見出し画像

カイゴはツライ?第22話~介護福祉士国家試験に挑戦その2

介護福祉士国家試験当日、ユリは職場の仲間たちと試験会場に向かった。コンサートなどにも使う大きな会場で、先輩たちから、とにかく寒いのでしっかり防寒対策をしていくように言われていた。
試験は1日がかりなので、体調管理にも気を付けた。昼の休憩は取ったような取らないようなかんじで、午後からの試験と午前に受けた試験のことで頭も胸もいっぱいで食欲はあまりなかった。それでも数人の職場の仲間がいたことで心強い思いがした。派遣社員から直接雇用になった丸岡君、まだ20代の村本君、数回目の受験となる角田さんもいっしょで、とりとめのない話をして気を紛らわせた。
長い1日が終わり、翌日には試験速報で回答が発表された。ユリは難なく合格だった。残りは実技試験のみ、でもこれが一番の難関である。試験を受けた仲間に実技試験のことを聞いてみると、みな講習で済ませるとのこと。ユリも講習のことを知っていたが、時間を取られるのとお金が高いのとで、試験を選ぶつもりでいた。しかし仲間の多くは時間とお金をかけて講習を受けて試験を免除してもらうほうを選んでいた。ユリにはその選択が腑に落ちなかった。というか、実技試験を課しておきながらお金で合格が買えるその仕組みに不信感を持った。介護士の給与が低いことは社会問題となりつつあった。給与が低いにもかかわらず国家資格を求め、しかもそれがお金で買えるとは、まるで貧困ビジネスではないか。国家資格は欲しいが自身のない者は高いお金を出して講習を受ければ試験免除とは、なんだか介護士をバカにしたような話である。厚生労働省への不信感が募った。人手の足りない介護現場に労働力を投入するため国はお金と労力を費やしていた。そしてその施策は現場をひどく疲弊させていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?