見出し画像

カイゴはツライ?第18話~我が世の春を謳歌する狼藉甚だしい介護職員

内藤さんのひどい仕事ぶりは当然介護部長や施設長の耳にまで届いていたが、多少の注意を受ける程度で放置されていた。人手が足りず、経験者で資格を保有している職員は貴重な存在と思われているのだろう。内藤さんは疫病神のように他の職員から嫌われ恐れられながら、我が世の春を謳歌していた。ケアプランの作成など書き仕事があるときは、他の職員にユニットを任せっきりにしてパソコンに向かっていたり、友人の海外挙式に出席すると言って1週間の有給休暇を2度も取ったり、気の弱い20代の職員に副職でやっているマルチ商品を売りつけたり、やりたい放題であった。ユリは内藤さんに腹が立つよりもむしろ介護部長や施設長に対して深い絶望と怒りを覚えた。
 強気の職員に対してはなすがまま、されるがままでいながら、自分からは体調不良なども訴えられないような気の弱い職員に対してはどこまでも居丈高な態度を貫く法人に対し、侮蔑感しかなかった。
 ユリは内藤さんを疫病神と見てかかわらないようにはしていたが、同じユニットである以上そのおそるべき狼藉ぶりは看過できず、強い口調で抗議することもあった。内藤さんは、稚拙ながらも処世術を身に付けており、口うるさい職員に対しては柔軟な姿勢を見せた。しかし、相手が変わるとまるで子どものように態度を変えた。
 施設トップが見て見ぬフリをしているなか、内藤さんに面と向かってものが言える職員などいなく、その分陰口は凄まじい内容に発展していった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?