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「はじめからなかったこと」と同義にしたくない日々のこと

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なまものの自分と向き合う時間をつくるための日記
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2017年9月の記事一覧

金曜夜のタクシーと、『禁じられた遊び』と

金曜夜のタクシーと、『禁じられた遊び』と

それは春と夏の間の金曜日で、私は大学3年生だった。

当時、片道1時間半以上かけて千葉の実家から通学していたので、バイトや飲み会の日は最寄駅に到着するのがだいたい午前1時。
そこから10分ほどタクシーに乗って帰宅するのがいつものパターンで、その日も例に漏れずそうだった。

駅前の乗り場に滑りこんできたタクシーに乗り込むと、「こんばんは」と穏やかな声。年は父と祖父の間くらいだろうか。やさしそうなおじ

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「私」を構成する、「私」以外のなにかについて

「私」を構成する、「私」以外のなにかについて

「私」というのは、とても曖昧な存在だ。

0歳の私、10歳の私、20歳の私、今の私。全部同じ「私」であるはずだけど、本当にそうか?の保証はどこにもない。

頭の中におぼろげに残るいつかの記憶だって、それが本当に存在したものかどうか、確かめる術もない。もはや記憶から抜けおちてしまったことは、“はじめからなかったもの”と変わらない。

初めて食べたケーキの味。小学生のころのお気に入りの靴。人生で初めて

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“書きたい”についての覚書

“書きたい”についての覚書

「好き」と「得意」は比例するとは限らない。

バレエを習っていた。過去形だ。4歳で始めて、12歳で辞めた。「将来の夢はバレリーナ」だった頃があった。

「中学受験のため」は建前で、本当は、どうあがいても越えられない才能の壁に気づいたからだった。

私より後にバレエを習い始めた子が、発表会で私よりいい役をもらうのを見て、嫉妬という感情を知った。

「誰かに対して嫉妬を感じたら、そこにあなたのやり

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