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マナーは大事だが気取る必要はない
私は50歳の今も箸の使い方がいまひとつである。
気をつけているが、上手とは言い難い。
娘にも食事のたびに注意はしているがなかなか直らない。
箸の使い方云々と育ちの良しあしを言われるとツライ。
ある本を読んで少し気持ちがラクになった。
『谷中・幽霊料理人 お江戸の料理作ります!』(相沢泉見)である。
江戸時代終わりに谷中で定食屋をやっていた惣佑(そうすけ)はある日突然殺されてしまって以来、160年も同じ場所に幽霊としてとどまり続けていた。幽霊が見える体質の咲(さき)と出会ったことで、自分では作ることのできない料理を咲を通して作ったり、咲にくっついていろんな調理場を見学したりして令和の時代を満喫する。
ある日、里芋の煮っころがしを食べようとした咲が、箸でうまく芋をつかめずに、落っことしてしまう。箸の使い方ができていないことで咲はしょげる。しかし惣佑は、こともなげに言う。
里芋はつるつる滑るからなぁ。掴めねえなら無理して掴むこたぁねえ。箸で刺すなり何なりして口に放りこみゃあいい。俺の店に来た客もそうしてたぜ。
咲はびっくりする。江戸時代の人はみんな箸の使い方がうまいのだと思ってた!実際はそうでもないのかと。
(惣佑)俺たちみてぇな町民が気取る必要なんかねぇからな。巷じゃ「重箱の 隅でとどめを 芋さされ」なんて歌が流行ったくれぇだ。…箸で刺すなんて褒められたことじゃねえが、お大名が集まる席じゃねぇんだぜ?行儀がどうとかより、食って美味きゃそれでいいなじゃねぇか。
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食べ方がきれいなのに越したことはない。汚い食べ方がよくないのは当然だ。だけど気取る必要はない。
食事のマナーをあまりにも厳しく言われたためにごはんを食べることができなくなってしまった小学生の男の子が出てくるのだが、なぜごはんが食べられなくなってしまったのかがわからず、大人たちは困り果てていたのだが、幽霊の惣佑が食事作法の強制、左利きの苛酷な矯正が原因であると見破るのです。
惣佑を通じて作られる江戸のおかず総菜(さい)はどれも美味しそうで、ちょっとしたコツも教えてくれる楽しいホンワカ幽霊料理本です。
江戸の人はたいして料理をしていなかったとか(ぼてふりが売りに来る菜(おかず)を買う人も多かった)、今のスーパーやコンビニで買ってきたものを食べる生活とさして変わらなかったとか、なかなか楽しいエピソードもちょこちょこ。家庭料理神話はいったいいつ、だれが作りだしたのでしょうね?
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