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流布される音楽の価格が下がっても、職業音楽家は生き残る

これは新しいトピックスではないし、早晩「そうなるよね」と言われてきたことなので詳しい経緯やデータは割愛するが、結論としては『職業音楽家の仕事はなくならない』ということになる。
自動演奏型のプラグインがどんどん発達していき、アルゴリズムのサポートが創作者に知識や技術を必要としない環境を整えつつある。簡単に良い感じのリズムとハーモニーを提供してくれる。それっぽい音楽はいまや無限に創出されており、今後はAIが文字通り”無限”に音楽を吐き出し続けるようになるだろう。
いまでさえNashやAudiostockで安価に音楽が手に入る上、無料BGMを配布している作家(?)がごまんといるのだから、既に音楽自体の価格は無料に近づいている。


しかしこれはあくまで商用音楽についての、金銭的な価格についてだ。
音楽の価値は金銭的なことばかりではない。

DTMレッスンに来られる生徒さんは「オリジナル曲を作りたい」という意志を持っている。もしかしたらその先に「売れたい」という願望もあるのかもしれないが、お金儲けをしたいのならもっと別に楽な手法があると気づいているはずだし、音楽を作りたいと願う気持ちの大半は「オリジナル曲を作りたい」「残したい」だと感じる。いわゆる『創作の喜び』が根底にあると思う。
そして初級者の人が実際に手を動かしてみると、音楽制作にはたくさんの知識や経験が必要だと実感することになる。DAWの操作ができるようになり、自動演奏型のプラグインを活用しても、なかなか「オリジナル曲」は望み通りの形にはならない。
音楽制作には音楽の知識だけでなく、経験による「次はこうなるだろう」の積み重ねが必要になってくる。こればっかりは数をこなして、創作者自身のクセや好みを磨いていく必要がある。

自分自身の好みやクセは、自分自身では気がつきにくいものだ。
僕自身、「メロディがテンションで終わることが多い」だとか「このコード進行になりがち」という風に具体的な共通点を見つけて、その結果自分らしさがおぼろげに分かってきた。そのために数をこなすことは必須だった。

ただ、多くの人は数をこなす時間を取れないし、続けることができない。これは才能やセンスとかではなく、生活様式や暮らし方、収入や家庭環境によるもので、普通に暮らしていて年間300曲を作ることはとても難しい。

この”難しい”をやってきた人が音楽作家として生き残っている。そして”難しい”ので続けれなかった人の「オリジナル曲を作りたい」という願望を叶えるのが職業作家ということになる。たとえば演劇のプロデューサーやディレクターも、本人が本当に音楽制作ができるのではれば自分で作るはずだが、そうもいかない。あるいは自分の能力以上のものを必要としていたりして・・・・・

クライアントのアイデアを受け止めて、しっかりパッケージして打ち返す。これは音楽制作のショートカットであり、そこに労働価値が発生する。職業音楽家はそういう仕事がほとんどになる。

オリジナル曲やオーダーメイドの曲(劇伴など)を作る仕事は、それを必要としたり、作りたいと願う人がいなくならない限り、なくなることはない。
個人的にオリジナル曲を作りたい人がゼロにはならないと考えているし、その多くが「数をこなす」ことが”難しい”はずで、職業音楽家は今後も仕事にありつけるだろう。
現状、ほぼ無料の音楽が流通しているし、BGMなんかはちゃちゃっと作っちゃうのが当たり前になるだろう。だけど、オリジナル曲は頭の中にある音楽であり、それはネット検索でヒットするものではない。自分で頑張って作るか、誰かと手を組んで作り上げるしか完成しない。
できあがった曲が社会的に受け入れられて金銭価値を生み出すかは分からない。だけど、オリジナル曲の価値は価格で比較されるものばかりではない。創作自体の喜びをサポートする職業音楽家は、AIが人間並みのコミュニケーションが取れるようになるまでは生き残るだろう。



ちなみに音楽制作のサポート、だいたい50,000円からです。本職なので。

サポートなんて恐れ多い!ありがたき幸せ!!