見出し画像

カイゴはツライ?第21話~介護福祉士国家試験に挑戦その1

ユリが介護施設に就職して3年が経過しようとしていた。介護現場で3年働けば介護福祉士国家試験を受けることができる。ユリも当然この資格を得たいと思っていた。筆記試験と実技試験から成り、毎年1月に筆記試験が実施され、筆記試験に合格後実技試験を受けてそれに合格すれば晴れて介護福祉士の資格が取れるという仕組みになっている。この秋で入職3年となるユリは1月の試験に向けテキストと過去問集を購入した。以前福祉住環境コーディネーター1級まで挑戦したことのあるユリにとってテキストの内容はそれほど難しいとは思わなかった。むしろ実技試験のほうが自信がなく、対策に頭を悩ませた。
介護技術をきちんと学んだ経験はない。見よう見真似で覚えたといっていい。先輩職員も「自己流でいいよ」と言い、皆が自己流の、見ていて危なっかしい介護をしていた。そのため、ちょっとした介護事故が頻繁に起き、日常茶飯事となっていた。いつか大事故になるのではないかとユリは気が気ではなかった。
 ユリのユニットのリーダーである松岡さんは、介護支援専門員いわゆるケアマネジャーでもあるが、介護福祉士の実技試験になかなか受からず、ケアマネの資格のほうを先に取ったと聞いている。介護福祉士の筆記試験は一発合格であるにもかかわらず、実技は時効のギリギリ3年でようやく受かったという噂だ。実技試験とはそれほど難しいのか…介護技術に自信のないユリは暗い気分になったが、一方で松岡さんの、5年以上も介護に従事しているというのに、プロフェッショナルとはお世辞にも言えない、素人でももう少しマシではないかというようなへっぴり腰の介護を見ると、これで介護福祉士とはお粗末だなと思わずにはいられない。
 この機会に自己流とはおさらばして、プロとしての技術を身に付けよう、ユリはそう決心した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?