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カイゴはツライ?第9話~人当たりもよく、優しい介護者ではあるのだが…

深田さんの仕事ぶりは変わらなかったが、夜勤や遅番、早番にも入るようになった。遅番は夜8時までだが、深田さんは9時近くまで残っているとのことだ。早番は朝7時からだが、元々7時に来たのでは間に合わず、どの職員も6時半には職場に入っている。深田さんは6時には来ているそうだ。ユニットケアの悪い点は、担当ユニットのことは原則、そのユニットの職員がすることとなっているため、他のユニットの職員が手伝うことはまずないということだ。そうはいっても、夜勤は3ユニットを2人でみるのだから、他のユニットのこともしなければならない。しかし、自分のユニットさえ見ていればそれでいい、という雰囲気になっている。遅番職員が業務にてこずり、9時近くまで担当ユニットにいると、ナースコール対応でさえ夜勤者はしようとしない。遅番の仕事に加えて夜勤の仕事までしているのだから、いつまでたっても仕事は終らないのだ。ユリは深田さんに同情しつつも、助けてあげる気にはなれなかった。深田さんは人当たりがよく、他の職員からは“いい人”と思われていた。だが、ユリにはその人当たりのよさが、ズルく思えた。何かを注意すると、「ええ、ええ、はい。わかってます。」と返事はするが、直そうとはしないのだ。認知症のない口やかましい利用者の訴えには率先して動くが、その一方では、動けない人や認知症の利用者を後回しにして、放置していることが多かった。早番では、6時に来ると、まず寝たきりの利用者を起こし、口うるさい利用者は8時ごろ起こして、食べ終わるや否や、「オシッコさして、寝かして」の訴えに対し、食事介助中の、6時から同じ姿勢で座ったままの利用者を後回しにして応えている。夜勤中は、自分の担当ユニットで洗濯物たたみをしているときは、他のユニットの利用者がナースコールを押しても、全く対応しないとのことだ。自分は今洗濯物をたたんでいるから、という思いがあるのかもそれない。仕事の優先順位がわかっていないというか、自分本位のようにユリには思えた。ユリは、深田さんのことがいつしか、ストレスとなっていた。

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