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カイゴはツライ?第19話~とうとう入居者が亡くなる

ユリが遅番で出勤すると、管理室でユニットリーダーの松岡さんが他のユニットのリーダーである足利さんと言い争っていた。足利さんは殺気立っており、尋常ではない勢いで松岡さんを責めたてていた。
出勤してきたユリに向かって足利さんは昨晩起きた事故について一気に説明した、というかまくしたてた。
内藤さんが夜勤当番であった昨夜、ユリのユニットの入居者の越山さんが亡くなっていた。原因は不明ということである。ペアを組む別のユニットの夜勤者が見回りに行ったときにはすでに息をしておらず、すぐに当番看護師と看護部長を呼んだ。看護師と看護部長が着くとすぐに嘱託医を呼び死亡が確認され、家族に連絡を取った。ユリが出勤したときにはすでに越山さんは家族に引き取られ、居室はからっぽであった。
内藤さんとペアを組んでいた夜勤者は他のユニットメンバーである角田さんだった。角田さんは以前ユリのユニットにヘルプで入ったときに、内藤さんがパーキンソン病で体がうまく動かない利用者さんを機械のように扱っているのを見て半分泣きながらそのひどさをユリに訴えてきたことがあった。
角田さんはまだ居残っていて、管理室横の休憩室にいた。角田さんは入居者が亡くなったことで動揺し、オロオロしていた。内藤さんがまったく見回りに行かず管理室でパソコンに向かったままなので、見回りはもっぱら角田さんが担当していた。亡くなった越山さんの部屋に入った時、越山さんの口内は泡状の白い痰があふれるほどの状態だったそうだ。角田さんは慌てて吸痰を行ったが、そのときすでに越山さんは亡くなっていたのである。
ユリは入居者の死亡にショックを受けている角田さんを労わりながらも、詳細を知りたく、つい矢継ぎ早に質問をしたが、角田さんは言葉少なに昨夜のことを語っただけである。
勤務に入り、昨夜の介護記録を読むと、越山さんの死亡に関してはすべて内藤さんが書いていた。見回りをしたのも、越山さんが亡くなっているのを発見したのも、その後の責任者への連絡などもすべて角田さんがやっているはずなのに、それがすべて内藤さんの行った行為として書かれていた。


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