保険料の支払いは保険給付のマストです。社会保険でも同じです。原理は…
社会保険とはなんぞや?
このように聞かれたら、健康保険とか厚生年金とか雇用保険という回答はおおむね正解だと思います。
実は正式に、これが「社会保険です」という定義がないのです。
社会保障の主要4制度の一つに位置付けられています。
生活保護のような公的保護、児童や高齢者、障がい者などを対象とした社会福祉、児童手当などの社会手当、そして、保険方式を採用している冒頭に挙げたような内容の社会保険です。
狭い意味では、健康保険と年金保険や介護保険を社会保険、雇用保険と労災保険を労働保険という場合もあります。
社労士業務においてはそういう区分を使っています。
ここでは広い意味で、官の実施する保険としてお話をします。
ここでまず押さえておきたいこと。
国や地方自治体などが実施する社会保険も民間の保険会社が実施する民間保険も、保険と名の付くものである以上、ある原則のもとに運用されています。
それは、まず保険料を支払う
次に、保険事故が起きる。
そこで、保険給付がなされる。
これが大原則です。
しかし、社会保険は民間保険ほどには保険料の決め方や支払い方が明確・明瞭ではありません。
保険ごとの対象者も規定はあるものの、ブラックホール的要素が強いように思います。
例えばですよ。
損保ジャパンの自動車保険に加入しているのに三井住友海上に訴え出ても保険金はでません。
当たり前ですよね。
でも業務災害のけがを対象とする労災保険で業務外のけがを対象とする健康保険が使われることはよくあります。
どっちでもオッケーということではないのです。
業務上のけがや病気は業務上であることの証明が必要で、認定を受けなければいけませんが、業務外のけがや病気はその必要がないのです。だから、本来は労災保険が使われるべきなのに健康保険が使われてしまうのです。
また、保険の原則から言えば、保険料を支払っていない者は保険給付を受けられないはずです。
でも子どもやママなどはパパの扶養ということで保険料なしで医療保険を受けられます。
会社員の妻などは(専業主婦や扶養の範囲で働く人)保険料を1円も支払わなくても年金がもらえます。
パパが支払ってる…のではありませんよ。
パパのお給料と独身の人のお給料が同じなら社会保険料の額は同じです。
扶養する家族の多寡によって保険料が決まっているわけではないのです。
保険の原則から外れてますよね。
でも実は「外れていない」ことになっているのです。
保険である以上、保険料の支払いはマストです。
大きなケガで障害者となり、働けなくなっても、保険料納付要件を満たしていなければ障害年金は支給されません。
生まれながらにして障害を持っていたり、20歳前に障害者になった場合には特別に障害年金がもらえます。
保険料の特例ではないのです。
国民年金は保険ではないのです。
厚生年金は厚生年金保険が正式名称です。
国民年金の名称に保険はついていません。
国民年金。ただこれだけです。保険の原則から外れて、保険料を支払っていない人に保険給付をしているからです。
じゃあ、扶養家族の医療保険給付や主婦の年金はどゆこと?ですよね。
これは実は、被保険者全体で扶養の人の分の保険料を支払っているのです。
個々人から徴収するのではなく、健康保険や厚生年金保険に集まったお金から支出しているのです。
「払っていない」のに「払った」ことにしているのです。
子どもは働けないんだから当たり前じゃ~ん、子育て中は働けないから仕方ないよ~
という声があります。そうです。必要なことなのです。
でもひとつ釘を刺しますよ。
個人事業の方が加入する国民健康保険には扶養というものはありません。
5人子どもがいれば5人分の保険料を支払わなければいけないのです。
社会保険には、知って得する的な説明のサイトが山ほどあります。
でも知っていればお得だけど知らなければ損というのは社会保険の名に値しません。
また、被保険者の保険料の他税金も投入されているにもかかわらず、審査の甘さから不正に受給していることも多いのです。
知らないばかりに給付が受けられない人と、知って得している人がいる。
社会保険は財テクじゃありません。(財テクってなんや?と若い人は思いますね…30年ぐらい前までは金融商品を買って投資とかすることを財テクなどと言っていたのです)
知って得するじゃなく、知る権利があるのです。周知の義務があるのです。
保険の原理原則を頭に叩き込んでおくこと。
当たり前なんてものはどこにもありません。
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