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忘却の潮時

母の形見の時計の金具が壊れた。時はちゃんと刻むが腕にはめることはできない。時を刻まない時計も役立たずだが、腕にはめれない腕時計も役立たずだ。誰のせいでもない。時間が経ちすぎたのだ。

これは「もうそろそろ母親の柵から離れなさい」という誰かからのメッセージだと思い、修理には出さないことにする。この時計はクローゼットの中の思い出箱に入れておこう。いつか時を刻むのもやめて静かに眠り続けることだろう。

今日から私は母の娘という肩書きを終えて、ひとりの人間という肩書きだけで生きていく。そんな大袈裟な...と思うかもしれないが、それだけ柵はきつく絡み付いていたということだ。

グッド・バイ...ママ。





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