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点滴ルームへようこそ 5

Day 5

やっと、やっと、5日目にして窓際の席を確保する。
勝手なイメージで月曜日って混んでいると思っていたけど点滴ルームは椅子席にひとりいるだけで空いていた。
テキパキ看護師さんが「あぁ、イトカズさんおはようございます。好きな席座って。今日は窓際も空いてるよ〜」とまるで女子会の席順を決めるみたいな楽しさを込めて言ってくれる。
入り口近くに座る同じ歳くらいの女性に「おはようございます」と軽く挨拶をして窓際の席へと進む。
昨日の救急外来とはまったく違う雰囲気にほっとする。
せっかくの窓際の席だから思う存分外を眺める。
病院の向かいにあるカフェでは見覚えのあるスタッフが玄関前を掃除している。掃除が終わるとメニュー看板の付け替えをしながら常連さんに挨拶をしたりして当たり前の日常が繰り広げられている。自動ドアが開くたびに中の様子がチラッと見える。
少し離れたところに見える工事現場。背の高いクレーンが異次元の生き物のように動き回っている。
何を作っているんだろう…と心の中で思った瞬間に横から「何を作ってるんでしょうねぇ」と声が聞こえた。
看護師さんが点滴チェックをしにきていたのに気がつかなかった。
「何でしょう?何か楽しいものならいいけど」
「窓際、寒くないですか?膝掛け持ってきましょうか」
「大丈夫です、窓際は気が紛れていいですね」
看護師さんとのそんな会話にも慣れた。慣れたってことは、自分の立場を把握し理解したということだろうか。
窓の外をこんなに長い間見つめたのは初めてかもしれない。
通りを走る車、信号待ちで止まる人々、自転車...いろいろ。
目を凝らすと、遠くに私の住むマンションも見える。
なんて事のない風景だけど、何だろう愛おしい。
これも病気のせいか、もしそうなら時々病気になるのもいいかもしれない….などと不謹慎なことを思う。

 腕が内出血している。だんだん点滴針が入れづらくなってるようだ。
「明日からはちょっと針を刺す場所を変えてみましょうね」と言われる。
「はぁ...」

1時間の窓際滞在があっという間に終わる。

気合いでさっき見ていたカフェに入る。
気合いでサンドイッチセットを注文する。
半分食べる。もちろん気合いで…

2023.2.6(月曜日)5回目が終わる。
6回目へと続く…

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