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ある秋の日のあなたと私の3分半

【モノローグ作品】 大人の少し切ない物語


(登場人物…女性と男性。ひとりで演じるのも可能)


台風が去った後の空って私好きなんです。
これでもかって言うほど空は晴れるでしょ。そして台風が残していった涼しい風が吹いて、この気持ちよさを感じさせるために台風ってあるのかなと思います。

たしか、あの日もそうでした...

いつもはズルズルと靴を引きずりながら歩く私も、よほど気分がよかったのか、跳ねるような歩き方になっているのに気づいて、自意識過剰な性格ゆえでしようか、誰も見ていないのにちょっと気恥ずかしさを感じていました。
苦痛な仕事に向かうということが頭の片隅にあるにも関わらず、そんなことさえ気にならないくらい気持ちのいい時間でした。

地下鉄の入り口が見えてきたところで、ふと前を見ると、10メートルほど前に知り合いの後ろ姿を見つけました。
大人の歩き方よりかなりゆっくりしたペースで歩いているように見えて、 正確には前を見て歩いているというより、回りのビルを見上げたり、レストランの看板を見たりその中を覗いたりしているように見えました。
「何をしているのだろう」と、彼の背中を見ながら私は前へ進みました。
彼は同じ会社ではないのだけれど、1年ほど前に企画物のイベントを2ヶ月ほど一緒にしていた仲間のひとりです。
それ以来一緒になったことはないのですが、その背中には見覚えがありました。
私は懐かしくなって、早足で彼に追いつき、驚かそうと思って大きな声で話しかけてみたんです。

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