSG-1000を出したんですね。デザイン的にはソフトを挿すとお墓みたいだ、と言われたりしてましたけど(笑)。
松宮 あれがセガの家庭用ゲーム機のスタートでしたが、その時に私は機構設計の図面も書いていました。図面を書くだけでなく、当時は発売日には私も新宿のデパートに行って、販売の手伝いもさせられたりしまして。「これはセガのファミコンです」と言って売ったこともありました(苦笑)。(ファミコンは)コントロールパッドが最初から2個付いてるのに、セガの(SG-1000)は1個。あっち(任天堂の)は2個なのに、なんでセガのは1個なんだと。1個のデータで2個作った方がいい、という話もあって、とにかくなんとかしないといかんということで、次のマイナーチェンジ版のSG-1000IIではコントローラが2個になったんです。
松宮 話が少し飛ぶんですけれども、メガドライブのコントローラは、こういうクロワッサンみたいな形をしてましたよね。
あれはソルクス・デザインさんが生み出したデザインなんです。当時セガの家庭用ゲームソフトの開発者からは、ファミコンの四角いコントローラに慣れていたので、クロワッサンみたいな形は良くないとの否定的な意見が挙がりました。現代ではエルゴノミクス(人間工学)なデザインというのは普通にありますが、あの当時にそれを家庭用ゲーム機のコントローラのデザインに採り入れたソルクスさんのセンスには、すごく先見の明があったんです。セガの先進的なイメージ、Coolなイメージは、本体だけじゃなくコントローラの貢献が大きいと思います。今日はそのへんの経緯の話などもいろいろご本人から聞けると思います。
戸崎 ちなみに松宮さんはゲームギアの設計にも携わってましたよね?
松宮 やってましたね、TVチューナーパックをつけたり。いろんなものに関わりましたね。
松宮 ソルクスさんはハードのデザインだけでなく、大きさからすべて計算して提案してくるのがすごかったですね。そこのこだわりも今日は話に出てくると思います。
白岩 ソルクスさんの描いてくるデザインの絵はメカ屋(機構設計)からすると、「これは(基板やパーツが)入らないかな?」なんて最初は思うんですけど、実はちゃんと入るように計算されてデザインされているんですよ。そこまで計算した上で、さらに未来的なデザインを描いてくるんです。単なるデザイン屋ではなく、実はちゃんと機構設計上でも入るように、全部計算して描いてるんです。それはいつも驚いて見てましたね。
戸崎 白岩さんは僕の1つ上の先輩です。最初に入社配属された時に「新入社員は先輩たちが朝来たら、ちゃんとみんなにコーヒーを入れるんだぞ」と教えられて。それを真に受けて、「この人は砂糖は2杯」とか「この人はミルクちょっと」とか、皆さんの好みを全部覚えて、出社してきた先輩達にすぐにコーヒーを出してましたね。そうしたら1年後、白岩さんから「そんなことをやったヤツは、お前が初めてだ」って言われて(笑)。いや、それをやれって言ったじゃないですか!って言ってたのを覚えてます。
白岩 下に優秀な後輩が入ってきたな、と当時は思いましたね(笑)。私のほうはセガは2年前に退職したんですが、コンシューマ(家庭用ゲーム機)事業があった時は、ずっとコンシューマ開発から品質管理、生産技術から品質保証までやっていて。コンシューマゲーム機を撤退してからはアミューズメント(=AM、アーケードゲーム)に移りました。アミューズメントにいた松宮さんとは逆にアミューズメントのほうで、品質保証の部長をやったり、生産部の部長をやったり、部長職で16年間ぐらいやっていたんですが、2年程前にセガを57歳で辞めています。今回ソルクス・デザインの高須さんのお顔も、もう30年ぶりにお会いできた感じですね。
戸崎 というわけで、いよいよ本日のメインのソルクス・デザイン高須社長です。まずはソルクス・デザインという会社はどんな仕事をしていて、セガハードのデザインをどういう経緯で引き受けることになったのか、あたりからぜひ。
セガハードとソルクス・デザインの数奇な出会い
高須 当時、セガさんのハードのデザインは6〜7年ほどやっているんです。主に関わったのはその中の3つ(セガ・マスターシステム、メガドライブシリーズ、ゲームギア)です。セガさんの仕事をやるようになるまでは、まったく知らない会社でした。
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