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「君が降る日」島本理生

島本さんの書く男の人はずるい。この一言につきる。大人だけど、どこか寂しい部分を持ち合わせていたり、近付けたと思ったら突然離れてしまったり、かと思ったら腕を掴まれて引き戻されたりと、だめだとわかっていてもどうしても惹かれてしまうような性質の男の人の描写がすごく上手だと思う。読んでて何度もドキドキしてしまった。少女漫画を読んでいるような気分になった(笑)

「君が降る日」の五十嵐さんもそういう男の人だった。特にわー・・・となったシーンは、五十嵐さんの部屋に行った時。

上の方へ逃げようとすると、両腕で頭ごと抱えられた。私は薄目を開けて、彼を見た。「どうした」五十嵐さんはほんの少しだけ眉をひそめ、そう尋ねた。

五十嵐さんの本当の部分が身体を重ねる時に一気に押し寄せてくるというのがとてつもなくずるくて、重くて、そして、普通の女の子には受け止めきれないだろうなあと強く感じた。主人公のつらさがすごく伝わった。

「どうした」じゃないよ。アンタさっきまで敬語だったじゃんか。逃げようとするの察知してんじゃないよ。逃げたいよね、いやだよね、ごめんねって思いながら手を離さないところが鬼畜だよアンタ。

そんな風に思いました。まあでも最初に会いに行ったのは主人公だし(周りは止めたんだけど振り切っていった)、傷ついてでも色んなことをあきらめたかったんだろうな、恋人の死や五十嵐さんの事。

人は何か立ち止まってしまうような状況になった時、感情を整理したり、行動に起こそうとしたり、そういう事を意識しなくてもしていこうとするいきものなのかもしれない。生きていくために、前を向くために。

という感じで、とても色々考えさせられたお話でした。言語化が難しかったです。いつものことだけど。


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